104 / ブラックプリンス
真理の機嫌が悪い。
こんな時は、強引にキスを奪ったあとで激しいセックスをするに限る。
セックスの後、いつも真理は泣いている。
「あたしの気持ち、分かる?」などと聞いてくる。
めんどくさいので、そろそろ別れ時かとも思うが、真理の見た目はかわいいし、セックスも悪くはない。
そういうわけで、ずるずるキープしてもう一年になる。
が、マジでそろそろ切ってもいいかなと思っている。
真理の部屋を出て、ぷらぷらファミレスで朝食をとる。
最近、野菜を食ってねぇ。
体の中がギトギトしてドロドロになった感覚を覚える。
店を出て、コンビニに寄って栄養ドリンクを一気飲み。
連日続く二日酔いに、もはやその効能は全然役目を果たさない。
スマホをいじって片っ端からかけてみるが、先輩も卓也もヨージも啓介も淳もあっくんも美咲も綾も加奈子もつかまらない。
空は快晴。
太陽がさんさんときらめいて、桜の見ごろを過ぎた四月の町をありありと照らしている。
その明るさに気圧されて、俺はよろめきながらビルの日陰に入る。
ひんやりと冷たい春の日陰に包まれて、俺の頭痛は幾分か和らぐ。
そういえば、家に帰った時に不在届がポストに入ってたっけ。
発送元を見ると、十年は顔を見せていない実家からだった。
また野菜やら手作り料理やら、余計なものを送ってきたのだろう。
そういう、家族だの絆だのいう、田舎者のダサい感覚には唾を吐きたくなる。
さて、今夜は出勤だ。
俺を目当てに沢山の女が来店するだろう。
そんな彼女たちに、俺は今夜も「ブラックプリンス・古紫」という名詞を配る。
毎晩浴びるように飲む酒で体はとうに限界を迎えているが、弱音を吐いている場合でもなく、悠長に病院に通っている場合でもない。
俺は夜の帝王。
それくらいに自分を鼓舞して、稼いで稼いで稼ぎまくる。
使って使って使いまくる。
「この先に何が待っているのかは分からないが、ああ、神様どうか、俺を見捨てないで」
最近はよくそんな歌を聞いている。




