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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重のブログ


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121 / 夫の牛歩戦術


結婚前の私は、決して恋愛経験の多い方ではなかった。


元々恋愛体質ではなかった上に、バージンを捨てたのは20歳を過ぎてからだった。

はじめての彼氏が出来たのは、大学生のときだった。


「俺、いつもコンビニの総菜、食べてるんだよね」

はじめての彼は頻繁にそんなことを口にしていたが、まさかそれが「こんな栄養が偏って可哀そうな俺のために料理を作ってくれないか」の意味だとは、当時は思いもよらなかった。

その後、何度か彼氏が代わる度に、同じようなことが起こったので、私はようやく見当がついた。


男性は、なぜ自分で料理をしないのか。

はじめは、軽くカルチャーショックだった。

昭和は遠くなり、平成を経て、時代は令和である。

個の時代である。

それにもかかわらず、サバイバル能力の一つと言っても過言ではない料理をするという技術を持っていないのはどういう了見か。

私は憤慨し、それ以上に困惑した。


百歩譲って、私が専業主婦になるのであれば、料理といわず、家事全般を請け負おう。

その代わり夫には二人分稼いでもらう。

ギブアンドテイクだ。

しかし、話はそうは転ばない。

共働きを想定しての結婚生活でさえ、料理は女のするものだという慣習が根強いのだ。

そんな損な役回りを好んで請け負うのは、どこの聖女だろうか。


男性の方が稼ぎが多いから、男性の家事の負担を減らすべきと夫婦で決めている例もある。

それはそれで二人の間で決められたことであれば、とやかく言うまい。

しかし、うちは違う。

稼ぎは同じくらいだし、なんならボーナスは私の方が多い。

だから料理担当は当番制にしたいのだ。


という内容で、私は昨夜、夫にプレゼンを展開した。


果たして、夫の反応はかんばしくなく、あからさまに今までの自分と比べ、負担が増えることに抵抗を感じているようである。

当然だろう。

その分、私はいつも抵抗を感じてきた。

私だって、堪忍袋の緒が切れたのだ。


「言いたいことがあれば、あなたもプレゼン形式で訴えてくれれば、私、聞くから」

そう言い置いて、私は寝床についた。


それから毎晩のように、夫とのプレゼン合戦が続いている。

その間、料理をしているのはもっぱら私である。

これは夫の牛歩作戦とみてよいのだろうか。


私の闘いは続く。







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