↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
04_VS 魅了の魔女 ハル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/246

82_下調べは念入りに

「おやぁ? 主役がこんなところで油売っとってええんかいな?」


 バジルさんの次に現れたのは、グリオンさんだ。


「グリオンさん! 」


「ルナちゃーん! こないだぶりやなぁ! あ、出店の腸詰肉もう食うた? え、まだ? 食べんと大損やわぁ! ほれ、僕のん分けたるさかい!」


 グリオンさんは捲し立てながら自分の皿の上の腸詰肉を差し出して、私に食べるように促してくれた。私は促されるまま、腸詰肉をパリッと噛みちぎる。なんだかカレーに近い味がした。


「んー! おいひいです!」


「やろやろ! 肉の脂のジューシーさとハーブのピリッとした刺激が(たま)らんねんな。いやぁ、エールが進むわぁ」


 グリオンさんは満足そうに言うと、エールを大きく煽った。白い口髭(くちひげ)をつけながら、彼は楽しげにケラケラ笑う。そんな彼に釣られて私もエールを煽った。


「聞いたで、ルナちゃん。次はポルタ・サレまで行くんやって? あそこにはな、美味いもんがぎょうさんあんねん。シルバー・スケールとクラーケンとラディッシュクラブ! あれは外されへんわ」


「シルバー・スケール? ラディッシュクラブ?」


「シルバー・スケールはツヤピカな剣みたいな魚でな、バター焼きがごっつうまいねん。ラディッシュクラブは見た目グロいけど、素揚げがめーっちゃ美味くてな」


「えぇ! いいなぁ、ぜひ食べたいです!」


「やろやろ! でな、絶対欠かせへんのが」


 グリオンさんがヒートアップして私の手を(つか)んで引き寄せた。その時。 


——ゴホンッ!


 と、ひとつ大きな咳払い。

 またしてもビョルンさんが飲み物を喉に詰まらせたらしい。まったく手のかかる人だなぁ。


「ビョルンさん、大丈夫ですか? お水飲みます?」


「……問題ない」


(のど)に詰まらせないでくださいね、おじいちゃん」


「おい」


 グリオンさんは、ビョルンさんの口元を拭ってあげる私と、眉間にこれでもかとシワを寄せているビョルンさんを交互に見て、ニヤニヤと口角を上げていた。


「ふーん、ふんふん……」


「グリオンさん?」  


「ん? いやいや、ごっそさん! ええもん見たわぁ」


 そして何かを思い出したように膝を打ち、私の袖を引いた。今度は少し控えめな距離感で。


「ええもんのお礼にな、グリオンさんがルナちゃんにとっておきを教えたろ」


 ちょいちょいと手招きされて、近くに屈むように指示される。ハーフリングは私が膝をついてようやく目線がかち合うほど小さい。


「ポルタ・サレの端っこに『白鯨(はくげい)海猫(うみねこ)亭』っちゅう食堂があるんや。全然人がおらんねんけど、僕はあそこの味に()れてもうたんよ!」


 勢いよく拳を握りしめ、グリオンさんはさらに熱の篭った声で言う。


「あの店のあったかさ、料理の奇抜(きばつ)さと質は他とは段違いやねん! 知って欲しいけど、有名にはなって欲しくない。辛いジレンマやわ!」


 やっぱり美食家インフルエンサーというだけあって、これほどまでに高評価な店なら気になってしまう。クチコミで著名人の高評価がついていたら、行きたくなってしまうあの現象だろうか。


「店のタクちゃんとミャーコちゃんはほんまええ子でな。タクちゃんもあんたみたいに奇抜(きばつ)なアイディア出しよるねん。ルナちゃんとも気ぃ合うと思うで」


「私?」


「せや。なんか君はタクちゃんと似とる気ぃすんねんな。知らんけど」


 そこで一瞬、グリオンさんは声を(ひそ)めて、私たちにしか聞こえないくらいまで声のボリュームを落とす。


「ここだけの話、タクちゃんの店では生魚が食える」


「えっ! なんて素敵な!」


「せやろ? 君ならこの良さがわかってくれると思うたわ!」


 生魚、という言葉に胸が踊った。

 長らく食べていなくて、ずっとずっと恋しかったの!


 大喜びする私とは対照的に、ゲンナリとした面持ちで私たちを見下ろすビョルンさん。またしてもエールを少しずつ飲み下している。 


「正気か? 寄生虫や魔力の汚染をどう処理するつもりだ?」


「そこが商売人の本領を発揮するところじゃないですか!」


「俺は食わないからな」


「いーですよ。私が美味しくいただきますから」


 私の声を心底やかましいと思っているのか、ビョルンさんは片耳を塞いでまたしてもエールを口に含む。その耳は先程よりも少し赤かった。と、そこで。


——カランカラン!


 中央の方からベルが鳴る音とポーシャさんの明るい声が聞こえた。


「ミートパイが焼きたてだよ〜!」


「なんやて! こうしちゃおれん、僕が一番乗りや!」


 知らせを聞いてポーシャさんの露店に走り出そうとしたグリオンさんは、振り返って満面の笑みで大きく手を振ってくれた。


「ポルタ・サレに行っても元気にしとってな。ほな、さいなら〜!」


 彼の小さな体はあっという間に雑踏に紛れてしまって見失ってしまった。神出鬼没なのも大変彼らしい。でも不思議と寂しさは感じなかった。根拠は無いけれど、きっとまた会えると信じているから。


「あぁ!」


「今度はなんだ」


「『絶対に欠かせないもの』って何なんでしょう!? 聞きそびれた!」


「……聞いて損した」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
寄生虫は地球でも忌避された原因ですが、魔力的処理も生魚には絡むんですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。