暗い部屋
「着いたぞ。」
ほんの数秒、空を飛んでいたような感覚だったが、そこは、見たこともないところだった。
当たり前か?近所の公園と彼女のアパートしか知らないから。
「ここは、どこ。」
「病院だ。まだ、生きてると良いがな。」
ぼくは、その言葉を聞いて、死神のマントから出ようとした。
「待て、今から彼女の病室までつれて行ってやる。」
「壁抜けの途中でマントから出るとお前の体が壁と同化するぞ。」
ぼくは、慌てて死神のマントにしがみついた。
「怖けりゃ、目を塞いでな。」
ぼくは、瞼を思いっきり閉じた。
「ここが、彼女の病室だ。」
そっと目を開けると、そこは、真っ暗な病室いや、霊安室だった。
「ちょっと、遅かったな。」
霊安室の簡易テーブルの上に彼女は静かに横たわっていた。
「綺麗なお嬢さんだな。」
「あたりまえだ。」
「彼女のお母さんにそっくりだ。」
ぼくは、そのテーブルに飛び乗り、彼女の顔を一生懸命舐めけど、目を覚さなかった。
そして、ぼくは、大声で泣き叫んだ。
「おい、こんなところで泣き叫ぶな!静かに送ってやろう。」
しばらく死神は、ぼくが落ち着くまで頭を撫でてくれた。
「痛いんだよ。もっと、優しくなでろよ。」
「こうか?」優しくなでる死神の手に、再び彼女の手を思い出した。
いかん、また、泣いてしまう。
「そろそろ行くか?」
「ここに居ても仕方が無いだろう。」
「死神って、クールだな。」
「まあ、こんな場面は何回も見て来たからな。なれたよ。」
「おまえ、彼女のお母さんを知ってるのか?」
「ああ、俺が天国へ連れて行った。」
「だから、娘も連れていければ天国で合わせてあげれたかなって。」
「じゃ、前に迎えに来た時に僕が邪魔しなかったら彼女は、天国でお母さんに会えたのか?」
「そうだな、俺ならそれができたかもな。」
「ぼくのせいで、彼女は、・・・。」再びぼくは、泣き出した。
「ばか、お前のおかげで、彼女は、2カ月間本当に幸せな日々を過ごせたんだ。」
「この世に生まれてきた意味をお前が、彼女に与えたんだ。」
「だから、これ以上もう泣くな。」
そう言うと、死神は、ぼくの体を掴んで、マントの中に放り込んだ。
「行くぞ。それと、これからは、絶対に声を出すなよ。」
「声に出さなくても、お前の言いたいことは解るから。」
そう言うと、再び浮遊感が僕を包み込んだ。
しばらくして、マントから下をみると街の夜景がはるか下に見えていた。




