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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重(ももじやえ)


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143 / 痛みとアンコ


背中が痛む。


肩甲骨と肩甲骨の間、背骨の上の広範囲にわたって、痛む。

40代の時からだから、かれこれ20年のつきあいになる。


40代は、それまでがむしゃらに駆け抜けてきた10代、20代、30代とは違って、一気に体にガタがくる。

職場の先輩に聞いてはいたものの、果たして、まさに自分がその歳になり、まさか本当に体のあちこちが痛くなるとは思わなかった。


最初は、筋肉痛かと思った。

しかし筋肉痛は数日から数週間で治るが、私の痛みは治らなかった。

まさかそれが20年も続くなんて、誰も思わない。

私は加齢を甘くみていたとしか、言いようがない。

くそ。


それに、60代になり、急激に歯も悪くなってきた。

「悪くなってきた」と言うよりは、抜けてきた。

物理的に。

歯医者に行くと、「加齢ですね」のひとことで済まされた。

以来、外に出るときは入れ歯をして出かけるようになってしまった。

入れ歯なんて、もっと高齢の人がつけるものだと思っていた私は、少なからずショックを受けた。


50歳前後で閉経を迎え、女性ホルモンも男性ホルモンも急激に低下し、主に精神面で苦労したが、独り身だった私は誰にも相談せずに終えた。

近くに相談する人があれば、やれ病院に行けだの、やれどこどこの漢方がいいだのと話に花が咲いたろうが、残念ながらそういうことを話せる友達は皆無であったため、私はこういうものかといった具合に更年期を終えたのだった。

大騒ぎすることがなかったので、それ自体は、わりと幸運だったように思っている。


なんの話だ。


そうだ、痛みについての話だった。


そんなわけで、40代から現在に至るまで、さまざまな痛みとつきあってきたのだけれど、人生で一番痛かったことは、30代の時に飼っていたペットを亡くしたことだった。

若く、そのぶん感性もみずみずしかった私は、非常に傷つき、激しく混乱し、おおいに泣いた。

時間薬とはよく言ったもので、今となってはいい思い出となってしまっているが、当時は本当につらかった。


再びペットを飼うことなくこの歳まできたが、体の痛みを感じるたびに、

ああ、わたし、まだ生きてるよ、アンコ。

と、語りかけずにはおれない。


いつかそちらに行くまでは、きっとたくましく生ききってみせますからね、といつも付け加えて今日も米を炊いている。







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