129 / 子どもの鳴き声
何歳くらいだろう、小さい子がさっきから奇声をあげながら店内を走り回っている。
親は何をしてるんだろう。
最近の親は満足にしつけも出来ないと言う。
なんでもかんでも甘やかして、子供を十分に叱れないと言う。
本当なのだろうか。
大体、もうこんな時間なのだから、子供を寝かしつけるべきではないのか。
夜8時、おなかがすいたのでコンビニに出向いたところ、偶然にもそのような光景を目にして、エアコンのガンガンにかかった店内で、私は静かにイラついていた。
それが20代の頃のこと。
今、私は専業主婦をしている。
息子のハルトは今年の誕生日で4歳。
いわゆるイヤイヤ期も終わりを迎え、本格的に自我が芽生えだしている頃だ。
だから、ということなのだろうか。
最近、ハルトは私が何を言っても、どんなに声を張り上げても言うことを聞かない。
夫には相談できない。
一度、夫に「あなたも親なんだから、育児に参加してよね」と言ったところ、「何のための専業主婦なんだよ」と言い負かされてしまい、以来、育児は完全に私の担当になってしまった。
子供を3人育てているYoutubeの舞子ママは、ことあるごとに「無理は禁物です」と言うものの、モニタの向こうで成功している人は余裕があっていいなぁとしか思えない、疲れきった自分がいる。
いったいいつまでこれが続くのだろうと、ぼんやりと考える。
同じ幼稚園の順君ママは小学生の娘が一人いるが、「小学校にあがったら楽になるから」と言って励ましてくれる。
しかし、いくら将来、楽になるとはいえ、私は、今、苦しいのだ。
コンビニのアイスコーナーで色とりどりのアイスをながめていると、向かい側で女子高生2人組がきゃっきゃとアイスを選んでいるのが目に飛び込んできた。
思い思いのアイスを片手にレジに向かう彼女たちの姿。
ただただ、何の責任も苦労もないであろう彼女たちが、うらやましくて、まぶしくて、遠い。
もし人生に二度目があるなら、私は今の夫と同じように結婚したろうか。
けれどきっと、子供は産んだろうな。
子ども、好きだし。
ああ、さっきまで走り回っていたハルトが転んでギャン泣きしている。
家でなら放置だけれど、コンビニではそうもいくまい。
ハルトも分かっていて、いつもより大きな声をあげている。
子どもが好き?
本当に?
その問いを考えないようにしながら、私はきれいに磨かれた床の上で泣くハルトの元へと向かった。




