姫様
目が覚めるとそこは、ベッドの上だった。しかも、何も着ていない人の姿だった。
背後に視線を感じて振り向くと、そこには、死神が立っていた。
「お目覚めですか?姫様」
「裸で寝ていると風邪をひきますよ。」
「だったら、お前が毛布か何かを掛けてくれればいいだろ。」
「いや、好きで裸で寝ているのかと。それに、姫様の裸など以前は覗いただけで首が飛んでいましたので。」
「姫様の裸は、本当にお綺麗で、女神のようです。」
ぼくが、その言葉を聞いて、不機嫌になると、いきなり猫の姿に戻ってしまった。
「なんだこれ?」
「どうやら、姫様は、機嫌が悪くなると猫の姿に戻ってしまうようですね。」
「おや、ニャア、ニャア言ってる。」
「これはこれで、可愛いですね。」
そう言うと、死神は、ぼくを膝の上に載せ頭を撫でだした。
気持が良くなると再び人間の姿に戻った。
「おい。お前、何勝手に16歳の少女の胸を触ってるんだ。この変態。」
「あっ、失礼しました。膝の上で撫でていたのでこんなことに。これからは、気を付けます。」といって、鼻の下を伸ばして、ニタっと笑った。
周りを見渡すと、ここは、ぼくが彼女と過ごした部屋だった。
「姫様、早く服を来てさい。目のやり場に困ります。」
といいながら、死神は、視線を逸らすことなくじっとこっちを見ていた。
ぼくは、彼女のタンスから自分に合いそうな服を選んできた。
「ごめんね、あんたの服をお借りします。」
彼女の服を着ると、彼女の体形がぼくとそんなに変わらないことが分かった。
そして、鏡を見ると、彼女のことを思い出してまた涙が出てきた。
「姫様、泣いてる場合じゃないですよ。今から、引っ越しです。彼女が、あなたと過ごすために見つけてきたお部屋に。」
しばらくすると、部屋のチャイムが鳴った。
「こんにちは、引っ越し屋です。」
死神が、こちらを見て、口パクで、
『おれのすがたは、にんげんにはみれない。おまえがでろ。』
「はいはい、わかりましたよ。」
「姫様という割には、人使いが荒いな。」
「はい、今開けます。」
そういって、部屋のドアを開けた。
「引っ越し屋です。ご住所は、こちらでよろしいですか?」
と、書類を見せられたがわからない。でも、そこには、見覚えのある彼女の綺麗な文字が並んでいた。
仕方がないので、
「はい。そうです。お願いします。」とだけ告げた。
ベッドとタンスそしてぼくのトイレとエサ入れしかない部屋の引っ越しは、荷造りをしなくてもあっという間に終わった。
荷物が少ないということもあるが、普段から彼女は、綺麗好きだった。
「これで、全部ですね。」
「はい。」
「後、猫は、どちらですか?」
「猫も一緒に、トラックに載せて次のおうちに移動ってなってますが?」
その時、黒い猫のぬいぐるみが足元に転がった。
「ああ、このぬいぐるみの事です。」
「よかった。じゃ、一緒に行きましょう。」
扉の外に出ると、管理人のだみ声がすぐそばでしたので驚いた。
「やあ、引っ越しですか?これで、このアパートも静かになるな。」
たぶんこいつの顔を見ると不機嫌になる、そう思ったぼくより先に、抱いていた黒猫のぬいぐるみが奴をひっかいた。
「痛い、何をするんだ。」とひるんだ管理人を、部屋の中に蹴飛ばして、そのまま部屋の鍵を閉めた。
「開けろ!」と騒ぎだしたので、扉のポストにカギを落とし込んだ。
「あっ、ごめんなさい。ポストの中にカギを落としちゃった。」
「じゃあね。バイバイ。」
そのまま、その黒猫のぬいぐるみを抱いて下で待っていたトラックに乗り込んだ。




