114 / 独身貴族
風見俊吾の朝は早い。
5時のアラームでさっと目覚めると、着替えを持ってそのままマンションの最上階にあるジムに向かう。
そこで軽くランして汗を流してから、その日に決めておいた部位を筋トレで鍛える。
その後サウナに入りしっかりと汗を流したら、そのまま炭酸水をロックで胃に流し込む。
自分の部屋に戻ると、彼女が朝食を作ってくれているので、それをいただく。
シリアルに季節の果物、ヨーグルトにプロテインといういつも変わらないメニューである。
ウォークインクローゼットの中で念入りに今日のスーツを選ぶ。
もちろん、ここにあるものはすべてオーダーメイドである。
オクスフォードに足をすべりこませて、最後に左腕にロレックスのエクスプローラーを装着すれば戦闘態勢が整う。
部屋を出て一階の駐車場にとめてあるクラウンのクロスオーバーに乗り込むと、今日もとりあえず、いきつけのホテルの喫茶店に向かう。
朝10時になるまで、そこでモーニングを楽しむ。
その日の気分で紅茶の種類も変える。
今日はアッサムをミルクティーでいただく。
11時に出社。
父から継いだここ、株式会社アレグロは、貿易関係の仕事で成り立っている。
午前中の会議にだけ顔をだし、ひととおりの意思決定をすれば、あとはいきつけのレストランで彼女とランチ。
午後は同業者と軽くゴルフに出かけ、夕方にはサロンで髪の毛と爪のメンテナンスを行う。
夜になればマンションの自室でゆっくりと映画鑑賞。
ハイレゾ対応のタワースピーカーに囲まれた空間で、シャトー・マルゴーの官能的な香りを楽しみながら。
毎晩、違う女を抱いた末に果てながら思う。
「ああ、満たされている」と――。
深夜、ひとり起きて理由も分からない涙を流すことがあるのは、彼女も知らない俺だけの秘密。




