113 / 『異国日記』
両親が事故で死んだ。
いきなりそんなことになられても、こっちは聞いていないんですけど。
という感想しかわかない。
馬鹿じゃないの?
なんで死ぬわけ?
という怒りしかわかない。
本当に、馬鹿なんじゃないの。
死んじゃったら、何にもならないじゃん。
馬鹿じゃないの。
そんなモヤモヤを抱えながら葬式の席で親戚の話に耳を傾けていると、誰もかれもが私を心配するふりをして、未成年だから誰かが育てなきゃね、と押しつけ合っているのが聞こえてきた。
馬鹿じゃないの。
結局、高校一年生の私は、あまりにも成長しすぎていたのか、はたまた可愛げがなかったからか、それとも顔のつくりが悪かったからか知れないが、施設に入ることになった。
心のどこかで、心の優しい親戚のおばさん(小金持ち)にもらわれることを秘かに期待していた自分に腹が立った。
施設での日々は、まるで合宿生活のようで、ただ毎日がせわしなく過ぎていった。
欲をいえば自分ひとりの部屋が欲しかったが、金がないのでそんな贅沢は言えなかった。
私は懸命に勉強して、とにかく給料のいい会社に入り、この貧困から抜け出そうと決めた。
そんなおり、ひとつのアニメ作品に出会う。
それは、学校で私の境遇を知った知人が、「そういえばこういうアニメがあるよ」と勧めてくれたものである。
その作品の名は、『異国日記』。
両親を事故でなくし、小説家である小金持ちの叔母に引き取られる少女の物語。
アニメを見ていて、私は不思議な感情を呼び起こされた。
主人公の少女に肩入れする気持ちと、激しい嫉妬心の入り混じったような。
少女の生活は、あまりにも私の理想で、一方で、少女の悲しみが自分事として伝わってきて、涙がほろほろと流れてきた。
なんで、死んじゃったんだよ。
自分ひとりの落ちついたスペースも持てない、思うままにいかない現実に、そんな恨み節が顔をのぞかせる。
分かっている。
私は彼女ほど恵まれてはいないし、自力で稼がなければならない身だ。
あと二年、懸命に勉強して、いっぱしの生活をしてみせる。
見事一人暮らしが叶ったあかつきには、『異国日記』全巻DVDを揃えてやる。
それまでは。
いつか、施設での生活がリアルに淡々と描かれたアニメを見てみたいと思った。




