表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/39

6.思いを寄せる人

魔法士が女盗賊に"隷属の印"を施した。

この印は、対象者が主人に設定された者に対し反抗するのを防ぐ。

現在のわが国で施されるのは、犯罪者か奴隷しかいない。

我が王国では、奴隷と言う身分は撤廃されている。

この印を施された者は犯罪者しかいないのであった。


「主の設定は私に、少し気になることがある」


アクータを主人とした設定が行われた。

隷属の印が施された以上、逃亡や自殺の心配はない。

それらは印に付与される強制力により防がれる。

彼女には討伐後の後始末を手伝わせることにした。

死体の検分やアジトの捜索など捕虜の使い処は多い。


「捕虜を取られたのは良い判断でした。

 あの女盗賊のお陰で検分が滞りなく進みますな」


「そうだね、彼女が私の処に向かってきた時は少々焦ったよ」


アクータは苦笑と共に本心が口に出る。

肩当てを使って相手の武器を滑らす熟練の芸当。

正直、今の自分が能動的に行えるものではない。

何千と繰り返した訓練の成果がここ一番で出てくれた。


「騎士団の指導の賜物だな、感謝するよ」


「何をおっしゃいます?アクータ様の努力が実を結んでるのですよ」


護衛を兼ねてくれている初老の騎士とそんな談笑を行っていた。


「ところでアクータ様、あの女盗賊ですが、なぜ御身を主としたのです?」


当然の疑問だった。

指揮官のアクータが主人となれば他の者は女盗賊を無下に扱えない。

要らぬ心配とも考えたが、念には念を入れた。

辺境伯領の騎士団は、虜囚に対し一定水準の扱いを行うよう規範がある。

他の領や他国の騎士団と比べると稀有なんだろう。


世の中には、占領した地域の人々から略取や略奪を行う権利を

褒美の代わりとする貴族も居るのだ。


「私が取り押さえた際に、母上に仕えている侍女の名前を言ったんだ」


「ナーリャ殿の名前を?……うむ……可能性はあるのか」


「可能性?何か心当たりがあるのか?」


「はい、アクータ様はまだ小さかったのですが……」


隣国との小競り合いで戦場に巻き込まれた村の話は聞いたことがある。

戦災孤児となったナーリャを父が連れて帰った事も当然知っている。

私が今のエフォリアより何歳かほど若かった頃の話だ。

当時は妙な子が来た程度の感覚だろうか?歳も近く打ち解けるのも早かった。

そう思う……彼女は元々が無口だしな……まぁ早かっただろう!


さておき、ナーリャに姉妹がいるのは初耳だ。

初老の騎士は、父の側仕えに付いていた当時の様子を細かに教えてくれる。

ナーリャが父に連れてこられた時は、姉を求めて泣いていたという話も聞いた。


「そうか……その場合、あの女盗賊はどうなる?」


「盗賊働きを行っていた事実は変わりません……ですが事情が事情です。

 あの戦渦に巻き込まれた少女が必死に生きるために藻掻いたとなれば……」


「酌量は有るやもか……この件は、屋敷へ持ち帰りだな」


歯車が一つ違えれば、あそこにいる女盗賊は侍女のナーリャだった可能性もある。

そう考えるとあの女盗賊を尚更に無下には出来ない。

心を寄せている(ひと)の姉は手に掛けたくないなと誰にも聞こ聞こえないように呟いた。

お兄ちゃんは侍女のナーリャさんに……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ