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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重のブログ


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20/25

120 / 交わらぬ会話


俺は小石を拾い上げると、そのまま道路のむこうへ、ぽーんと投げた。


道の向こうでは、今度、新しくできるホテルの工事が行われている。

そのホテルのIT部門で働くことになっている俺は、今日、システムの打ち合わせで現場近くの貸会議室に呼ばれていた。


昼休憩、一目おがんでおこうと現場に足を運んでみたら、自分と同じ、肌の浅黒い外国人が働いていた。

現場主任に身元をあかした上で尋ねてみると、そのほとんどが、俺と同じ国の男たちであることが判明した。

日本人から見たら、俺も彼らも同じ「外国人」なんだろうな。

そんなことを、思う。


けれど、俺と彼らとの間には、決して成立しない会話がある。

俺は恵まれている、と思う。

あいつらは、恵まれていない、と思う。

けれど、同じ空気を吸って、生きている。

俺と彼らとの差は、単なる学歴の差だろうか。

それともほかに何かあるのだろうか。


後日、そんなことを彼女に相談したら、日本人でも同じことを思うだろうと言っていた。

スーパーでバイトをしている彼女は、完全に「現場」側なのだけれど、それでも彼女は誇りをもって仕事をしている、仕事は楽しいと言っていた。

そこは、俺、あまり理解できないな、と思う。

絶対、同じ時間を捧げるなら、お金が稼げる方がいいじゃないか。

彼女は嘘をついているのか?

率直に彼女に尋ねてみると、「現場の人間でも十分に普通の暮らしが出来ている日本が、恵まれているのかもね」という答えが返ってきた。


俺の国では現場の人間は底辺だ。

若いうちに体力を吸い取られた挙句、皆がりがりにやせ細って死んでゆく。

生活がかかっていなければ、誰もやりたがらない過酷な仕事だ。


「ねぇ、なんで俺とつきあおうと思ったの?」

俺は彼女に聞いてみた。

「そりゃあ、ちゃんとした仕事をしてるからじゃない」

彼女はこともなげに言う。

「矛盾してるよ」

俺の言葉を受けてきょとんとする彼女の目を見つめ返し、俺は静かにキスをした。







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