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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
第伍章 迷宮の弓命・まもりぬくもの編

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白骨の崩落

 耳を劈く爆発音。


 同時に巻き起こった衝撃波に、レクスは髪を押さえた。


 クオンの濡羽色の髪もばさばさと激しく靡く。


 キューはレクスの服を両手で掴みながら、衝撃波の風圧に耐えていた。


 もうもうと砂埃と煙が立ち込める。


 黒嵐はクオンの手の中で変形し、ぷしゅうと溜まった熱を放熱していた。


 そんな中でも、レクスは屍骨龍から目を逸らさなかった。


 赫い双眸で屍骨龍の姿が確認出来るまで、気が抜けなかった。


 煙がだんだんと薄れ、晴れていく。


 舞い上がった砂埃も収まり、屍骨龍の白い骨の胴体が見えた。


(……まだ立ってやがるのか!?)


 訝しむように目を凝らす。


 しかし、屍骨龍の胴体に全く動きなどは見えなかった。


 立ち込めていた煙が完全に消え去る。


 屍骨龍の全景が顕になった。


 レクスたちは、その光景を確かめるように目をしぱしぱと瞬かせた。


「ありゃあ……。」


「やった、のですか……?」


「ぼくにはそう見える……けど?」


 三人が口を揃えた。


 レクスたち三人の視線の先に、それは不格好なオブジェのように聳え立っていた。


『龍の咆哮波ドラゴンブレス』と黒嵐の『とっておき』。


 双方が合わさり、混ざり込むことで引き起こされた爆発の威力は、想像を超えていた。


 綺麗な程に屍骨龍の上半身をえぐり取って、消滅させていたのだ。


 頭と腕を吹き飛ばされた屍骨龍の胴体だけが、その場に悠然と立ち尽くしていた。


 ◆


「ねぇ、レッくん。あいつの『龍の咆哮波(ドラゴンブレス)』を利用できないかな?」


 作戦の発端は、キューの思いついた一言にあった。


 クオンに向けて走っている最中のレクスに、キューはそう語ったのだ。


 クオンは屍骨龍の攻撃に晒されながらも、黒嵐で必死に応戦していた。


 脚を器用にステップさせて、踊るように。


 髪とスカートを靡かせながら舞うその姿は、何処か美しいとまで思える程だった。


 レクスが走っているのはすぐに脚を取られてしまいそうな凹凸の激しい大地。


 脚を食い込ませて転ばないよう、俊敏に動き回る事は出来なかった。


 足場の悪い地面に苦闘しながらも、訝しんだ様子でレクスはキューに顔を向けた。


「利用? ……どうやんだよ?」


「あいつの魔力が収束された瞬間に、レッくんのどでかいやつを撃ち込むんだよ!そうすれば、レッくんのどでかいやつが、収束された魔力を巻き込んで暴発すると思うんだ。暴発した魔力とレッくんのどでかいやつが合わされば……。」


「……なるほど。混ぜ込んで威力を跳ね上がんのか。……だけど、めちゃくちゃ難しくねぇか? それ?」


 眉を顰めて、レクスは疑問を投げかける。


 確かに屍骨龍の『龍の咆哮波(ドラゴンブレス)』が溜まった瞬間に、レクスの『とっておき』を叩き込めば、魔力同士がかち合って暴発を誘発できるだろう。


 だが、それは並大抵の事ではない。


 レクスのとっておきの装填には、十秒の時間を要する。


 加えて屍骨龍の魔力が溜まるタイミングなど、レクスに分かる筈もない。


 タイミングがあったとしても、僅かでも狙いがずれ込めば作戦は意味を為さない。


 それどころかレクスたちが『龍の咆哮波(ドラゴンブレス)』で全滅してしまう危険性が極めて高いとしか言えなかった。


 あまり現実的ではない作戦だと、レクスは思った。


 キューもこくんと首肯を返した。


 だが、朝陽に照らされたような玉蜀黍色の瞳は確かな確信を孕んで、レクスを見つめ返していた。


「確かにぼくもレッくんの言う通りだと思う。……でも、ぼくなら魔力を感じ取る事ができる。」


「……それをキューが出来ても、俺が外せば元も子もねぇだろ。」


「うん。だから、撃つのはレッくんじゃない。撃つのは……。」


 キューは、必死な形相で走りまわる少女に顔をむけた。


 レクスもキューの視線の先を追った。


「……クオン、か。」


 倒れ込んだ屍骨龍の眼窩へと、身を翻しながら三点射を正確に撃ち込むクオンの姿があった。


 クオンの射撃技術に、レクスも舌を巻いてしまっていた。


 レクスも依頼や修練などを重ねて射撃技術を培ってきたが、クオン程の正確性は担保出来なかった。


 ましてやクオンは、魔導拳銃を触った事などないだろう。


 それを初めてで使い熟せるというのは、「スキル」の効果だとはっきり見て取れた。


(……そりゃ皆、「スキル」に頼る訳だ。あれ程のもんをぽんと出されりゃ、修練が馬鹿馬鹿しいと思うわな。)


 レクスはスキル所持者と己の才の違いを、見せつけられた形になっていた。


 だが、悲嘆や絶望などしている暇もない。


 それに、ヴィオナやクロウの言葉がレクスに根付いていた事もあった。


『スキルがあったって、碌なもんじゃないよ』


『スキルがあったところで、スキルに使われるようじゃ意味がないからな。』


(わかってるよ、婆さん、師匠。……クオンはクオン、俺は俺だ。……俺の戦い方は、俺しか出来ねぇからな。)


 脳裏に流れる言葉を思い出しながら、レクスはクオンへと走り寄っていく。


 ちら、とキューへ目配せをした。


 どのみち、他に策はなかった。


 生か死か(デッドオアアライブ)


 今のままでは消耗して、どのみち死にに行くだけだ。


 可能性があるならば、それに賭ける。


 それが最善なように、レクスには思えたのだから。


「……わかった。キューの考えでいくしかねぇ。」


「ありがと、レッくん。……なら……!」


 二人は走り行くクオンに視線を飛ばした。


 ◆


(……とりあえずは、上手くいったかよ。)


 クオンを抱えながら、レクスはふぅと溜息を溢した。


 クオンも銃を下ろし、レクスに身体を任せながら安堵の溜息を溢していた。


 キューもふわふわとレクスの傍を飛びながら、ほっと胸を撫で下ろしていた。


 先程までの戦闘が嘘だったかのように、大空洞には静けさが満ちていた。


「……助かった、のです……。」


「一件落着、だね。……本当、どうなることか気が気じゃなかったよ。」


 安堵したような空気を二人が醸し出す中。


 レクスだけは、視線を緩めず屍骨龍の聳え立った胴体を見据えていた。


(……おかしい。)


 違和感が、どうにも拭いきれなかった。


 通常、魔獣を斃した場合は魔獣が崩れ落ちる。


 後には魔核だけ、もしくは魔核と副産物が遺されるだけ。


 そのはずなのだ。


 だが、目の前の屍骨龍はどうだろうか。


 胴体が聳え立ったまま、砂のように崩れ落ちる様子もない。


 何時もと異なるという違和感は、レクスを警戒させるには充分だった。


「……にい、さん?」


 クオンを抱く力が、無意識に強くなった。


「……悪ぃ。……何か起きんぞ。」


「えっ!? 嘘!?」


 レクスの言葉に、キューも聳え立った屍骨龍の残骸に身体を向けた。


 その時。


 がらがらと《《骨が擦れ合う音》》を立てて、屍骨龍の身体が崩れ落ちた。


 

お読みいただき、ありがとうございます。

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