始まり-4
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エリシアの剣はもちろん、相手に簡単に受け止められ弾かれる。重さが柄から伝わってきて、エリシアの手はビリビリと痺れた。相手の剣の方が特別重いわけでもないしむしろ全く同じ量産型の剣であるというのに、やはり性差と経験差が如実に表れている。
だが、エリシアはいまアギオンの姿となっている。身体能力は、常人の何倍もあるのだ。
エリシアは身体ごと弾かれて体勢を崩したが、剣を下にして地面に手を着くと同時に足を蹴り上げた。それが相手の顎にクリーンヒットし、魔族一人は後ろへとゆっくり倒れていった。しかし、戦っていた間に詠唱していたのだろう、エリシアは詠唱を終えたらしい魔族数人に囲まれていた。彼らは身体を魔力で光らせ、手をエリシアの方に向けている。
マズイな、と思った瞬間、無意識に地面を蹴り上げていた。ゆうに5メートルは飛び、エリシアが先ほど立っていた地面に魔法が直撃し、燃え、凍り、色とりどりの火花が散り、と大変なことになっていた。そして魔族たちは空にいるエリシアを見上げて目に止め、目を鋭く光らせる。アギオンか、と言われたような気がした。
(……ここまで、かな……)
諦めかけた時、頭に何かが侵食され始めた気がした。脳の一部分が靄で覆われていくような感覚。それは懐かしいような恐ろしいような温かいような冷たいようなーー
ーー私にやらせなさい
その声はエリシアの脳内に美しく凛と響いた。
「え……?」
思わず呟くと、体が止まった。最高地点に到達したのだ。エリシアの体はそのままあとは地面へと落ちて行き、そして魔族に囲まれ無残に串刺しにされるか燃やされ凍らされ原型も留めないくらい酷く殺されるのだーー。そんな未来を描きエリシアが眉を寄せて目を細めた瞬間、またあの声が響いた。
ーーいいから、今だけでいいから寄越しなさい
「ーー貴女は、誰?」
何でソコに……私の頭の中に居るの?
そう問おうとした時、靄はエリシアの頭を一気に覆い、それと同時にエリシアは気を失ったのだった。




