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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
VS 魅了の魔女 ハル編

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39_百人馬力、助っ人参上!

第39話です。

本日の18時投稿の分になります。以前よりも短めのシーンに区切って投稿しております。『短い方が見にくい』や『見やすくなった』などご意見を頂けると幸いです。よろしくお願いいたします

「シンシアさん、リーナさん!?」


 上から降ってきた声に顔を上げると、巨大なゴーレムの腕が私たちを包んでいた。その傍らにさいつもの黒いローブ姿のシンシアさんと、ゴーレムに乗ったリーナさんが、私たちを護るように立っている。


 そしてその頭上、オミナス・ナマズの巨体にしがみつくように、レイドさんが剣の連続攻撃を、ドゥーガンさんが大斧の重い一撃を叩き込んでいた。


「なんで皆さんがここに……!?」


 驚きと安堵で声が上擦る。


「なぁんでって! あなた達が二人きりで、こんな危険なダンジョンに潜ったって聞いたから、慌てて追いかけてきたの!」


「ムチャするの、よくない!」


 リーナさんはシンシアさんの言葉にふくれっ面のまま頷いた。シンシアさんとリーナさんに詰められてしまって、私は慌てて弁明する。


「ええっと、その、私たちは、どうしても『水鏡の結晶』の採集をしなければならなくて…」


 シンシアさんは溜息をつき、手を伸ばして私の額をコツンと小突いた。


「そんなレア素材狙うなら尚更! 私たちプロの冒険者ギルドに依頼しなさいよ、全くもう!」


「は……! 盲点でした!」


「このお馬鹿さん!」


 ツンツンと私の額をつつきまわしているシンシアさんと、やれやれと言うように肩を落としたリーナさん。二人に怒られてしまって、肩を落とした。そんな私の頭を撫でて、シンシアさんとリーナさんは笑ってくれる。


「とにかく、ヌシ倒さないと」


「せっかくだもの、あのヌシの素材も頂戴していきましょ」


 リーナさんが胸元のペンダントを握って呪文を唱えると、水が集まって巨人のような姿に変わる。そしてその巨人がナマズと組み合い、その隙にレイドさんとドゥーガンさんがその機動力を活かして髭や鰭を切り落とした。


「シンシア! トドメの雷魔法を!」


「はぁいはい、撃ちますよー!」


 シンシアさんはレイドさんの呼び声に答えて、杖をナマズに向けた。そしてその先端に銀色のパワーを込め、一気に噴射した。


 一本の光の矢がナマズの頭を撃ち抜いて、赤紫色の体液が雨のように降り注ぐ。そして巨体がぐらりと揺れると、湖のなかに崩れ落ちた。その反動で水が膝まで押し寄せたが、シンシアさんの結界のおかげで水の影響も受けない。つまり、大きな損害もなくヌシを倒したということだ!


「や、やった……! すごい、すごいです、皆さん!」


 これが冒険者ギルドの冒険者パーティ。彼らのチームワークと圧倒的な実力を目の当たりにして私は歓喜の声をあげることしか出来ない。


「本当にありがとうございました。皆さんのお陰で助かりました」


 私は水浸しになってしまったレイドさんの元に駆け寄って、頭を下げた。


「いやいや! ふたりが無事でよかった」


「そうよ。私たちだって、獲物を横取りしちゃったようなものだし」


 シンシアさんが見たのはビョルンさんの手元だ。なにかの魔法を準備していたのだろうが、彼は何も言わずに手を振って魔法をフッと消してしまった。


「余計な手間が省けた」


「ちょ、ビョルンさんその言い方はダメですってば」


 ビョルンさんのフードを掴んで、一緒に一礼させる。


「ありがとうございました!」


「実を言うと、僕らもダンジョンに潜ろうとしていたところだったんだ。ちょうど良かったよ」


 レイドさんはビョルンさんの失礼な態度に気を悪くすることなく、爽やかに笑う。ドゥーガンさんは渋い顔をしていたが。


「おぬしら、こんな最深部で何をしてたんだ」


「レア素材を探していたそうよ。よりによって『水鏡の結晶』だなんて、何に使うのかしら?」


 シンシアさんが伺うような目でこちらを見る。彼女は『水鏡の結晶』の効能を知っているから、余計に用途が気になるのだろう。だがこれはいくら恩人でも漏らすわけにはいかない。


「えーと、それは企業秘密で……」


「珍しいものを探しているんだね。確かにこの湖にあるという話は聞いたことあるけれど」


「それってどんな素材なの?」


 リーナさんの質問に、ビョルンさんがぶっきらぼうに答える。


「見た目はクリスタルとそう変わらない。だが自ら銀色に発光し、とても脆い鉱石だ。採集には細心の注意を払わねばならない」


「湖のどこにあるのかも分からないのに、途方もない話ね」


 シンシアさんの言葉に、『まったくだ』と言いたげに腕を組むビョルンさん。エルフ同士だからか、二人の間にはなんだか外部からでは分からない独特な空気があるように思えた。


 そのことに気付いた時、なんとなく胸がモヤモヤしている自分に気がつく。


「……しっかりしなさい、星宮瑠奈」


 私は自分に言い聞かせるように呟いて、両手で頬を叩いた。


 私たちの目的は『水鏡の結晶』を見つけて、ルーンデールをハルの課した重税から救うこと。あわよくば元の世界に帰れるヒントを、ハルから得ることができれば御の字。それ以外のことを考えている暇なんてないのだ。



 青緑色の湖はとても澄んでいて、水底まで綺麗に見える。だけど魚は一匹もいない。先程まで川には沢山いたはずなのに、どこに行ってしまったんだろう?


 ふと、そこで湖が小さく波打っていることに気づく。おかしい、湖に水流はないはず。波が立つわけがないのだ。


 なのに、なんで。


「ルナさん、下がって!!」 


 レイドさんが突然叫んだ。それと同時に水面下から先ほどのナマズとは比べ物にならない重く、響く咆哮が轟いた。 


 グォオオオオ……


「うそ、なんで!?」


 咆哮とともに巨大なナマズが再び姿を表した。しかし先程のナマズよりもさらに大きい。


 鑑定グラスを覗くと、説明文が浮かび上がった。


『オミナス・"キング"ナマズ』


特徴:"S級"モンスター オミナス・ナマズの電撃に加え、地面を割るほどの振動を起こす。水と雷魔法は無効


「あれは、さっきよりもランクが高いモンスターです!」


「まさか、さっきのは幼体だったってこと……!?」


 水が激しく波打ち、水底から立ち上る巨大なシルエットが再び姿を表した。それは先ほど倒した個体の二倍はあるかという巨体。ナマズの皮膚は、不吉な深紅の紋様を帯びていた。


「退くしかない」


 ビョルンさんはキッパリと言った。そして私に戻ってくるように目線で促した。


「そうですけど、『水鏡の結晶』はどうなるんですか」


 その素材がないと、ハルの不正を暴いても魅了魔法に掛けられた人々を救うことはできない。


 そうなったら、ルーンデールは、エリザベスさんは、アニタさんは、ビョルンさんはどうなるの……!?


 しかしダンジョンという過酷な環境では、一瞬の隙が命取りになる。その事実を私はまだ知らなかった。


「危ない!!」


 シンシアさんの声で我に返ると、目の前に湖全体を丸ごと押し出すような水の壁が迫ってきていた。


 あ、逃げられない。


 抵抗する間もなく、私は激流の中に飲み込まれてしまった。


「ルナ!!」


 ビョルンさんの声の方向に手を伸ばした。だけどあまりに水の勢いが強くて、そのまま流されてしまう。


「……!!」


 喉に水がなだれ込んで、声が上手く出ない。彼の腕を掠めることもないまま、私の身体は濁流に飲み込まれた。


 意識が遠のく中、最後に見たのは、銀色に光る小さな結晶が、水流に飲まれながら視界を横切る光景だった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回も引き続きよろしくお願いいたします

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※次回更新は2月7日12時です

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