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神々の雫  作者: しおこ
7/9

黄金色-2




アランは、信じられない光景に目を見張っていた。まず、……いろいろ疑問点はあるが……

「誰だ、アイツは……」

知らない少女が、家出してきましたというようなワンピース姿で、戦っている。それも、明らかに奪ったのであろう魔族の剣一つで。そして少女は、人間離れした強さを発揮していた。四方八方から来る敵の剣を薙ぎ払い、そして恐ろしいスピードで身を回転させて一気に敵を斬りつけていっていた。彼女の周りには、数え切れないほどの魔族が積み重なるように転がっていた。一隊分の強さは確実にある。それ以上かもしれない。その強さに、アランは確信した。彼女は、自分と同じアギオンである、と。

(助けなければ)

魔族軍は少女の存在に軍を乱している。それは大きな波紋となっていて、ここから見渡す限りでも統制が乱れ始めていることは間違いない。隊列が後方から崩れてきている。焦るような怒号がそこかしこから聞こえてきているのもわかった。これは、チャンスだ。

アランは黒髪を風で靡かせながら、すらりと滑らかに鞘から剣を抜いた。そして馬を降り、離れたところで少女に向かって手をかざしていた魔族の方へ……足を蹴り出した。

一瞬だった。一瞬でアランはその魔族の元へとたどり着き、そして次の瞬間には正確に敵の喉元をかっ切っていた。血が飛び、アランの顔に少し掛かる。左手の甲で軽く拭いながらも、右後方からの斬撃を軽く受け止め、弾き飛ばす。そして素早く黄金色の炎を剣身に纏わせて周囲の敵を焼き尽くすと、同じように周囲の敵を倒しきった少女が死体が積み重なった上に立っていた。ざわ、と一際強い風が吹き、少女の銀糸のような細く美しい髪が靡く。傾き始めた夕日を反射した髪と、透き通るような青い瞳が酷く美しくーー血で染まった白いワンピースと合わさって、彼女の存在をとても危うげに見せていた。

「退却だ!!!」

そんな声が敵陣の方から聞こえ始め、徐々に魔族軍が退いてゆく。やはり、こちらからの偶然の奇襲により隊列が乱されて連携がうまく取れなくなったことが原因だろう。ということは、このどこから来たのかもわからない少女の手柄でもあるというわけだが……

ふ、と敵軍から視線を移動させて少女の方を見ると、彼女は剣を静かに地面へと落とし、血で汚れていない青々とした草の上に立っていた。そしてその綺麗な青い瞳でアランを見つめている。アランが困惑して眉を寄せていると、少女は静かに微笑んだ。とても大人びていて、まるで少女には思えないような表情だった。

「ーーアレスね」

「は?」

なぜ、それを。何故わかる。

アランが眉を顰めると、少女は愉快そうに目を細めた。

「わかるわ。その姿、アレスにそっくりですもの。あんな野蛮な神に目をつけられて、貴方も苦労しますわね」

「……貴女は、一体誰なんだ」

その言い草、まるで、アレス神と知り合いのようではないか。まさかこの人は、この少女ではない……?

アギオンならそれも頷けるが、まさか彼女は……

「貴女はまさか、」

「ええ、神よ。この子に力を貸している、ね。この子危なっかしいから、つい出てきてしまったわ」

この子、という瞬間に人差し指で自らの胸をトン、と指し示したあたり、やはりいまこの少女の体を操っているのは本人ではなく神力を与えた神なのだ。アランは生唾を飲み込んだ。

「……まさか、既に貴女が主導権を握っているのですか」

「いいえ、まさか。そんなことしないわ、これはエリシアの身体だもの。私はただこの子を助けたいだけよ」

「……そうですか」

エリシアとは彼女の名前だろうか。

それなら良かった、とアランが安堵していると、名も分からぬ神は「あら」と小さく呟いた。

「そろそろ行った方が良いみたいよ?もう魔族軍は撤退してるもの」

「あ、ああ……」

そんなことはわかっている。だが、彼女だ。彼女は戦っている時、少し派手にやらかしていた。アランが来た後も、確か一度だけ高く飛び上がっていたはずだ。その姿を、騎士団長や騎士たちに見られていたら、彼女はおそらく捕まる。もちろん、その力が国のために役立つと判断されるからだ。アギオンであるというだけで、おそらく捕らえられる。

アランは目を伏せ、そして顔を上げて口を開いた。が。

「私もそろそろ……限界らしいわね」

「え?」

その瞬間、少女は目を閉じてぐらりと傾き……そのまま地面にへたり込むように座り込んだ。



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