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8.いい日、旅立ち

明け方にスティが部屋に来たため、仮眠すら満足に取れる状況とはいえなかった。お陰で太陽が少しだけ恨めしくも感じてくるが、寝れなかったのはある種の自己責任みたいなものだ。

年甲斐もないとはこの事か?眠い目を擦りながら門へ向かう。


「坊っちゃん、準備が整えております。いつでも出発できますぞ」


「ありがとう、トムボさん」


「ほっほ!なーに、仕事ですからの!ワシに任せて下されば安心安全ですわい」


「はは、トムボさんの御者としての腕は信頼してるよ」


盗賊騒動の時、馬車から投げ出され瀕死の重傷を負った御者のトムボさんは、必死のリハビリを行い、こうして今もヴァイト家のお抱え御者として働いてくれている。私も母様も姉様もトムボさんが居なければ、今頃は死んでいた可能性があるのだ、我が家にとっては命の恩人に等しい。

 その忠義から、父様も母様も絶大な信頼を置いている人だ。


「トムボ、エフォリアをよろしく頼むわね」


「かしこまりました奥様。このトムボ、身命に代えましてもエフォリア坊っちゃんを王都に送り届けますぞ!」


元々初老に近かったトムボさんは、この5年で随分と老けた気もする。一度だけ気になって歳を聞いたら、現在52歳……思ったより歳が若いのにこの老け顔、前世日本と比べると栄養比が大きく脆弱なんだろうと感じる。せっかく知識があるのだから、栄養に関しての改善を将来的に行ってみようと考えた。

 何より、私が前世で亡くなった歳とそう変わらないのもショックだ。


「そう言えば母様?女神様はお帰りになられたのですか?」


ふと、スティの姿が見えない事に気がついた。


「女神様は今朝方早くに天界に戻られましたよ?そう言えば……不束者ですがよろしくお願いします。なんて仰られてたのですが……」


「エフォリア、お前女神様に何というか如何わしい事をしとらんだろな?未だに信じられないが、アレは恋する乙女の顔だったぞ……」


「してません!」


父親と母様の言葉は心外である。そのある種の不審に満ちた眼を向けてくるのは止めてくれませんか?スティは確かにこの世界の基準からしても最高レベルに器量が好いと言えるが、相手は女神だ。

 好ましい感情を抱こうが、おいそれと手を出すのは流石に後々恐ろしい結末しか見えないので、いくら好感情を持ってもその一線は越えられない……超えるわけにはいかない。


『んん!?何だこの妙な感覚というか、感情は?』

 

ふと、自身のスティに対しての感情に疑問を抱くが、その感覚は一瞬で霧散する。とても大事な感覚にも捉えられたが、問題はないだろう。


「っと、父様、母様、それでは行ってきます!」


「うむ、エフォリアよ好きなだけ学んで来い!」


「セリアにも父と母がよろしくと言っていたと伝えてねエフォリア」


「はい!見送りに来れなかったアクータ兄様とグラウガ兄様にもよろしくとお伝えください!」


馬車はトムボさんの合図で王都へ向かい走り始めた。

 年甲斐も無く胸が高鳴るのを感じると、何歳になっても新たな出会いに期待し胸躍るのは変わらない事を自覚する。自分の中にある山樫杖一郎とエフォリアの記憶と魂がこれからの出来事に大きな期待を抱いてた。


「本当に、この世界に転生して飽きが来ないな」


「何か言いましたかの?坊っちゃん?」


「んー、何でもないよトムボさんー」


御者窓からトムボさんと会話をしつつ王都までの道のりを進むと、擱座している馬車が見えてきた。馬車には見覚えのある紋章が描かれてているのが見えた。

 あの見覚えのある紋章は……


「フォール子爵家の紋章?」


擱座した馬車の前で、御者と思しき男性と若い男女が途方に暮れている様子が伺える。魔道路による連絡はされているだろうが、このまま無視するのも忍びないと考えると、トムボさんに言ってフォール子爵家の馬車の前で停止するようお願いした。

次回より王都への道のり編です。

恐らく2~3話程度で

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