2.面倒臭い公爵嫡男
「うえ……面倒なのが来たわね……」
取り巻きらしい2人を引き連れて、随分なナルシストというか居丈高な人物が私を睨みつけながら向かって来る。見た目も態度も私としてはお近づきになりたくない感じのが……ため息が出てきた。
姉様の方に目を向けると、普段は見せないような顔をしている。姉贔屓といわれるだろうが、私の姉様は身分の垣根を越えて人と接するような人であり、ここまで露骨に嫌そうな態度を見せるのは中々見れるものではない。
……私に対しては結構いろいろと嫌な顔とか見せたり無体な事をしてくるが、それはあくまでも姉弟のスキンシップなのでノーカンとしよう……
「おぉ、我が愛しのセリア嬢。無礼な新入生に絡まれて困っているご様子だ、ここは私がこの身の程知らずを追い払いましょう!」
そう言いながら私を姉様と引き離すように突き飛ばしてきた……が、そんなのに付き合うほど私も大人しくはない。反応するのは余裕だが、避けるか逆に突き返すか?どちらを選択しても面倒事は勘弁してほしいと思っていた。
よし前言撤回!ここはやられたフリをしてやり過ごそうと決めた所で、姉様がものすごい不機嫌な口調で止めに入った。
「お止めください、アレフ様。貴方が害を成そうとしているそこの者は、私の可愛い弟、エフォリア=ヴァイトです。久々に再開した弟との会話を邪魔しないで下さらないかしら?」
「はっ?……こ……これは失礼したセリア嬢……そこのエフォリアとか言ったな。私はウォール公爵家のアレフだ見知っておけ」
「はぁ……あ、挨拶が遅れました。ヴァイト辺境伯の三男、エフォリア=ヴァイトです。よろしくお願いしますアレフさー……」
「まったくだ、目下が先に目上に挨拶するものだろう!だが私は寛大だ、婚約者であるセリア嬢の弟ならば許そう」
この人がグラウガ兄様が言っていた姉様に扇子チョップを食らわされた公爵子息か……何と言うか、忙しい人だ、絶対ににお近づきにはなりたくない。
「え?……婚約者?……姉様、流石に趣味が悪いのでは?」
「シバくわよ……アレフ様が勝手に言っているだけよ……」
目の前の頭がアレ(フ)な人には聞こえないくらいの小声で姉様と話すが、このような人ほど耳聡いのはどの世界でも共通なのだろうか?アレフは私を睨みつけて来た。これは目を付けられるかな?そう考えていると、何を思ったのかアレフは寝言を言い始めてくる。
「セリア嬢の弟なら私にとっては義弟のようなものだからな、私の供に付くがよい。立派な貴族として導いてやろう!」
「あ、お断りいたしますアレフ様」
私は自分でも驚くぐらいに即答してしまった。本気で嫌なんだから仕方がないのだ。
「そうだろう!私の供に付けばウォール公爵家の庇護を受け……ん?何と言った?」
「お断りいたしますアレフ様」
「き……貴様……この私に恥をかかすつもりか……」
公爵家だろうが蒟〇畑だか知らないが、身分を傘に人を見下す貴族の腰巾着になるのはヴァイト家の名誉のためにも許容できない。心の底から願い下げとなる。
それと……先程から姉様の機嫌の悪さが臨界点を超えている気がする。澄ました顔をしているが、内に隠されている怒りのオーラが私には見える……アレフさん?お逃げなさい?怒った姉様はとてもとても恐ろしいですよ?
とは言っても、姉様は既に別の意味で矛先を向けられている。先程から押し黙っているエイドリックやレーナも我慢の限界が近い様子だ。それでも口を出さないのはナイスな判断、君たちに矛先が向いたら大変だからね?どうせ向けるなら私に向けてくれ。
「アレフ様は姉様に説教されたとお聞きしましたが、どうやら真意は伝わってないご様子ですね?私も己の信念がありますので、アレフ様の供に付くことは出来かねます。どうぞお引き取りをお願い申します」
「私を馬鹿にしてるな?エフォリア!セリアの弟とて容赦しないぞ!」
周りの目もあるので、出来るだけ周辺に通る声でお断りの意思表示を告げる。アレフが実力行使に出ても、私ならいくらでも対処可能だ。公爵家からの心象は悪くなるだろうが、それで潰されるほど辺境伯家は小さい訳ではない。
ヴァイト辺境伯家は、侯爵も公爵も一足飛びで宰相や国王へ謁見できるだけの力があるのだ!……父様ごめんね?多分、今後がめんどいよ?でも姉様の絡みもあるし事後承諾で許してもらえるよね?母様は……今は考えないようにしよう。
行わないで後悔するより、行った後で周辺の辻褄を合わせる。前世の管理職の経験が活きる!そう!問題は棚上げだ!なんて考えている場合じゃない、フォローになるかは知らないが言葉を付け加えておこう。
「馬鹿になどしておりません。しかしながら、アレフ様の強大なお力を借りては学院に通う意味がございません。私はまず独力で己を磨きたいのです」
「むっ……そ……そうか、先ずは独力で挑戦するのも貴族としての在り様だろうな……ふん……よかろう、お前たち行くぞ」
頭を下げた私に対し、踵を返すようにアレフたちは去っていく。周りの目もある状況で、これ以上の醜態をさらすのはプライドが許さないだろう。ただでさえ目立つセリア姉様とその弟の新入生がアレフに絡まれている。そう目に映ったはずだ。
少なくとも周りの状況に気が付き、私のフォローにも嫌々ながら乗ったアレフは、単純だが馬鹿では無い印象だと私は捉えた。権力がある狡賢い相手は厄介だ。そこはかとなく皆に注意を促そう。暴走させたら最も怖い相手になる可能性がある。
周りに飛び火させず、できれば姉様への矛先も私に向けさせる方法を考えていたら、その姉様から耳打ちで……
「ねぇエフォリア……」
「はい?なんでしょうか姉様?」
「ぶっ飛ばしても良かったのよ?」
何と言う事だ……ウォール公爵家のアレフ様は単純だが、私の姉様、セリア=ヴァイト辺境伯令嬢も負けず劣らず単純だった。
学園物のお約束なお邪魔キャラ登場!




