↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甲賀忍者、甲子園へ行く[地方大会編]  作者: 山城木緑
13. いざ初戦 甲賀者、参る
PR
108/240

5

 一回表、藤田はなんと三者三振という抜群の立ち上がりを見せた。しっかりとデータを暗記した滝音のリードによるところもあるが、何といっても藤田のボールは走っていた。


「よっしゃあ、やるやんけ藤田」


「ナイピー、ナイピー!」


 ベンチへ戻る藤田の背中がバシバシと叩かれる。最後に副島が藤田の尻をぽんと叩いた。


「ええぞ、藤田。最高のボールやった。お母さん、喜んではったぞ」


 帽子の鍔に指をあて、藤田が笑顔で応える。この人の情熱を甲子園に連れて行きたいという気持ちも強い。僕らの誇れるキャプテンだ。


「藤田、ナイス」


 ベンチから出てきていた白烏がハイタッチする。


「いけるとこまで行きます」


「オッケー、いつでも受け継いだるから」


 一方の遠江姉妹社ベンチは慌ただしかった。そもそも登録ギリギリに部員が揃った甲賀高校のデータはほとんどない。唯一知られていたのは藤田と副島だったが、藤田がここまでの球を投げるとは予想を越えていた。


「良いぞ、あのピッチャー」


「3人にかかってるかもしらん。ゼロで頼むで」


 ベンチ前でキャッチボールをする3人のピッチャーに遠江姉妹社の選手が頼んだ。


「ああ」「分かってる」「うん」


 遠江姉妹社の三枚看板が同時に頷いた。古豪とはいえ、やはり甲子園出場経験のある高校だ。その巧みなベンチワークが甲賀ナインへ牙を剥く。



 一回裏、犬走が打席に入り、だらりとバットを下げている。何事かとキャッチャーが犬走を見上げるが、表情はいたって真剣だ。


 遠江姉妹社の先発は右の本格派。犬走の構えにも動じている様子はない。犬走は昨日の伊香保の話を思い出していた。


「3人のピッチャーは三者三様。右の本格派に、左の技巧派、それに右のアンダースロー。それぞれ特徴はあるけど、ものすごい球を持ってる訳じゃないの。……ただ、この3人、怖いくらいに淡々と投げてくる。感情がないんじゃないかって思うくらいよ。そういうキャラだからなのか、コントロールは3人とも素晴らしいわ。だから、序盤はこのデータは役に立つと思う」


 犬走は伊香保の話の中で気になっていた部分があった。伊香保は「序盤は」データが役に立つと言った。おそらく分析されていると気づけば、途中からリードを変えてくるという意味だろう。この序盤でデータを駆使し、先制点、できれば一点でも多く取っておく必要があるのだ。


 犬走は初球に賭けていた。初球は主に2つのパターンだと伊香保は分析していた。ストレートもしくはカーブ。球速差があるから、普通の打者はどちらかにヤマを張らないと合わせづらい。ただ、試合開始の初球に絞ると、ストレートが8割を超える。コースは低めを丁寧についてくるらしい。コントロールが良いから、低めと絞れるのは犬走にとってありがたい。しかも、守備位置は普通の守備位置だ。ちょこんと当てるだけなど毛頭にないらしい。この初球、集中しさえすれば、犬走が圧倒的に優位だ。


 初球。おおかたの予想通り、真ん中低めにストレートが来た。少し走りながら犬走はバットに当てる。背中にキャッチャーが動揺している姿が浮かぶ。ピッチャーが冷静にいち早くボールを追って前にダッシュしていた。が、ボールを取って一塁を見ると、既に犬走は一塁に到達する手前だった。遠江姉妹社の内野陣が呆気にとられている。


 セーーーフ!


 先頭の犬走、光速で駆け抜け、ノーアウトでランナー一塁となる。伊香保と副島が派手にガッツポーズしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。