130 / めちゃくちゃに愛して
俺が女を嫌いになったのはいつ頃からだろうか。
幼い頃は、そんなでもなかった。
うちは両親ともに仲が良く、特に俺を甘やかしてくれた母親に、俺は普通に甘えて育った。
中学生になる頃には反抗期から、両親、特に何かと構おうとする母親を邪険に扱ったりもしたが、高校生になり、受験生にもなると、両親、特に母親のありがたさが身に染みて分かり感謝したものである。
おれは順調に大学生になった。
新入生歓迎会に顔を出した流れで普通にテニスサークルにおさまったし、本業の単位も一つも落とさなかった。
俺は順調に大学三年生になった。
この頃、俺には好きな女子がいた。
同じテニスサークルの一個下の美紀ちゃんというかわいい女の子だった。
俺は途端に自分の容姿が気になり始め、スマホで日夜、ファッションや基礎化粧品のサイトを読み込むようになった。
しかし、調べれば調べるほど、鏡を見れば見るほど、自分が俳優やモデルの整った顔とはかけ離れている容姿の持ち主であるということを悟るばかりで、気分はどんどん沈んでいった。
結局、美紀ちゃんは、同学年のイケメンとつきあいだした。
二人が結婚したと聞いたのは、社会人になって3年目のことだった。
その頃、俺は仕事のストレスで円形脱毛症にかかっていた。
自分ではそんなに繊細な方だとは思っていなかったので、親に相談し、腕の良いと言われる医者にもかかったが、時間薬だと言われて返された。
頭に十円禿げを作ったまま俺は毎日、出社した。
会う人、会う人が、俺の頭を気にしているようで、いたたまれなかったが、次第に開き直るようになり、その頃から、俺は急激に太りだした。
「伊藤君って、痩せたらかっこいいのにね」
そんなことを、明るいだけが取り柄のブスの女性管理職に言われたのが引き金になったのかもしれない。
俺は、この頃はやりだした「弱者男性」というラベルに飛びついた。
そう、俺は、誰がどう見ても弱者男性なのだ、と自分を形容するようになり、幾分か気がまぎれるようになった。
そうして、世の中で弱者男性たちが男女平等という名の女性優遇に声を上げるようになったのが今のトレンドだ。
あるサイトでは、「男性社会での不遇を男性社会そのものにぶつけずに、さらに弱いとされる女性にぶつけている」という指摘もあったが、当たっているのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
ああ、誰か、俺をめちゃくちゃに愛して。




