学校初日
あっという間に、一週間が過ぎた。
数学も何とか理解できるようになってきた。
「由奈、明日から学校にいくのよね。」
「そうですよ、姫様。」
「学校って、どんなところなの?」
「姫様が、明日から通われるところは、ここから、車で30分ぐらいのところです。」
「わたしも通っている高校なので心配ないですよ。」
「本当に。」
「大丈夫。それに、楽しいところですよ。」
「先生方も、きっと姫さまには、優しくしてくれます。」
「それならいいけど。」
「この間まで、猫だったから、大丈夫かなって。」
このころは、自分で、猫になったり人間になったり、ある程度自分で操作することができるようになった。
猫になるときは、死神の顔を思い浮かべ、人間にもどるときは、由奈に頭を撫でてもらっているときのことを思い出すと、簡単に戻れるようになった。
「姫様、今日はもう遅いので寝ましょう。」
「分かったわ。」言葉も、由奈に直された。
部屋が、二部屋しかないので、1つは死神が使って、こちらを由奈とふたりで使っている。
シングルベッドがやっと置けるスペースなので、眠るときは、ぼくは猫に変身したり由奈が狐に変身したりしていた。
時折、壁越しに顔を出す死神にふたりで襲い掛かったりしていた。
翌朝、早くに目が覚めたので、お風呂にお湯をはって、一人で入るようにした。
朝のひかりが、窓から差し込みよっても気持ちが良かった。
湯船にしばらく使っていると、お風呂の扉が開く音がした。
「姫様、ご一緒してもいいですか?」
由奈だった。
「ごめんなさい、起こしちゃった。」
「大丈夫です。起きる時間だったので。」
「朝ご飯の準備も出来たので、ご一緒させてください。」
それから、ふたりで湯船に浸かって、お互いの髪の毛を洗い合ったりした。
しばらくして、扉の外で、咳払いがしてきた。
「お嬢様たち、そろそろ上がらないと学校に遅刻しますよ。」
「姫様、わたくしが、お体をお拭きしましょう。」と言ってきたが、丁重にお断りした。
由奈と、ぼくは、慌ててお風呂から上がって、由奈が準備してくれた朝ご飯を食べた。
濃紺のジャケットに赤のネクタイそして、ちょっと短めのスカート。
「なんか、これ、恥ずかしくない?」
「大丈夫、姫様可愛いですよ。」
「え~、だって死神がこっち見て、鼻の下を伸ばしてる。」
「大丈夫ですよ。いつもあんな顔ですよ。」
「そうね。」
その時、玄関の前に車が止まる音がした。
「姫様、車が来ました。行きましょう。」
玄関の扉を開けると大きな黒塗りの車が止まっていた。
死神が、珍しいそうにその車を見ていた。
「あなたが、車の傍に立つと、霊柩車に見えるからやめて。」
「あっ、失礼しました。仕事がらこのような車を見ると、誰か無くなったのかと、痛い。」
由奈が、死神の頭をなぐっていた。
「さあ、姫様行きましょう。」
由奈が、その車に乗り込むと、
「明日からは、白色の車にして。」と運転手に言っていた。
「畏まりました。」と運転手が言うと、静かにその車は、動き出した。
5分もしない間に、周りの田んぼが無くなり、高い建物だらけの街並みになっていた。
そして、大きな校門の前で、その車は止まった。
「姫様、着きましたよ。」
この時まで、気付かなかったけど、助手席から、黒服の男性が降りてきて、無駄のない動きでドアを外から開けてくれた。
「ありがとう。」
「お気をつけて。」と死神の声が聞こえて来た。
『なんだ、死神が化けていたのか。』そう思うと何か、うれしくなってきた。
由奈に、そのことを話すと、
昨日、『執事に雇ってくれ!』って、死神に泣きつかれたとのことだった。
ホラー屋敷のバイトで本気になって、失神者が続出して辞めさせられたらしい。
「死神が、人間に首を切られたなんて、笑えない冗談よね。」
こうして、私の高校生活、1日目が滞りなく始まった。




