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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
04_VS 魅了の魔女 ハル編

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38/246

38_ラスボスがいないダンジョンなんて、ダンジョンじゃない

 最下層に踏み入れると、水の流れが太くなり川のようになっていた。そしてその水辺には変わらずシグナル・ホタルたちが静かに明滅を繰り返していた。


 大きな洞窟の天井は所々隙間が空いており、そこから傾き始めた陽の光がカーテンのように差し込んでいる。


「ここがダンジョンの最下層ですか……なんだか、そんな風には見えませんね?」


「このダンジョンは、冒険者よりも俺達のような錬金術師や商人が多く出入りする。それほど豊かな生態系があるということだ」


 明るい陽の光に照らされた洞窟には青緑色のコケが生えていて、(つゆ)が光に反射してキラキラと光る。水の中には先程よりも大きな魚たちが、生き生きと泳いでいた。


「着いたぞ。ここがダンジョンの最果て、『水鏡(みずかがみ)の湖』だ」


 湖のほとりに一歩踏み出した瞬間、シグナル・ホタルたちが、まるで警報のように一斉(いっせい)に赤く点滅する。それは危険を知らせているということだ。


「みてください、ホタルたちが!」


「下がれ。来るぞ」


 ビョルンさんは水面の一点を見つめる。


「来るって、なにが?」


 一瞬の沈黙。直後、静寂を打ち破る地鳴りのような轟音が水底から響き渡った。


——ザパーーッ!


 湖とは思えない、津波のような高い波が、冷たい水しぶきを上げながら天井の岩を突き破る勢いで襲いかかってくる。


「な、なんじゃありゃーっ!!」


 波が引いた後、そこに鎮座(ちんざ)していたのは、巨大な影。その姿は、水面を(にご)った黄色と黒のまだら模様で(おお)い、重々しく、二対(につい)の太く長いひげを垂らしていた。


「奴がこのダンジョンのヌシか」


「ヌシって、なんでそんなのがいるんですか!?」


 何を言っているんだ、という顔でビョルンさんは私を見下ろす。


「ここはダンジョンだぞ。最奥には必ず、希少な素材や宝を(まも)るボスモンスターがいるに決まっているだろう」


「聞いてませんよ、そん話! そういうのは、事前に言ってください!」


 このエルフ、本当に報連相ができないんだから!

 文句を言ってる場合じゃない。(あわ)てて『鑑定グラス』でヌシを覗く。ホタルの赤い点滅光が、ヌシの分厚い皮膚に反射していた。


『オミナス・ナマズ : D級モンスター。分厚い皮膚に覆われ、並大抵の攻撃は通じない。長いひげから電撃を放ち、獲物を麻痺させてから捕食する。その電撃は岩をも砕く』


「ビョルンさん、あのヌシは電撃を使うそうです! 地面が濡れているからまずいです。感電しちゃいますよ!」


「そう騒ぐな。気が散る」


 ビョルンさんは即座(そくざ)に風の斬撃(ざんげき)を放つ。鋭利な風の刃がナマズの胴体を走るが、分厚い皮が邪魔をして、大きな音を立てただけでダメージは全く入っていない。


 ナマズはビョルンさんの攻撃を無視し、口元を青白い光で満たしていく。放電のためのパワーを蓄積しているのは、RPG脳でなくてもすぐに理解できた。


 まずい、まずいまずい!

 このままじゃ『水鏡(みずかがみ)の結晶』を探すどころか、黒焦げにされてしまう!


「二人とも、伏せて!」


 誰かが叫ぶと同時に、ヌシは周囲に電撃を()き散らしながら咆哮(ほうこう)をあげた。


——ズガーンッ!


 雷鳴が(とどろ)き、青白い稲妻が周囲の岩盤(がんばん)に直撃する。凄まじい衝撃波と焦げ付く臭いが部屋中に広がり、地面が大きく揺れた。しかし私やビョルンさんには一切ダメージがない。


「な、なに!?」


 私は反射的に顔を上げ、目の前に立つ人物の姿に息を飲んだ。


「この間ぶりねぇ、ルナちゃん」

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