3.女盗賊
内心はとても焦っている。
騎士がヤバいのは経験上わかっていた。
だが、手薄な警備と思っていたあの村……
あそこに陣取っている騎士はヤバい。
元冒険者としての経験が告げていた。
「殺ったと思ったんだけどねぇ……
なんだいアレは、嫌になるよ全く」
Bランク程度のスカウトを逃したのは不覚だった。
だが、これは身を隠すチャンスとも考えれる。
先の騎士が投擲した槍は女盗賊の腕を掠めていた。
辺りを見渡す。近くに誰も居ないことを確信すると、
女盗賊は傷口を軽く広げた。
辺りに血を振りまく。更に衣服の一部に血を付けた。
それらを木々に引っ掛け引き裂き残す。
少し移動し、止血をした。
自身が負傷し落ち延びたと見せる工作をしたのだ。
「これで上手くごまかせりゃ良いんだけどねぇ……」
周りの気配に細心の注意を払い、その場を後にした。
後は樹海から人知れず出て、大きめの町で領民に成り済ます。
根拠はないが大丈夫だ、成功する。
周りには冒険者のスカウトの気配もない。
私と同じような盗賊の気配もない。
騎士団とあのクソッタレ共が戦闘を始めたのを合図にトンズラだ。
逃走計画を頭に浮かべながらある程度移動する。
そして、魔物をやり過ごし樹海と気配を一体化させる。
潜伏と気配感知、気配遮断には絶対の自信がある。
「さぁ……【アサシン】としてのアタシの正念場だ……」
【アサシン】の職業はスカウトの上位職業だ。
対象の暗殺が主な任務だがアサシンは全般的にスカウトよりも
潜入や追跡等に長ける。
スカウトでAランクに上り詰めた冒険者しかアサシンにはなれない。
女盗賊はそれだけに自身の実力に絶対な自信を持っていた。
スゥーハァ……スゥーハァー……
息を潜め気配を断つと同時に、周りの気配を探る。
あの村の周りの気配の数が急に増えていく。
騎士団が到着したのだ。
騎士の駆る馬は、補助魔法と強化の作用がある馬具により、
通常より圧倒的に早く、安定した行軍を可能とする。
「早いねぇ……もう本隊のご到着か……」
騎士の力はさっき見ての通りだ。
冒険者でもAランクならやっとこ生き残れるか。
Bランク以下だと戦闘に於いて、その力の差は覆せない。
本隊と言うことは最低でも50人以上は騎士が居るのだ。
「……化け物揃いだよまったく」
泣きたくなる。
あの斥候に出した5人を縊り殺してやりたい。
「……リャ……お姉ちゃんが探し出すからね」
呼吸の回数を減らし、鼓動のを抑えていく。
女盗賊は誰にも知られぬようにその気配を闇に同化させていった。
「大丈夫だ……アタシは生き残る……今までも生き残れたんだ
頼む女神様、アタシを不幸と思うなら慈悲をおくれよ」
やることはやった。
後は、なけなしの信仰心に縋るだけだった。
お姉ちゃん頑張るガール




