2.クリスティアーネ様と山樫さん
49歳の人生が長かったのか短かったのかは人それぞれの考えがあるだろう。少なくとも私の人生は、もう少し生きていてもよかったと考えるくらいには充実していた。
『現実は非情である』そんな言葉が頭を過ぎる。
「あーそうですか……死んでしまいましたか……」
「本当に申し訳ありません。お詫びというわけではないのですが、山樫様には今後の選択権を受け取って頂きたいと思います」
「あの、その前によろしいでしょうか?」
「へ?…あ、はい!何なりとお聞きください」
テンプレだとこの人は神やそれに順ずる者なんだろうか?随分と下手に出てくるのを見ると、本当に申し訳ないと考えているのだろう。少なくとも、この女性からは悪意の気配は感じなかった。
「貴女はどちら様なのでしょうか?」
そう問いかけると、彼女は顔を真っ赤にして自己紹介を始めたのだった。
「申し訳ありません!生と豊穣の女神【クリスティアーネ】と申しますぅ!」
「ご丁寧にありがとうございます。私は【山樫杖一郎】と申します。あの、女神クリスティアーネ様?私の死因はなんでしょうか?」
「えっと、資料によれば……心臓発作となっておりまして、ご遺体もすでに荼毘に付されています」
荼毘?この女神様はこの見た目で仏教系なんだろうか?と考えていると、どうやら日本人にわかり易く言葉を選んでくれたらしい。変な所でサービスが充実しているな。
「ここに来る予定の人が別に居たのですが、うっかり取り違えをしてしまって」
クリスティアーネと名乗った女神はそう告げると、うつむいてしまった。うっかりで人が死んだら八〇衛もびっくりだなぁと、ぼやきそうになるのを堪えたところで、ふと気になることが一つ……女神様に本来こちらへ呼ばれる予定だった人物を聞いてみた。
「えっと、天界コンプライアンスの絡みでお伝え出来ないのですが……山樫さんは不手際でこちらに連れてきてしまったので、知る権利がありますね」
天界もコンプライアンスを重視する世の中に世知辛さを覚えるが、黙っておく。はて?コンプライアンスがあるということは、この女神より上位者も居るだろうか?
「"夢ノ宮ひめ"ちゃん8歳となっていますね」
「あんたそんな小っちゃい子を死なせる気だったのか!?」
「ひぃ!?ごめんなさい!」
流石に8歳の子供が犠牲になるのは、私は死んでいるが目覚めが悪い。その子の未来を救えたと思うようにしよう。
「子供が犠牲になるよりは、私のような中年が身代わりになったほうがマシか」
誰の目にも分かるような大きなため息が思わずこぼれ出る。その様子を見て、女神様がビクッ!とするのが目に入るが、怒っても仕方ない。なんにせよ、事ここに至ってはこの女神様を頼るしかないのだ。
できれば、万事うまく解決してほしいけど、そうはいかないだろうなと天を仰ぎたく気分だった。
子供が犠牲になるのは許せない系おじさん。
そしてポンコツ気味が隠せない女神様
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12月3日に修正




