表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/39

7.お姉ちゃん

騎士団が帰路に就く。

屋敷では騎士団の到着に合わせて慌ただしく準備が進められる。

帰着した騎士たちの装備をその場で解除し、洗浄と宿舎へ運ぶ準備だ。

その作業は使用人や侍女が当然行う。


「お兄さま、怪我とかされてないかしら?」


「大丈夫ですよ姉様、お兄様の剣の腕は折り紙付きです。

 周りも精鋭の騎士たちですから」


「エフォリアは最近、なーんか達観してるわね……

 いつの間にか自分のことを「私」なーんて気取っちゃってるし」


「そ……そうでしょうか?わた……僕は変わりませんよ」


「いいのよ無理して戻さなくても、少し大人びているなと思っただけよ」


微妙に鋭い姉様こそ大人びている気がします。

そう考えながら窓から外を見ていると、ミルシナ母様の侍女ナーリャが居た。

忙しく動いているのが見える。騎士団の帰着が近いのだろう。


「エフォリア!見えたわ!」


セリア姉様の声に釣られて道の向こうに目を向けた。

道の向こうで騎士団が隊列を組んで戻ってくるのが見えてきた。

前世でいう観閲式を見学した時を思い出す。

出撃時の慌ただしさは無く、悠々と隊列を組んでいた。

その一団から先んじて早馬が屋敷に飛び込む。

騎士は執事に書簡を渡すと、礼を取り一足先に装備を外し宿舎へ向かっていく。

何だろうと思いつつも、今は戻ってくる騎士団の行進を楽しむことにした。


「ナーリャ、手を休めてこの書簡を旦那様に持っていきなさい」


執事から呼び止められると、書簡を手渡された。

騎士団帰着の報告だろうか?それならば既に閣下も見えているのでは?

そう考えつつもナーリャは書簡を手に執務室へ向かう。

その途中、ミルシナ様が居たのでその場で立ち止まり礼をする。


「あら?ナーリャ、どうしたの?その手の物は?」


「これは、閣下にお渡しするように言われまして、お持ちするところです」


「そう、丁度良かった、私も閣下の処へ向かう途中です。一緒に行きましょう」


ミルシナ様は有無を言わさない強引な所がある。

だが、この強引さが心地が良い。

畏まりました。とだけ答えると、大好きな奥様の後ろに付き従う。


執務室をノックし入室の許可を得ると、私は一礼して先に入室した。

そして、ミルシナ様の入室のため扉の傍に立つ。


「ありがとうナーリャ」


天使……いや私にとって女神の微笑みだ。

そして閣下は、ミルシナ様の顔を見ると一瞬だが顔が緩む。

ご夫妻は見ていて本当に楽し……いや仲が良い。


「旦那様、こちらをお預かりしております」


執事より託された書簡をお渡しして、一礼をして退室しようとした。

それは閣下の「待ちなさい」との言葉によって遮られる。

なんだろう?私は何か粗相をしたのだろうか?

恐る恐る閣下の方に目を向ける。

閣下は手紙をミルシナ様にも目を通させた。


「クエルクス……これは……」


「うむ、信じられんが……これは……」


深刻な顔をしている。

何かあったのだろうか?まさか盗賊団の討伐に出ているアクータ様に何か?

私は、内心で思いを寄せている人が傷ついたのではと顔を強張らせる。

しかし、内容は私に別の衝撃を与えてきた。


「ナーリャ、お前の姉の1人が見つかった可能性がある……」


「……え?……」



あの時、あの戦渦で見失ったお姉ちゃん達。

大人たちが逃げ、私が逃げ遅れた壊滅した村の記憶。

隣国の兵士に捕らえられ乱暴されそうになったのを閣下が救ってくれた記憶。

鼓動を早める心臓を抑え込むように体を丸める。

慌てて駆け寄ったミルシナ様が私を抱き支えてくれた。


「も……申し訳ありませんミルシナ様……」


「いいのよ、息を大きく吸いなさい。落ち着いて……」


ミルシナ様に支えられる私に閣下は手紙を渡してくれた。

震える手で手紙を受け取り目を通す。

盗賊団を壊滅させ、女の盗賊を捕虜にしたことが記載されている。

そしてその盗賊が私の名前を言った事が書かれていた。


「お姉ちゃん……アーリィお姉ちゃん……」


飛んで行きそうになる意識の糸を必死に手繰り寄せていた。

主人公はエフォリア君です。

空気です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ