3.学院内アイドル
私達三人と姉様は学院内の食堂で談笑に耽っていた。姉様の案内により学院の内部に関して一通り把握することができたのは有難い。自身も社交的な付き合いやら何やらで忙しいだろうに頭が下がる思いだ。おせっかいな性格は好ましくもあるが、その性格が災いしないことを祈るばかりだ。
いや、既に災いが降りかかってはいるのか、ウォール公爵家のアレフに言い寄られているのも、姉様のならず者行為を見過ごせないという性格が招いた事だ。それともう一つ気になる事もある。姉様の派閥だ。
「姉様、そういえばグラウガ兄様から聞いたのですが、何やら、姉様を中心に派閥があるとか?」
「ぶぼぉ!?……げほ……ごほ……」
あぁ……姉様、盛大にお茶を噴き出すとは、淑女とは何ぞや……そう思いつつもそっとハンカチを差し出す。テーブル周りの惨状はレーナが素早く自主的に片付けてくれている。よくできた娘だ。
「げほ……ご……ごめんなさい……レーナさん……」
「いいえ、セリア様、それよりも片付けませんと」
「ありがとう、やっぱり貴女、私の専属にならない?」
「もったいないお言葉ですが、私はその……エイドリック様の騎士ですから」
「こ……こらレーナ、このような場所で」
あら残念……とばかりにため息を付く諦めきれないんだね?そう考えていると、姉様はキッと私の方を睨んできた。おや?私は何で姉様から射られるような視線を受けているのだろうか?
「エフォリア、人がお茶を飲んでいるタイミングで、変なの思い出させないで」
「グラウガ兄様から聞いて気になってたんですよ、姉様の事だからさぞ迷惑しているだろうなぁと」
「迷惑……ってわけじゃないわ。私を慕ってくれるのは有難い事なんだけどね……如何せん、今も……ね」
そう言って姉様は目線を僕の後ろに一瞬だけ向ける。さっきから視線を感じると思ってたが、どうやら遠巻きに姉様を見ている様子だ。さながら学院内のアイドル的ポジションになっているのだろう。
そしてその目線は私達3人にも向けられている。あまり好ましくない感情が込められているのか、背筋に悪寒が走るような錯覚を覚える。私とエイドリックは問題無くあえしらう事が出来るだろうが、レーナが少し心配だ。
「エイドリック……ごめん、この状況で姉様と私達が一緒に居ることが絶対に学院の噂になるから、気を付けよう……」
「承知してるよ。さっきから本来のセリア様の取り巻きらしい人がすんごい表情で見ているから」
「あの、私、少し身の危険を感じてるのですが」
「はぁ……仕方ないわね、ちょっとエリアス、こっちへいらっしゃいな」
姉様は力無くため息を付くと、私達に対しひときわ怨嗟が込められている(気がする)視線を向けていたご学友らしい女生徒を呼び寄せると、家族的な身内だから、慣れない学院生活の手助けをお願いする旨を伝えている。
その様子を私達は意味の分からない緊張を受けつつ眺めていたが、話が着いたのだろう。エリアスと呼ばれた女生徒は満面の笑みを私達に向ける。
「初めまして、私の名前はエリアス、性はラーフェルトと申します。エフォリアさんの姉君であらせられるセリア様には良くして頂いてますの」
「は……初めまして、エリアス様。えっと、姉様がいつもお世話になっております」
「いいえ……いいえぇ!お世話になっているのは私の方ですわエフォリア様。あぁ!セリア様の弟君なだけあって、なんと謙虚でなんでしょう!決めましたわ!私、エフォリア様推しも兼任します!勿論!エイドリック様やレーナさんの学院生活のサポートも私達の派閥の力でばっちり万全ですわ!」
「おぉう。姉様?この方は一体?」
「うん、言いたいことは分かってるわ……こういう娘なの。でもいい娘だから何かあれば相談に乗ってくれるわよ」
「はぁぁ!セリア様にそこまでの信頼を!このエリアス!命に代えても!」
「命に代えなくていいわよ!?普通にお願いね!普通に!」
「ははー!」
私以外の人間に対しおざなりな対応をしている姉様は珍しい……が、先程のアレフに対しての対応とは違い、塩対応ではなく、気を許した友人に対してのソレに感じる。
姉様はどうやら楽しい学院生活を営んでいたようで何よりだと、思わず笑みがこぼれそうになった。エルドリック君とレーナちゃんはノリに付いて行けず固まってるよ?
「レーナよ、セリア様が気さくな方なのは既に分かってたが」
「想像の数十倍は気さくな方ですね……エルドリック様」
「肩の力を抜いて接していいよ?僕も姉様も外見は二の次みたいな所があるから」
「エフォリア様、流石にそれは目上の先輩に対してなぁ……」
「あら?別にいいわよ?」
「セリア様、流石に私は緊張で倒れちゃいます」
姉様も無茶を言うなぁ、そう考えても私自身も似たようなお願いを二人にしているので、苦笑いでごまかすしかなかった。
師走のせいか、更新が開いてしまいました申し訳ないです。
次回は恐らく年明けとなります。




