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幻獣調査団事件簿~その依頼、マジでオレがやるの? 最強ナイトキラーと幻獣ジェンザーの件~されど胸の灯火は消えずに歩ませて  作者: ザイン=エル
第二章 ナイトキラーと地域交流会

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第八話 友人としては善人である

「あー、髪……髪の手入れか。困ったな。特に何もしていないんだが……」

 ノクトは首を傾け、口ごもる。


 すると、質問者の赤い服の少女は言った。

「じゃあ、とくにお手入れもしてないのにそんなに綺麗な髪なの?いいなぁ」


 それを聞いたノクトは、何かしら少女にとって役立つ情報がないかとしばし考える。


「ああ、そうだ」

 思案顔の後、はっとして言う。

「家に置いてある、あれは──誰かが置いていった女性用のヘアオイルのブランドの……なんだったかな。種類が色々あって、思い出せないな……あれを使うと確かに髪の調子がいい気がする」


「まてまてまてまて」

 トロントが、慌てて小声で止めに入る。

「小学生と教師相手にしていい話か?本当に大丈夫か?」


「大丈夫だ、問題ない……いちばんいいヘアオイルの話だぞ。問題あるわけないだろ」

 全く意味がわからないという風に言うノクト。


 トロントは周囲に聞こえないように静かにコソコソ話を続ける。

「つーかお前、養父のエイトと一緒に実家暮らしだろ。なんで家に女用のヘアオイルが沢山あるんだよ。絶対におかしいだろ」


「え……?おかしくはないだろ。実家以外にも生家があるんだ。皆、自分用のオイルとかシャンプーとか使いたいから置いときたいって……」


「皆って誰だ皆って!この話、今すぐ終わりにしろ!」


 トロントは囁くように叫びながら、拡声機を奪い取る。ノクトは話を強制終了されて不満そうだった──教師もこの話を聞いている。幻獣調査団員のモラルが終わってると思われるのは、絶対に避けなければならない。


 そうしながらトロントは、こいつ一回女に関してはガチで説教したほうがいいかもしれない、と真面目に思っていた。


 ノクトはしぶとくトロントから拡声機を取り返した。そして早口に、

「えーとつまり──完全に髪を乾かす前にヘアオイルを一滴だけ手のひらに広げて、それを髪に塗布してから乾かす。そうすると朝にはまとまりが良くなってると思う。よければお母さんにオイルを買ってもらうなりして、活用してくれ。以上だ」

 と、赤い服の少女に伝えた。


 少女は満面の笑顔でうなずいた。

 とりあえず、少女の悩みの助けになるような情報が伝わって、ノクトは安堵して、笑顔を見せた。


 トロントは対照的に凄まじく渋い顔をしていた。

 なんだそのキラキラした笑顔は。オレは、お前と幻獣調査団の社会的信用を守ってやったんだぞ。


 噂には聞いていたノクトの自堕落生活の一端と、この根っからの善人ぶりの落差に、頭が猛烈に痛くなった。


 ……こいつ、どうしたらいいんだろう。なんというか、友人として。


 そうこうしている内に、また質問をしたい小学生たちの「はいはーい」という元気な声がたくさん聞こえた。


 ノクトはトロントの気など知らず、次の質問者を指し示す。

「それじゃあ、後ろのほうにいる、眼鏡の少年」


 さされて、緊張する面持ちで、黒髪の眼鏡の少年は立ち上がった。知的な顔立ちが印象深い。


「あの、幻獣調査団の一部の、すごく強い《ナイトキラー》は、機械のスコーピオンといっしょに行動してるって聞きました。ノクトさんは、スコーピオンと一緒にいるって聞いたんですが……」


 それを聞いて、トロントは「ほう」と感嘆する。そして思った──この子、幻獣調査団マニアだな、と。

 一部界隈で、幻獣調査団クライメシスには、熱烈なファンがいることをトロントは知っていた。


「良く知っているな」

 ノクトはそう言って、首を少し傾ける。すると、その首筋から黒いサソリが這い出してきた。


 一瞬イベント会場はざわつくが、ノクトがすぐに制した。

「このサソリは、オレの相棒、ナイトスコーピオンの『アイリーン』という。機械のサソリで、毒はない」


 機械で毒はない、と聞いて、会場の人々が一斉に安堵する。


 アイリーンはノクトの肩に落ち着くと、会場の皆にぺこりとその頭を下げた。そのかわいい仕草に会場は湧いた。

 ノクトの胸に、不用意に、とてつもなく誇らしい気持ちが湧いた。


「何だったら、このノクトよりもアイリーンのほうがはるかに常識があってまともだ」

 どうしても一言いいたくて、トロントは彼の拡声機に向けて喋った。


「お前、余計なことを言うな」

 ノクトのその声はモロに拡声機に入っていて、会場の笑いを誘った。

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― 新着の感想 ―
ノクトはとんだプレーボーイなのですね。子供たちの教育にはよろしくないというのが、トロント氏の常識人ぶりからよく伝わってきました。子供たちは帰宅してから、親御さんの前で大丈夫だったかな?今回もとても面白…
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