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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重(ももじやえ)


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135 / ホーム


孫にこっそりお小遣いをあげていることが、その母親である嫁の里香にばれたようである。

というのも、夕食の席で、息子の圭太に「母さん、翔馬に小遣いやるのはやめてくれないか」と言われたからだった。

おおかた、里香が圭太に告げ口したのだろう。


かわいくない、嫁。

言いたいことがあるなら、私に直接言えばいいのに。

私だって、鬼ではないのだから、ちゃんと言ってくれれば返事だってするのに。

まぁ、そうは言っても、孫に小遣いをやるのを辞めるつもりはないのだが。


この歳になって思うのは、人間、いつまでも健康ではいられない、ということだ。

私の場合は、50歳を過ぎたあたりから身体の節々が痛み始め、今では24時間痛みと闘っている。

特別、病気ということではないのだが、とにかく関節が痛かったり、ちょっとしたことで筋肉痛になったりするのだ。

自分がこんなふうになるとは、思いもよらなかった。


胃腸の調子だって、若い頃と同じというわけにはいかない。

トンカツや焼き肉といった油っこいものは食べられなくなったし、なんなら寿司や刺身も厳しいくらいだ。

ごはんと味噌汁、それに漬物が少しあれば十分で、それでは栄養が偏ってしまうから、仕方なくサプリメントを摂取している。


年金生活となり、夫に先立たれた後は好きにさせてもらっているけれど、ごくたまにとてつもない寂しさにおそわれる。

友達とお茶をしているとき、習い事のお花をしているとき、夕飯の席で――。

なんてことはない瞬間に、ふいに寂しさが訪れるのだ。


先日だって、里香に「お義母さん、夕飯はもう食べたでしょう」と言われて、とてつもない寂しさに襲われた。

世の中が、私を置いて猛スピードで遠ざかってゆくような、そんな気が、した。


みんな、待って。

そう叫びたくなる。


けれど幸いにも、私の脳は、そんな寂しさをも忘れてしまうほどに鈍くなっているようあだ。


今夜は、圭太から「話がある。夕食の席で」と言われている。

私にも、ついに老人ホームへ入るときがやってきたのかもしれない。

この家で邪魔者として扱われるよりかは、老人ホームの方がましだろうか。

それとも、老人ホームに入って、寂しさでたまらなくなるだろうか。

ぼんやりとした頭で、かんがえる。

里香にご飯を運んでもらいながら。








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