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5.転生者

騎士隊の護衛を受け屋敷に戻ると、物々しい雰囲気だった。

屋敷には即応できる騎士隊のほぼ全てが戦闘準備を完了している。

そんな中、ひときわ大声で檄を飛ばしている筋骨隆々で完全装備の男が居た。

あぁ、父さまだ……


「相手は皆殺せ!1人も残すな!妻と子供たちを何としても救うのだ!」


なんとも物騒な物言いである。

そんな最中、執事が僕らが戻ってきたことを伝えたらしい。

父さまは瞬時に此方を向くと、盗賊のリーダーの踏み込みが霞む速度で

向かってきた。その速さ、隼の如き。


「おまえたちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「あなたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「お父さまぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


やばい、父さまマジやばい。土煙が上がっています。

周りの騎士隊の人が目で追えなかったと言ってますよ?

そしてこのノリ、いつもの僕なら同じノリなんだが、今は何となくね。

あれ?父さま?なんかこっちを見てますね?

何ですか?その寂しそうな顔は?あれ?母さま?姉さま?

コホンとひとつ咳ばらいをして。


「父さまぁぁぁぁぁぁ!」


「おぉぉぉまえたちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「あなたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「お父さまあぁぁぁぁぁ!」


なんか周りも、ヨカッタネーと目頭押さえたりしているし

実際に危なかったのは確かだし、まぁいいや。





◆◆◆◆◆<<夜も更けて>>◆◆◆◆◆




ミルシナがクエルクスに一通りの報告を行っている間に、

僕と姉さまは湯浴みで体の汚れを落とした。

寝室へ滑り込むと、睡魔が間髪入れず襲い掛かってくるようだ。

流石に疲れたよ、疲れたんだ。

そう呟くと、微睡の中に落ちていった。



不思議な夢を見る。

どこかわからない世界の話だろうか?黒髪の男の人生が走馬灯のように

頭を過ぎていく。

男の名前は【山樫杖一郎】と言った。

山樫杖一郎は町の商人のような体躯をしている、物腰も穏やかだが武術を

嗜んでいる。この世界の武術とは別の武術だ。

杖術?【神道夢想流杖術】打ち合い稽古とはいえ、型稽古に意味があるのか?

子供ながらにそう考えていた。だけど……


「あぁ?なにぶつぶつ言ってんだガキィ?恐怖で狂ったか?

 そんな棒一本持っても、お前は無残に死ぬんだよ!」


場面が変わった。

突如あの盗賊のリーダーと対峙した所だ。

だけど、対峙しているのは僕じゃない、あの山樫杖一郎だ。

どう考えても父さまより年上の普通の男だ。

目の前の盗賊と比べると明らかに、そう、明らかに弱そうに思える。


『オジサンはこう見えても、割と強いんだよ』


そうだ!山樫杖一郎は確かにそう言った!

刹那、盗賊が切り込んできた。

迫る剣を杖が払う、繰りつけ、打ち込む、突いて薙いで、留める。

杖の動きに見惚れる。自在に動く杖と前後左右の足捌き体捌きが加わる。

単純な打突も複雑な理合いを礎としているのが理解できる。



"突かば槍 払えば薙刀 持たば太刀 杖はかくにも外れざりけり"



ただの棒が杖が千差万別に変化し相手を追い詰めていく。


「すごいや…」


エフォリアの記憶と山樫杖一郎の記憶、そして人格が

融合していくのであった。


チチチ…


鳥のさえずる鳴き声が聞こえる。

泥のように眠っていたのだろうか。

カーテンを開けると朝の陽ざしが眩しい。


「うん、そうなんだね。

 僕、いや私は【山樫杖一郎】の転生者なんだ」


10歳の貴族の子供にあの盗賊が倒せるわけがない。

しかし、今の私は山樫杖一郎が人生を費やした杖術の理合いがある。

この世界には存在しない様々な知識を持っている。

ふと心配になって考えるか、ちゃんとエフォリアとしての記憶も

持っていた。

今の父様と母様へ対する愛情も兄様、姉様への愛情もある。

安心した。私は【山樫杖一郎】ではなく、この世界の【エフォリア】だ。

ヴァイト辺境伯の息子として生を受けているんだね。


「とはいえ、昨日のあのノリは、記憶が戻っている今だと気恥ずかしい」


元が49歳の中年だ。

あのノリで『父さまぁぁぁ!』とか『母さまぁぁぁ!』とかは少し……

分かっていても恥ずかしい、今は10歳の子供になっているとはいえ。

いや、乗り切ろう。私とてヲの字の付く人間だ。

ライトノベルも読んでいた。ノリと勢いは大事だな。


「うーん。清々しくも頭の痛い朝だ。」


エフォリア=ヴァイトとしての人生を始めよう。

そう思いながら、朝の準備を始めるのであった。

山樫杖一郎さんとエフォリア君が

ひとつになりました!


子供が大人びるのか?

子供の仕草に大人が苦労するのか?

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