141 / 結婚するのかしないのか
若い世代の、約35%以上が、将来、結婚したくないのだという。
お昼、テレビをつけていると、そんなニュースが飛び込んできた。
「やっと時代が俺に追いついたか」
と、独身を貫いている兄のタケルが笑いながら言う。
「おじちゃん、どういう意味?」
娘のマナがタケルに詰め寄る。
「みんな、自分だけの自由な時間が欲しいってことだよ、本音ではね」
と、タケル。
「結婚すると、自由な時間がなくなるの?お母さん、ほんと?」
と、今度は私に視線を投げかけ尋ねるマナ。
私は少々戸惑いながらも、
「そりゃあそうよ。今時の親は、特に母親は、仕事に家事に子育てで超忙しいんだから」
と説明した。
「お母さん、子供、産んで後悔してない?」
マナが私をじっとみつめて、聞く。
「後悔なんてするわけないじゃない。私、ずっと子供が欲しかったんだもの」
私は笑顔で答えた。
すると、マナは一呼吸置いて、次のようにつぶやいた。
「ふうん、子供が欲しかったんだ。それって別に私じゃなくてもよかったんじゃないの」
と。
しまった、と思った。
娘も中学生になり、いろいろと繊細で敏感になってきているのを忘れていた。
笑う。
「そう思いたいなら、そう思っておきなさい」
そんな娘をいちいち気遣うのも馬鹿らしいので、私はつっけんどんにそのように返しておいた。
私だって、中学生のころはそれなりに繊細で敏感だった。
でも同じように、母親は鈍感で、ぶっきらぼうで、およそ少女の心を理解し得ない人だった。
自分の母親が「ああ」だったからこそ、私はここまでたくましく育ったのだ。
だから私も娘を甘やかさないと決めている。
「結婚して、後悔してない?」
マナは立て続けに聞いてきた。
「しつこいよ。結婚したら出産して、子育てして、後悔なんてする暇なんてないわよ実際」
と私。
娘は、「うん……」と、どこか腑に落ちない様子である。
日本という国のことを考えれば、結婚し、出産するカップルが多いにこしたことはないのだろうが。
そんな政治的な施策は将来の清き一票と政治家に任せるとして。
「まぁ、後悔のないように生きることだな」
と、娘をおもんぱかって親身に語り掛けるタケルを、どこか無責任だと感じながら、私はお昼ご飯の支度をするのだった。




