83_冒険者パーティのとっておき
「やぁ、ルナさん、ビョルンさん! お二人ともお揃いで!」
爽やかに笑いながら現れたのは、冒険者のレイドさんだった。その後ろにはパーティーの皆さんもお揃いで。レイドさんとドゥーガンさんはエールの泡で口髭を作り、リーナさんは焼きリンゴを嬉しそうに頬張っている。
「ルナちゃん! 聞いたわよ、大活躍だったんですってね!」
シンシアさんが駆け寄ってきて、その豊満な胸の中にむぎゅっ! と抱きしめてくれた。美人の腕の中に飛び込めるなんて、なんと幸せなことか。
「でもまた無茶したんでしょう? もう、少しでも目を離すと危なっかしいんだから」
「ひゅみまひぇん」
シンシアさんの胸の中に押しつぶされながら、お説教を受けてしまった。
「だからお姉さんに、これ。あげる」
「へ?」
リーナさんが近づいてきて、首元にするりと滑らかな布が巻かれた。それは艶やかな質感のスカーフで、鮮やかなブルーが夕日を反射するように静かに光っていた。
「シルキーモスの糸を織りこんだ妖精の布に、シンシアが加護をかけた。留め具はドゥーガンのお手製」
「レイドがシルキーモスを狩ってくれたの。私たちパーティからあなたへのプレゼントよ」
レイドさんは照れくさそうに笑って、頬をかいた。
「エルフにはこいつだ」
「ちょっとドゥーガン。そんな渡し方しなくてもいいだろう?」
ドゥーガンさんはビョルンさんに木箱をほうって寄越した。その様子を見たレイドさんが慌ててビョルンさんに頭を下げるが、ビョルンさんは気にした様子は無い。
「俺は施しを受けるほどの者ではないが」
「ほんの気持ちです。以前狩ったグリフォンの羽なんですが、シンシアが加護魔法を掛けてくれたんです。僕ら冒険者よりも商人の方が入り用だと思って」
木箱の中には、立派で真っ白な羽根ペンが収められていた。その立派さに値段をつけるとしたら…きっと、金貨数枚はくだらない。
「ルナちゃんを守るのなら、剣以外の武器も必要でしょう?」
シンシアさんは私の肩に手を添えて、ウインクをしてみせる。
「私たち、ルナちゃんに何かあったら許さないから」
シンシアさんの顔は穏やかだけど、笑っていない。ビョルンさんは困ったように耳を下げ、小さく頷いた。
「……了解した」
「あら? 返事が聞こえないわ?」
「了解、した」
ビョルンさんは忌々しげに舌打ちして、大きくエールを煽った。ビョルンさんも同族の女性には頭が上がらないみたいで、珍しい姿はちょっと面白い。
「これで売上記録を毎日付けることが出来ますね、ビョルンさん」
「……」
「ほら、そういう顔しないっ!」
言葉にしないが面倒くさがっていることは一目瞭然だ。私は肘でビョルンさんの腹をつついた。
「ルナさん」
レイドさんが静かに私の名前を呼んで、改まって頭を下げた。
「あなたとビョルンさんのおかげで、ルーンデールの不正は暴かれた。これで冒険者たちは正当な報酬を得られるし、街の人たちもモンスターに怯えなくていいんだ」
「これで水で薄めたエールを飲まずに済むしな」
ドゥーガンさんはふいと目を逸らす。しかしその口角は少し上がっていた。レイドさんはそんなドゥーガンさんに笑いながら、私の手を強く握った。
「本当にありがとう。ルナさん、ビョルンさん」
昨日は本当に大変だったけれど、こうして面と向かってお礼を言われると達成感で目の前が滲む。シンシアさんは私の頭を慈しむように撫でてくれた。
「私たち、あなたたちのことを応援しているわ。いつまでもまっすぐに、頑張ってちょうだいね」
アニタさんとはまた違う、姉のような慈愛の眼差しに、じんわりと胸が暖かくなった。
私はレイドさんたちパーティを見上げて、笑顔を見せる。そしてビョルンさんの腕を掴んで宣言した。
「はい。私たち二人で、これからも頑張ります!」
ビョルンさんは落ち着かなげに耳を下げたが、その言葉を否定することはない。それが彼なりの肯定の態度であることは、私も、レイドさんたちも分かっていた。




