112 / 潰瘍性大腸炎と妻
潰瘍性大腸炎とは、もう長いつきあいになる。
なにそれ?と思った方のために説明すると、「潰瘍性大腸炎」とは、大腸の病気である。
一応、国の難病にも指定されていて、現在、約15万人ほど患者がいるようである。
あの安倍元首相も患っていた病気で、そういう意味では、謎に誇らしかったりもする。
具体的には、大腸の壁の内側を覆う粘膜に持続的・慢性的な炎症が起こる。
初期症状としては血便があり、俺は学生の時に発症したが、やはり最初に血便が見られた。
ほかにも症状として、下痢や腹痛があげられる。
俺はもう高齢者という歳になったが、いまだにそれらの症状には悩まされている。
外出するたびにトイレの位置を把握しておかなければならないし、そのせいで長期旅行も簡単には行けないでいる。
原因としては遺伝的なものや、環境やストレスによるものまである。
俺の場合はストレスで、学生の頃の親のスパルタ教育に起因していると思われる。
あいたたた。
また、おなかがいたくなってきた。
こうなると我慢は出来ない。
急いでトイレにかけこむしかない。
「あれ、浩二さん、入るの?臭いわよ?」
一階に降りてトイレに入ろうとすると、妻の良子が中から出てきた。
「あたし、うんちしちゃったもの。少し待ったら?」
中からは水の流れる音がしている。
しばし考えた末、ええい、と思いトイレに入った。
確かに、室内には良子のうんこのにおいと思しき香りがただよっていた。
もわんと、どこか生暖かさを感じる。
まぁいい、夫婦なのだから。
それよりうんこだ。
俺は急いで便座に座り、出せるだけ出すものを出した。
ふう。
徐々に腹痛がおさまってゆく。
この痛みと苦しみ、そしてQOLの低さからくる辛さは、同じ病気の人でないと理解できないのだろうなと思う。
良子は特別で、出会った頃から「トイレが近い?そんなの気にしないわよ!その代わり、私の生理痛も気にしないでね!あはは!」と笑ってくれた。
だから結婚を決めたのだけれど、それが、今ではうんこをしても恥じない女になってしまっている。
いいんだか、悪いんだか。
俺は便座に座ったまま、なんだか笑えてくるのを止められなかった。




