4「乾杯」
めでたくフィオとパーティーを組むことになり、俺たちはスライム討伐の報告も兼ねてギルドへと向かっていた。途中で素材屋によって、スライムの核も売却する。
スライムの核とやらは本当にレアアイテムだったらしく、金貨三枚と銀貨四枚で売れた。
昨日泊まった宿はちょうど一泊が銀貨一枚だったので、一か月くらいなら生きていけるくらいには稼げたということだ。ちなみに銅貨銀貨金貨とこの世界(というよりこの国)の貨幣は三種類らしい。銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚の価値だ。覚えやすくて良いね。
「いきなりお金持ちかよ」
「ええ、だけどこれにかまけていたらすぐに無くなるわよ」
目が$マークになっている俺に、そうフィオは諭す。
確かに、これで満足していたら入用になった時に困るし、その日暮らしと行くわけにもいかない。
蓄えは作っておかないとな。
ちなみに、金銭の管理について。
「私が持っていたらまたすぐに失くすかもしれないからクオンが持っていてほしい」
とのことで、俺が管理することになった。
さて、そんなやり取りをしているとギルドに到着だ。
「スライム討伐お疲れさまでした」
今度は髪の長い声が低めのお姉さん受付嬢だ。でっけえな。
「ぐふん!」
フィオのあまりにも大きな咳払いで我に返りつつ、戦果を報告する。
とはいっても、冒険者カードを例の石板にかざすだけで報告は終わるみたいだ。
「スライムが五体に......巨大スライムが一体!?」
あのキングなスライムも俺の討伐戦功に入っていた。
フィオが言うにはアレはCランク相当の魔物らしいので、Fランクの新人冒険者が倒したとなれば驚くのも無理はない。
「まあ、偶然です」
「そうですよね、偶然ですよね」
とのことで、ランクが上がるわけでもなく、それなりの成果として処理された。
「あと俺達パーティーを組もうと思ってます」
「パーティ結成ですね、おめでとうございます。ではお二人のカードをこちらへ」
二人で石板にカードをかざす。結構簡単だな、この世界の手続きは。
「はい、完了しました。パーティー名はもうお決まりですか?」
「パーティー名か、クオンどうするの?」
「何も決めていなかったな」
「後日決めることも可能ですので、暫定的にリーダーだけ今決めていただければ大丈夫ですよ」
「じゃあクオンがリーダーで」
おい、やるとは言ってないぞ。
「かしこまりました。では暫定的にクオンさんのパーティーということで処理させていただきます」
まあいいか。
「では今回の討伐依頼もパーティーとしての受注に変更しておきました。こちらが報酬となります」
出てきたのは銅貨が六枚、少ないな。
ボロ宿に一晩泊まれるかどうかって所か。最低ランクの依頼だし当然と言えば当然か。
「では今後もご活躍をお祈りいたします」
最後に就活失敗のような挨拶を受け、俺たちは受付を後にした。
「おなかが空いたな、ここで何か食べましょ」
ということなのでギルドに併設の酒場で食事をとることにした。
お昼を食べていないので腹ペコだ。
「じゃあ初めての依頼達成と、俺とフィオのパーティー結成に乾杯」
「かんぱーい!」
この世界は18から飲酒が可能とのことで、俺も強くないやつを飲んでみることにした。
うん、苦くておいしくないな。フィオは結構がぶがぶと飲んでいるが。
でもこれで俺も大人の仲間入りだぜ。
「いや、飲みすぎじゃない?」
「これくらい普通だと思うけど?」
もうフィオのジョッキは空になっていた。こいつ、飲兵衛か。
「おかわり!」
俺も負けじと飲み干す。うん、まずい。
「そういえば、クオンはこの辺の事情とかに疎いけど、どこから来たの?」
「遠い所、かな」
「馬でどれくらい?」
距離の問題じゃないんだよな。
「馬じゃ無理」
「じゃあ船?」
「船でも無理だな」
「じゃあそもそもこの国の人間じゃないんだね」
ちょっとまずいか。戦時中の国だったりしたら敵国のスパイと疑われてもおかしくない。
でもまあ、正直に言うしかないか。
「信じてもらえるか分からないけど、俺は別の世界から来た。国とかそういうのじゃなくて、世界が違うんだ」
「ああ、『転生者』ってやつ」
俺は目を丸くした。異世界転生を知っているのか。
まあ、他に死んでしまった奴なんかも女神だ何だかんだに導かれて異世界に来ていてもおかしくない。転移できる世界はアメーバ含め多岐に渡るようだからな。
「そういう奴、俺以外にもいたりするのか?」
「あまりいないと思うわよ。私も実物を見るのは初めてだし」
そこまで転生者が蔓延っているわけでもないのか。
「転生者は必ず凄い特技や能力を持っていると言われているけど、クオンはそうでもないみたいね」
「余計なお世話じゃい」
あのアルバイト女神が俺にチートを寄越してくれなかったからな。
俺は二杯目の酒をちょびちょびと飲む。
「がっかりしたか?」
「何が?」
「そういう凄い転生者じゃなくてさ、普通の男が来て」
「クオンは全然普通じゃないわよ」
「どこが?」
「どこかしらね。やっぱり普通かも」
「なんだよ」
見るとフィオは何やらニヤニヤとしていた。
顔も赤い。もしかして酔っているのか。
俺も何だかぽわぽわしてきたような感じがする。これが酔っているという事だろうか。
フィオはいつの間にか四杯ほどジョッキを空にしている。
「大体ね、がっかりされるのは私の方よ。これからも迷惑をかけることになると思うし」
「そこはもう承知済みだよ」
「これからもよろしくね」
「おう」
お互い空になったジョッキをカチンと鳴らし乾杯する。
酔っぱらうと少し眠くなってきたな。潰れないようにしないと。
そんなことを考えているところで、俺の記憶は曖昧になっていった。
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ちゅんちゅんと小鳥のさえずりが聞こえる。
少し頭が重い。これが二日酔いってやつか。
昨日と同じ宿だな。ギルドから無事戻って来たらしい。
「あー、いてぇ」
顔を洗いに行く。
水は冷たく、意識がはっきりと覚醒していく。
「フィオー、朝だぞ」
ベッドに戻り声をかける。
しかし、俺は目を疑った。
「んー」
フィオは上下とも真っ赤な下着姿だった。
目をこすりながらフィオが体を起こす。
「んー、ん?」
あ、気づいた。フィオは自分の姿を見て、次に俺の顔を見る。
そういえば俺も下着に上裸姿だ。
いや、そんな事あるはずがない。
俺のハヂメテがここで散っているなど、あるはずもない。
「......」
フィオは茫然として、そしてやがて顔を真っ赤にして。
「ぎゃああああああ!!」
気づけば目の前に花瓶が迫っていた。




