132 / 100点を目指して
俺は現役のころには年収700万円を稼いでいた。
詳しいことは書けないが、なかなか代わりのきかない職なだけに、責任も重く、毎日のストレスは半端なものではなかった。
しかし、その分、やりがいも半端なく、俺は日々、身を粉にして働いていた。
俺は学生の頃から勉強が好きであった。
新しい知識を取り込むたびに、自分がひとまわり大きくなるような気分がして、加えて学校での成績も上がるものだから、まわりの生徒に「すごいなぁ三笠君は」などと言われて、鼻高々だった。
俺にもそれなりに反抗期はあったが、医者をしており、毎晩夜遅くまで働いて帰ってくる父の姿を見ると、俺もひとかどの男になるのだという気概が湧いてきて、とても反抗する気にはなれなかった。
母はそんな父を支えるべく、家庭をしっかりと守る女であった。
今、定年を迎え、自分の歩みを振り返る。
仕事に関しては全力を尽くした。
これは言うまでもない。
だからほとんど、後悔などはしていない。
大満足だ。
しかし、二人の子供のうち、一人はぐれて家を出てしまい、もう一人は普通の会社の社員におさまった。
総じて、俺の子は出来が悪く、そんな子供たちのことで、妻の由美子を責めた時もあった。
しかし、時計の針は巻き戻りはしない。
ほとんど家に顔を出さない子供たちのことだけは、どうにかならんものかと思っているが、この歳になるとそれもまぁ仕方なしと思えてくる。
残りの人生は、予定していた通り、不動産投資や趣味の盆栽をして過ごそうと思っている。
「あなた、スイカ、切りましたよ」
由美子が呼んでいる。
俺が仕事で家を留守にしている間、由美子はしっかりと家を守ってくれた。
まぁ、そういう女を妻にしたのだが。
しかし、いかんせん、育児の才能は無かったようだ。
それだけが悔やまれる。
しかし、いつまでもぐちぐち言うのも男らしくないので、今となっては子供たちのことはおくびにも出さず、ただ夫婦のやりとりをこなしている。
順調にいけば、俺が先に旅立つのだが、その前に妻には介護をしてもらわねばならないし、今の内から手なづけておく必要もある。
「ああ、今行く」
俺の人生は、最後まで、俺のものだ。
人生を100点で終えるべく、俺は今日も頭をはたらかせている。




