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8.お父さんは大変だよ

騎士団が帰着し指揮を務めたアクータが帰着の宣言をする。

準備していた使用人が一斉に騎士たちの装備を解除し洗浄を行っていた。

帰着した騎士たちと随伴した兵士には報奨金が下賜されていく。

喧噪激しい中を人知れず捕虜は騎士宿舎地下牢へ連行されて行った。


「父上!アクータただいま戻りました」


許可を経てアクータは執務室へ入室する。

そこには父の他に母と母に支えられている憔悴したナーリャが居た。


「ご苦労だったなアクータ」


「ご苦労様アクータ」


父と母から労いの言葉がかけられる。

ナーリャは……無理もない、連行の際に聞き取りをした。

女盗賊アーリィはナーリャの姉であることは確定していたのだ。

その報告をナーリャも聞いたのだろう。


「父上、お願いがあります!」


心を寄せている人の憔悴は見ているだけで自分の心を穿った。

私は自身の報奨の代わりにアーリィの助命を嘆願する。

しかし、それに対し父は首を横に振った。


「アクータよ……それは駄目だ」


ミルシナが口を開こうとするのをクエルクスは片手をあげて制する。


「酌量はあるが、盗賊働きはそれ自体が死罪なのだ。

 事情が事情とは言え、その女盗賊に殺された者も居るだろう」


「ですが父上!私は彼女の助命とナーリャに会わせる約束をしたのです!」


アクータが怒涛の剣幕で食って掛かった。

父の言っていることが正しいのは頭で理解している。

ただ、死罪と聞いた時のナーリャの悲しそうな表情が目に飛び込んできた。

それは自分にとっても許容できないことだ。


「おやめください!アクータ様!……いいんです……」


ナーリャの事情は父上の側付きだった初老の騎士から聞いた。

話を聞いていく内に、自分が何とかする。

辺境伯である父上に対して身の丈に合わない陳情を行い通すと決心してた。

アクータは取っ組み合いを辞さない勢いでクエルクスに詰め寄っていた。

息子とは言え、辺境伯に手を上げると大事になる。

ナーリャはそんなアクータを止めたのだ。


「ナーリャ……でもそれではあまりにも」


目を伏せ母上に抱き支えられているナーリャの側にアクータが寄った。


「アクータ、ナーリャ……その者との面会は許す。

 すまん、私にも辺境伯としての立場があるのだ。」


アクータはミルシナからナーリャを奪い取ると、挨拶もなしに出て行く。


「はぁ……クエルクス?」


「そう睨まないで欲しいよミルシナ」


「あなたの立場はわかりますが、可哀そうじゃない!」


「わかっている、わーってる!何とかするよ」


凛とした顔立ちのミルシナは怒り顔も凛としている。

その分、整った顔立ちで迫られると、辺境伯でも母ちゃん怖い!となる。

だが、アクータやミルシナが言いたい事は分かる。

ナーリャも気丈に振舞うが、姉を助けてほしいと泣いて懇願したいだろう。


「まったく……お父さんは大変だよ……

 ミルシナ、アクータ達が暴走しないように頼む」


「わかりました……フフ……本当に辺境伯閣下は大変ですね」


最初から何とかする気があるのを見透かしているな。

我が妻は何とも意地が悪い。


「さて…とりあえず、そのアーリィという女盗賊は……」


うちの騎士団は情に厚い者揃いだ。

特に隊長格は皆、このような感じの物語を好んでいる素振りがあった。

んん?大丈夫かうちの騎士団……

多分大丈夫だろう!……大丈夫だろう……うん……

立場と色々な者の板挟みの辺境伯閣下

偉けりゃその分、頭も痛い。

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