↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻獣調査団事件簿~その依頼、マジでオレがやるの? 最強ナイトキラーと幻獣ジェンザーの件~  作者: ザイン=エル
第三章 理性を喰らう美酒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/19

第十三話 振り回されながらも、君を知りたい

 三人は息を切らしながら、王都の外れの河原まで来ていた。


「あー、なんか普段より、疲れた……」

 酔っ払っているノクトは、河原の斜面に生えた柔らかい草の上でがっくりと膝を折り、そのまま倒れるように横になった。そして、次の瞬間にはもう寝ていた。

 ナイトスコーピオンのアイリーンが、彼を守るようにその胸に乗った。


「さすがに、ここまでは追ってこないだろう……」

 トロントも、荒い呼吸を整えながら、その隣に座り込んだ。


 大きく遅れて、息も絶え絶えなフィーネが淡いグリーンの髪を乱しながらゆっくりとやってくる。

「二人とも……足が、早すぎますよぉぉ……」

 そしてトロントの隣にバタンと倒れ込む。


「まあ、とりあえず逃げ切って何よりだ」

 トロントはニヤッと笑った。


 自分たちが元来たあたりが、遠くのほうで騒ぎになっているのが、この河原からも察することができた。


「だいぶ騒いでんな。こりゃあ、当分は戻れねぇな……下手したらここで一泊だ」

「ええええ」

 フィーネは絶望的な声を出した。

「私、明日も仕事なのに……」

「安心しろ。ここにいる全員がそうだ」


 トロントは、もう割り切ってこの非日常を楽しむことにしたようだ。

 寝ているノクトの隣に寝転がった。


「言うて、さすがに夜も更けたら追跡隊も散るだろうから、夜半には一旦戻ってみよう」

「は〜い……私たち、全然悪いことしてないのにぃ……」


 フィーネは、がっくりと肩を落としつつ、ノクトのほうを見る。

「ノクト先輩、寝ちゃったんですか?」


 トロントは肩をすくめて言った。

「ここに到着した瞬間、爆睡したよ。こいつ旅先だと恐ろしく眠りが浅いんだが、今日は酒がキマってるから多分起きないな」


「健やかですね……すごく」

 ノクトの穏やかな寝顔を見て、フィーネはあまりの非日常を感じて不思議な気持ちになった。


 彼女は思っていた。

 あの新人研修の時に一緒に来てくれたノクト先輩──何度も命を救われた。


 研修のときは、冷たい風貌の中にある数多くの優しさに触れ、心を惹かれた。


 しかし今は、あれほど大人びて強いのに年下と知り、酒の影響もおおいにあったが更に多くの側面を知り──


 もっと強く、彼に惹かれている自分がいることに気づいた。


 そして思う。

 このナチュラル罪作り男め、と。


「あー、フィーネ、こいつはやめとけ」

 トロントは何かを察して言う。

 フィーネは「えっ」と声を上げる。

「幸せにはならんぞ」


「ちちちちちがうんです!私が幸せになりたいとかじゃなくて」


 彼女はトロントの言葉に、大きく首を横に振った。

「尊敬してるんです。あと……目が離せないっていうか、ものすごく気になるっていうか……」


 それを聞いて、トロントはふっと息をついたように笑う。

「まあ、そりゃ、わかるよ。目が離せないのは、オレも同じだ」


 我ながら振り回されているな、とトロントは思う。しかし別段、悪い気分ではないから困る。


 言いながら、半身を起こして、トロントはノクトの寝顔を見る。

 気づいて、トロントはできる限り気配を殺して驚いた──眠るノクトの目から涙が伝っていた。

 そのとき、小さな寝言が、トロントの耳だけに聞こえた。


 トロントは、胸に小さな棘が刺さったような痛みを感じた。

 そして、彼の小さな言葉と弱さを、心の中にしまいこんだ。


 何にしろしばらく起きないだろうと思い、自分の長いコートを脱いで、彼にかけてやった。


 トロントはなんとなくそのままにしておけず、フィーネに察されないよう、そっと涙をぬぐってやった。


 ぽつんと、隣にいたフィーネが独り言のように言う。

「いつか、私も……トロントさんみたいに、ノクト先輩に頼ってもらえるような人になりたいなあ」


 するとトロントは、不敵に笑った。

「それなら、幻獣調査団の仕事が向いてないだとか、言ってられねえな」


「ほんと、そうです……」

 反論もできず、フィーネはがっくりと肩を落とした。

「でもでも、今日はいっぱい元気をもらったんです。だから多分、明日からは、大丈夫!」


 この新人クレリックにとっては、今日の出来事は良い方向に転んだようだ──トロントは安堵した。


「なら、今日のこの河原の──星降るような夜空のこと、忘れんなよ」


 トロントは、この高々と広がる美しい夜の空を、目を細めながら眺める。

「またなんか挫折しそうになったとき、夜空を見上げるんだ。そして、今日のことを思い出せ」


 その言葉は、フィーネの胸に、強く響いた。


「はいっ!つらいとき、この夜空を思い出します。そして立派な、幻獣調査団の僧侶、《クレリック》になります!きっと!」



──第三章 理性を喰らう美酒・完


第四章へ続く

【第三章あとがき】

 『第三章 理性を喰らう美酒』をご覧いただきありがとうございます!

 ノクトは素晴らしい戦闘技術を持つ幻獣調査団の精鋭ですが、偏った考え持ち自分に厳しく、常に気を張っていて、強くなければいけないと思いが非常に強い人物です。

 酒を飲んで強い理性が減退したらどうなるかを書いた結果、こうなりました。少しでも面白いと思っていただければ幸いです。


 本作は【火・木・金・土】の基本週4、夕方更新の連載予定となっております。

 もし面白かったらフォローや♡、☆評価いただけますと、今後のモチベになりますので是非是非おねがいいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまで読んでいる限り、確かにノクトはあまり結婚相手としては、有望株ではありませんね。ワンナイトでしょうね。なんというか。そういう男のほうが燃えるチャレンジャーがいるから、物語は盛り上がるわけですが。…
寝言……。 一体どんな寝言を言ったのかが気になります……。 三章も楽しく読ませて頂きました! そして、読んでいてなんだかお酒が飲みたくなってしまいました! ザイン=エル様の作品、読んでいて楽し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。