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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重(ももじやえ)


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142 / みちみちて笑み


「あたし、あんたのママじゃないから」


という捨て台詞ならぬ、捨てメッセージをラインに残して、美羽は去っていった。

半年前のことである。


小学4年生の沙也加はそんな俺を、「ふられてやんの」という言葉で一蹴した。

誰に似たのだ。

飼い犬のマメタだけが俺の味方だ。


しかし、なんだというのだ。


毎日毎日、家事もすべてこなして、娘の弁当まで作って、マメタの散歩も出来るだけして、仕事も休まず励んでいる俺だ。

誰かに甘えたっていいじゃないか。

娘が成人するまで、家族の面倒を見てくれる優しい女性を求めたって、罰は当たらないだろうに。


俺が何をしたと言うのだ。

くそ。


それに、正直なところ、俺だって誰かに甘えたい。

あたたかな体温を感じながら眠りにつきたい夜がある。

これから寒くなっていく季節、そんな夜も確実に増えてゆく。


くそ。

どこかにいい女性はいないものか。


というわけで、たまらず既婚の女友達に相談したら、以下のような言葉が返ってきた。

「衣食住と性生活の世話をする代わりに養ってもらえるならオーケーを出す女性もいるんじゃないの。知らないけど」

ずいぶんとドライな回答だが、実際のところ、女性側の頭の中で、そのようなソロバンがはじかれているのだと知り、反射的に拒絶反応が起こった。


違うのだ。

俺が求めているのは、お互いに支え合え、癒し合える、魂のパートナーなのだ。


そう力説してみると、

「でも、求めてるのは家事・育児・性生活の相手でしょ。実際。いいんじゃないの?イマドキ主婦になりたい女性は沢山いるし」

と思いやりのかけらもない言葉が返ってくる。


違うのだ。

俺が求めているのは、互いを唯一のパートナーと認め合える――。


なんだか空しくなってきた。


そんな疲れきった俺の顔を見て、「パパ、疲れてるね」と沙也加が言う。

そうなんだよ、パパ、疲れてるんだよ。

だから、神様、どうか俺に素敵な女性を。

マメタが餌をねだりにやって来た。

俺はマメタの皿を取り出して、ふと、マメタも独身だな、と思い至る。

というか、マメタ、去勢してるな。


なんだか、男と一匹、そして娘が一人の空間に、人知れぬ滑稽味が満ちているような気がして、俺はひとり苦笑いを漏らした。








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