堕天使
目を覚ますと、ぼくは、メイドの膝に頭を乗せて優しくなでられていた。
「姫様、お目覚めですか?」
「もう少し、このままでいさせてください。」
ぼくは、いつもと様子が違うそのメイドに何も言わなかった。
その日の光で温まったメイド服の香りが気に入ったのもその理由の1つだが。
「姫様、本当は、私の屋敷にお連れしたかったのですが、死神が、それなら姫様の居場所は教えないって。」
「黙って、着いてくるなら、案内する、って。」
「わたし達は、いずれ姫様が現世に戻ってこられたときに苦労しないようにと、目立たないように財力を貯めることに専念しました。それと、どこに姫様が戻ってこられるかわからなかったので、世界中に私たちの情報網を持ってます。」
「ただ、死神は、この世界にとどまらず、あの世とこちらを行き来することで姫様を探そうとしたんです。」
「なぜなら、姫様を死なせたのは自分の所為だと思っているからなんです。」
「昔、天使だった彼は、地上の戦争をどうしても辞めさせたくて、一人の少女、そう姫様に、その戦争を止めるように告げたのです。」
「その後のあなた様の活躍は素晴らしいものでしたが、結局おなじ人間をあやたことを病んで、亡くなられた。」
「姫様が、無くなられたことで、戦争は終わりましたが、姫様が亡くなったことで、天使の彼は、自分を責めるようになったんです。」
「そして、堕天使つまり死神になったんです。」
「でも、どうしても姫様に、再度この世で普通の暮らしをさせてあげたいと、天国の中を探して、やっと見つけたのだけれだ、たかが死神の望みで、天国の法を破ることも出来ず、誰も見ていないときに、姫様を蹴飛ばして、この世に送り返すことに成功したんです。」
「そして、本来なら、姫様の飼い主の彼女と入れ替わるはずでした。」
「それが、どういう訳か、子猫に生まれ変わってしまったんです。」
「多分、姫様のやさしさが、彼女を救って、さらに自分が生きる道を無意識に選ばれたんだと思います。」
「そして、たまたま姫様を再び天国に連れて行くことで、今のような状況が生まれた、と言うことです。」
「だから、死神にも少しは、優しくしてあげてください。」
「そうなんだ。わかったわ。」
「でも、ぼくを蹴飛ばしたのは許さない。」
「今日、帰ってきたらお仕置きしてあげる。」
姫様が、起き上がると、空一面夕日で真っ赤に染まっていた。
そして、その雄大な光景は、今もまだ天国にいるような錯覚をぼくに起こさせた。




