門
いつの間にか、ぼくは、眠ってしまった。毎日、うだうだしながら、半分以上寝ている猫の習性からか、もしくは、泣きつかれたのか。
何やら、周りが騒がしい。
「おい、着いたぞ。」
「俺の使徒になったことを、とりあえず登録しないといけないからな。」
そう死神が言うと歩きだした。
周りを見ると、黒ずくめの人間がいっぱい鳥かごのようなものを持って、歩いていた。
「おい、18号」
突然、後ろから声を掛けられた。
「なんだ、201859・・・」
「わかったって。俺の番号なんて、有ってないようなものだ。」
「それより、18号、お前がお払い箱になって、俺が代わりに連れてきたやつだけど、猫がどうのこうのって五月蠅くてたまらん。」
「もともとは、お前の案件だから、お前が何とかしろ。」
といって、青い鳥かごを、死神の前に突き出した。
「いいのか。おまえの報酬が減るぞ。」
「いいよ、そいつのおかげで、俺は途中でなんども死にかけたからな。」
「そうか、なら、遠慮なく受け取るとしよう。」
そう言って、死神は、その青い鳥かごを2018・・・から、受け取った。
「おい、ねこ、ちょっとこの行列から離れるぞ。」そう言うと、死神は、その道からそれて、公園らしきものの方へ、ゆっくりと歩きだした。
その公園には、誰も居なかった。
「おい、猫、やっぱりお前はついてるな。」
「お前の飼い主に合わせてやろう。」
そう言うと、死神は、その青い鳥かごの扉を開けた。
中から、白い靄っとしたものが出て来たかと思うと、それは、飼い主の姿になった。
僕の黒目が、一瞬でまん丸になった。
彼女は、ぼくに気付くと拾い上げてぎゅっと抱きしめた。
「ごめんね、放ったらかしにして。」
ぼくは、何も言わずに彼女のされるがままにしていた。
「あなたと一緒にくらすお部屋を探していて、やっといいところが見つかったから急いで帰ろうとしたんだけど、車に轢かれたみたい。」
「そうなんだ。」
彼女は、不思議な顔をして、ぼくの目を覗き込んだ。
「この子は、前世の記憶が有って、人間言葉がわかるようなんだ。そして、今は、君に会いたい一心で、僕の使徒になった。だから、ここでも、君と話ができる。」
「そうなんですね。教えて頂いて、ありがとうございます。」
「それより、申し訳ないが、歩きながら話してもらってもいいかな?」
「ここでは、決まりがあって、死んだ者は、その日のうちに入門手続きをしないといけない。
後、30分ほどしかない。」
「わかりました。」
そうれから、ふたりと1匹は、鳥かごをもった他の死神たちと一緒に歩き出した。
ぼくは、彼女に抱かれたまま、死神と一緒に歩いている。
「お嬢さん、門に着いたら、黙って俺の後を着いてきて欲しい。」
「どうやら、その猫を抱いていると幸運に恵まれるようだ。」
「以前、ぼくが、ここに連れて来た君のお母さんが、あの門の傍まで来ているようだ。」
「そうなんですね。でも、私、母親の記憶が無いからわかるかしら?」
「そうだな、ただ、親子は、面と向き合えば、お互い親子だってわかるから心配するな。」
「ねえ、死んだことは、悔しくない?」
「悔しくは無いけど、きみに会えなくなったことが悲しかった。」
「そして、君まで死なせるかもと思うと怖かった。」
「そうか、ぼくは、たまたま管理人の開けたドアの隙間から逃げ出せたんだ。」
「だから、大丈夫。それに、ご飯もこの死神が分けてくれた。」
「分けただと、俺がコンビニのごみ箱を漁るわけないだろう。あれは、おまえの分だけだ。」
「そう、ありがとうございます。」
彼女が、死神に頭を下げた。
しばらくして、ふたりと1匹は、大きな門をくぐった。




