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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重のブログ


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105 / はじめてのお散歩


ワクチン接種も完了して、いよいよアンコの散歩デビューの日がやってきた。

といっても何のことかピンとこない人は、きっと犬を飼ったことがない人なのだろう。

私もはじめはそうだった。


私の場合は、幼い頃からペットは禁止で、成人してからは働きはじめて忙しく、結婚して家に入ってからは育児にてんてこまいで、とてもそんな余裕なんて無かった。


しかし、子供が独立して数年が経った頃、家で暇を持て余していた私に夫が言ったのだ。

「犬でも飼ってみないか」

と。

最初はためらった。

この年になって新しいことを始める、ましてや命を預かるという大変な作業など。

しかし、私の運動不足を心配した夫は、なかば強引に生まれたばかりの一匹の黒柴を友人宅からもらい受けることを決定した。


夫の持ち帰った子犬の画像を見た私は、そのかわいらしさに一目で沼に落ちた。

しかし、犬を飼うからには、「かわいい」だけではいけない。

責任感を持って最後まで面倒を見る覚悟と、ちゃんとした知識が必要だった。

私は柴犬に関する知識を求めて、ネットで専門サイトをはしごしたり、書店で本を買い求めたりした。

子犬は生後数か月かけて、狂犬病対策などの免疫をつけるためにワクチンを数回打つことが義務付けられているということを、私ははじめて知った。


そうして、アンコが我が家へやってきた。

アンコはすぐに私たち夫婦になつき、甘え、よく吠え、ものすごい勢いで動き回った。

そんななかで、私は幼いアンコを連れて、動物病院へと通った。

多くのペットと同様に、アンコは動物病院が大嫌いになったが、ともあれ、すべてのワクチン接種を終え、今日、めでたくお散歩デビューとなった。


リードをつけ、ほとんど初めて足を降ろすアスファルトを、アンコはどのように感じているのだろうか。

私はいつでも抱っこできるように、両手をアンコの上に構えながら、ハラハラしながら見守った。

するとアンコは、私の心配など意にも介さない様子で、地面の上をとことこと歩き始めたかと思うと、キャンキャン嬉しそうに鳴きだした。

それが、私とアンコのお散歩デビューだった。


数年が経ち、今、アンコは成犬となり、堂々とした足取りで私をリードして歩く。

死ぬまで一緒にいるからね、よろしくね、と語り掛けながら、今日も私はアンコのあとについて歩いてゆく。

春のあたたかな日差しの中で、アンコの尻尾が元気いっぱいに揺れている。


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