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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重(ももじやえ)


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134 / ひとにぎりの


「ねぇ、おかずなに?おかずなに?」

まとわりつくこどもたちを、腰を振り肩をいからすことでいなしながら、今日も俺は子どもたちの明日の弁当を作る。


そう書くと、俺がいかにもイクメンみたいだが、種をあかせば、飲食店経営をしているため食材が余っており、その残りを弁当にまわしているだけなのである。

しかし自慢ではないが、俺の腕は一流なので、必然的に、子供たちの弁当も一流の味がする一流の弁当にならざるを得ない、というわけだ。


俺は元々幼い頃から料理が好きで、それが高じて地元の調理師の専門学校に入った。

専門学校に入って分かったのは、「料理が好き」だけではいけない、ということだった。

まず何より技を身に着けるべく、毎日の地道な努力が欠かせないのであるが、これがたいそう難しい。

毎日毎日包丁を握っていると、今日くらい休んでもいいや、という気持ちになってくる。

そんな日が幾日か続くと、いざ再び包丁を握った時に、調理する感覚がいくらか失われているのである。

それを取り戻すのに数日かかり、そんな日々が積み重なれば、その分だけ確実に技術は身につかない。

持続力がいかに大事か、毎日続けることに耐える精神力と、辛いと思うことに耐える忍耐力がいかに大事かということを、俺は専門学校時代に嫌と言うほど学んだ。

専門学校を卒業した俺は、地元の料亭で働き始めた。

最初は洗い物ばかりで包丁を握らせてはもらえなかったが、そんな中でも自宅で包丁を握り先輩たちから技を盗み訓練を続けた。

数年たち、カウンターに立たせてもらえることとなった。

客の見ている前で包丁をふるうことに最初は緊張しっぱなしだったがそれもすぐに慣れて、さらに数年経つ頃には軽くパフォーマンスのおしゃべりも出来るようになっていた。

妻の恵美とは、そんななか、出会った。


40歳を過ぎた頃に独立して、自分の店を持った。

企画・宣伝・仕入れ・仕込み・調理・会計・ほぼすべてを、妻と二人でこなした。


今日も店をしまいながら、店の冷蔵庫に入っている食材に思いを巡らす。

今夜は子どもたちの弁当に何を作ってやろうか。

いつものようにクーラーボックスに食材を入れて家に帰ると、妻の「おかえり」の声。

それが合図となり、子供たちがぽろぽろと子供部屋から顔を出す。

「今日のお弁当は何?」

その言葉に、俺は自然と顔いっぱい笑顔になり、「ただいま」と言って両手を広げるのである。







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