3.王都到着
初日にジャイアントホーンラビットの襲撃を受けた以外は、これと言って問題もなく王都へ向かっている。それもそのはず、我々は王都へ向かう商隊の護衛として加わっていた。商隊に元々雇われている冒険者も合わせると実に20人強の人数が居るのを考えると、本物の盗賊はいざ知らず、そこらの素行の悪い追剥ぎ程度なら撃退できるだろう。
魔物に関しても同様だった。初日の襲撃が異常だったと結論付けている。暇を持て余してたので、私はエイドリックとレーナに残心の大切さを語っていた。
「傍から見たら死体相手に剣を突き立てる行為だし、見た目も悪いけど確認は大切だよ?」
「でも流石に、確実に死んでいる相手にそこまで必要ですか?」
「首を刎ねようが心臓を貫こうが、魔物も……人ですら数十秒は動く場合もあるんだ。確実に仕留めているか確認するまでは残心は解くべきではないね」
「はぁ、そんなものですか」
「そんなものだよ」
こればかりは経験しないと実感が薄い。エイドリックもレーナも「急所さえ当たれば生き物は簡単に死ぬ」と思い込んでいるが、全く逆だ。バラバラに消し飛ばさない限りは中々死なない。
少なくとも手足を欠損させるなり骨を砕くなり、戦闘能力を喪失させるまでは残心は解いてはいけない。油断が死を招くのは私は5年前に経験したので口酸っぱく教える。
「盗賊と対峙したとき、私は油断して危うく首を刈られそうになったからね、火事場の何とやら……生き物は今際こそ恐ろしいものだと私は考えてるんだよ」
「エフォリア様の言うと通りですぞ?エイドリック様、レーナ嬢ちゃん、何事も油断は禁物ですからのぉ。ワシにも経験ありますわい」
話を聞いていたトムボさんが御者窓から話しかけてくる。現在の実年齢では私より遥かに長生きしている人生の先輩の言う事には、年の功がある。エイドリック達も考える切っ掛けになってくれれば良いだろう。
そんな話をしていると、街道の向こう側に王都の城壁が遠目に見えてくる。
距離としてはまだありそうだが、何とか今日中には着きそうだ。
「エフォリア様!王都が見えてきました!」
「私、王都は初めてです!」
エイドリックもレーナも大はしゃぎだ。
はっはっは~……落ち着きたまへよ君たち……と平然を装っているが、私も王都に足を踏み入れるのは初めてだ。王都には母様の母様……つまりお婆様が居る。
父様と母様は王宮へ呼ばれる事があるので王都へよく行ってはいるが、生活の全てがヴァイト辺境伯領内で賄える我々兄(姉)弟は王都学院へ通う以外はこれと言って王都へ足を踏み入れることは無かった。
だからと言って、お婆様と会ったことが無い訳ではない。辺境領は避暑地扱いでお婆様は毎年遊びに来ており、お婆様が来る度に父様の普段見られない緊張する姿が見れた……
「あ……そういえば……母様と父様からお婆様宛に書簡を預かってたな。後ほど届けようか」
お婆様はとても好人物だが、如何せん多少口うるさい所がある。なお、姉様の淑女教育を母様から引き継いでいるので、マナーにはとても五月蠅いのだ……それこそ母様以上に細かい。
そう考えると、少しだけ憂鬱になりそうになるが、負けるな私!私とて精神年齢はお爺さんの方に近いオジサンだ!社会人経験を全開活用して対応すれば問題ないはずだ!……多分……姉様……しごかれてそうだなぁ……
「エフォリア様?さっきから考え込んでますが、お体が悪いんですか?」
思わず唸っていたのか、レーナが心配そうに問いかけて来た。私は頭を振り、とりあえず大丈夫であると伝える。
「あぁ、大丈夫だよレーナ、少し今後の学院生活を考えていただけ」
「何か心配事でも?」
「あー……心配事と言うよりは、うちの家の事かな……」
「そういえば、エフォリア様の姉君、セリア様が学院におられるんですよね?」
「あ、セリア様は私も存じております!とても優しくて、素晴らしい人です!」
……あれ?姉様の噂って貴族だけでなく領民にまで広まってるの?それどころか、存じている?仮にも伯爵令嬢の姉様を言っては何だが、元は貴族ではないレーナが会った事あるのかな?という疑問が浮かぶ。
「レーナ?姉様を知っているの?」
「はい!ミルシナ様とご息女のセリア様は、ご一緒に何度も町々の様子を見に来られてましたので、私もお声をかけて頂いたことがあります!お二方はとっても優しくて、町の皆さんから改善して欲しい部分の意見を集めると、すぐに行動に移してくれました!!」
「お二方の事は、僕のお父様も「聖母様!聖女様!」と崇拝してますよ。実際、あのお二方も僕は見習いたいと思います」
「なるほど、それなら納得……あ、間違っても本人たちの目の前では二つ名は言わないであげてね?絶対に嫌がるから」
「エフォリア様、そこは僕もレーナも心得てます。推しは遠くから見守ってこそです!」
「エイドリック?ちょっと話そうか?レーナも力いっぱい首肯かない」
そうこうしているうちに、王都の大門手前に到着した。名残惜しいが商隊とはここでお別れだ。一緒に護衛についていた冒険者は、何かあればギルドに行けばいいと親切に教えてくれた。
なんでも、王都学院の生徒も小遣い稼ぎのために、冒険者登録している人もいるらしい……私達みたいな地方貴族にとっては体のいいアルバイトみたいな物なんだろうか、場合によっては市井を知るのに良い経験となるかもしれない。
「冒険者登録か……考えてみようかな」
「エフォリア様が登録されるのであれば、僕も登録しますよ?」
「私も、お小遣い稼ぎになるなら……」
エイドリックと私はともかく、一代貴族として騎士爵を叙爵されたばかりのレーナにとっては市井云々の前にお金稼ぎは大事だった。王国からの支度金があるとはいえ、自由に使えるものでもない。
王都学院は基本は無料とは言え、生活費までは出ないのだ。そのような状況だと、冒険者登録をして採取依頼なり清掃なりを請け負えるのは有難いのである。
私もエイドリックも、やらいでか!と気合を入れる。
「それじゃ、後日3人で登録しようか?危険なクエストを避けたとしても、3人でパーティーを組んでた方が安心だしね」
「「はい!」」
王都での方針を話しながら貴族用の検問所を抜けると、世界が一変し多様な感覚に陥る。思わず「おぉ~」と声が出てしまった。お上りさんが過ぎるかな?と少し恥ずかしく感じたが、何のことはない、2人も同じ状況だった。
冒険者ギルドが置かれ、商店が建ち並ぶ市街を抜けると雰囲気が変わり貴族街に入る。さらに進むと王都学院がそこに存在していた。僕らは馬車から降り、トムボさんと一緒に各々の荷物を馬車から降ろす。
トムボさんはこのままヴァイト家の別宅で一晩明かしてから、ヴァイト領へ戻るということだ。
「トムボさん、お世話になりました」
「坊ちゃん、4年間は長うございます。偶には戻ってきてくだされ」
「夏季休暇には戻りますので、その時に会いましょうトムボさん」
「楽しみにしてますわい。セリア様にもトムボがよろしく言っていたとお伝えくだされ」
「それなら、帰りを少し遅らせませんか?明日なら多分、姉様も別宅に連れて行けると思いますよ?」
「いいえ、まだ仕事の最中ですからの……エイドリック様、レーナお嬢ちゃん何卒、坊ちゃん……エイドリック様をお頼みします」
そう言って、トムボさんは私達に頭を下げると馬車を走らせ去っていく。会えなくなった訳じゃないのに、少し寂しく感じるのはノスタルジーの表れだろうか?
「ふぅ……それじゃ2人とも、4年間よろしく」
「「はっ!よろしくお願いします!エフォリア様」」
「それ、やめよ?ほら、ここでは身分も関係なしに接して欲しいな」
そう言うと2人は少し考えた素振りをすると照らし合わせたように……
「あぁ、わかったよエフォリア様」
「よろしくね、エフォリア君」
「うん、よろしく、2人とも」
こうして、私達の4年間の王都学院生としての生活が始まった。
誤字報告ありがとうございます!
日本人なのに日本語が不自由ですいません!
すいません!すいません!
次回より学院編です!
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