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引っ越し

トラックで、1時間ぐらいゆられて、引っ越し先に着いた。

今までとはちがって、そこは、周りが田んぼだらけのなかの一軒家だった。

「ここなら、ぼくと暮らしても周りから文句は出ないな。」

「うるさい、管理人もいないし。ちょっと、通勤には、不便か?」

引っ越し屋は、その家に着くと手際よく荷物を運びこんだ。

あっという間に作業を終わると

「一通り、荷物の状態を見てください。」

「問題が無ければ、こちらにサインをお願いします。」

『えっ、サイン?』彼女なんていう名前だっけ。

確か、苗字は、山田って、管理人が言ってたよな。

「あら、亜紀ちゃんいらっしゃい。大家の佐々木です。」

振り返るとそこには、初老の女性が自転車のハンドルを持ちながら立っていた。

「大家さん、お世話になります。」そう言うと慌てて、書類にサインした。

「ありがとうございます。自分たちは、これで失礼します。」

そう言って、彼らはトラックに乗り込むとそのまま来た道を帰っていった。

「大家さん、すみません。姉は、今日は、向こうのお部屋にまだ残っています。

わたしは、妹の由紀です。」

「そうなのね。」

「あっ、これ自転車、使ってね。」

「この辺は、田舎でしょ。駅まで遠いから。でも、妹さんがいらっしたのね?」

「で、ねこちゃんは?」

「猫ちゃんと一緒に暮らせる。といったら、飛び跳ねて喜んでたけど。」

「後、すぐに引っ越したいって言ってたから、簡単にお掃除しただけでよかったかしら。」

「大丈夫です。雨風しのげれば言うことないです。」

「ねこちゃんは、ちょっと待っていて下さい。今連れてきます。」

そう言いて、おうちの中に駆け込んだ。

そして、抱いていたくろい猫のぬいぐるみを床に叩きつけた。

「痛いなあ。」

「もう少し、優しく扱ってよ。王女さま。」

 その言葉を聞いて、一瞬で、ぼくは、猫に変身した。

そして、慌てて玄関から飛び出した。

「あら、ねこちゃんこんなところに居たのね。」

「あなたを探しに妹さんがおうちに入っていったけど。」

そういって、ぼくを抱き上げた。

「さあ、ここで待ってましょうね。」

困った。どうしよう、このまま頭でも撫でられて、気持ちよくなったら女子高生の姿に戻ってします。

しょうがない、死神に助けてもらうか。

そう思って、家の方に首をひねって見返した。

居た。死神のやろう、こっちを見てニタニタ笑ってやがる。

『ちくしょう』と思ったが、『これならしばらくは変身しないで済みそうだ。』

『隙をみて、体をひねって逃げ出すか。』

しばらくして大家が、ぼくの頭を撫でようとして腕を動かしたときに、家の方から大きな音がした。

大家さんは、その音がさっき猫を探しに行った妹さんに何か有ったのかと心配で、思わずぼくを地面に置いて家の方に入っていった。

「おじょうさん、大丈夫?」

ぼくも、その後を追うように家の中に入っていった。

再び、女子高生の姿になって、大家さんの所に向かった。

「大家さん、どうかしました?」

「今、家の中で大きな音しなかった?」

「今ですか、全然聞こえなかったですけど。もしかしたら、アーシャが何かに飛び乗った時に引っ越しの荷物が倒れたかもしれないですね。」

「あの猫ちゃん、アーシャちゃんていうの?」

「いい名前ね。」

「そうですね。」

「そのうちどこかから、出てくるでしょう。」

「あら、さっき外にいたわよ。一緒にあなたを待ってたけど、大きな音がしたので逃がしちゃったわ。」

「ありがとうございます。」

「ご飯を用意したら、出て来るでしょう。」

「今日は、ありがとうございました。自転車お借りします。」

「また、何か有ったら言ってね。」

「田んぼの向こうに見えるあのおうちだから。」

そう言って、大家さんは、とぼとぼとおうちに向かって帰っていった。

家の中に入ると、死神が胸を張ってこちらを見ていた。

「どう、役に立ったでしょう。」

さっき、大きな音をさせたのは死神だった。

「そう、ありがとう。」

よく見ると、引っ越しの段ボールが、床に転がっていた。

ちょっと待て、その中には、私の大事なエサ入れが。

慌てて中を開けると、お皿が真っ二つわれていた。

「死神‼」と叫んだ途端、ぼくは猫に変身していた。そして、そのまま、朝まで死神と追いかけっこをしていた。


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