第16話 学校の怪談リアル?(1)
夏休みに入り、令太と2人のいとこはそれぞれの楽しみ方をしている。令太は勉強や宿題に明け暮れていた。だが、どちらかというと宿題優先だ。夏休みには多くの宿題が出されている。それをある程度片付けてから勉強だ。大変だけど、将来のためにも、提出できなくて怒られないためにも頑張らないと。
2人のいとこ、文也と花子ももちろん宿題をしているが、息抜き程度にテレビゲームをしている。令太が3階の自分の部屋で勉強をしていると、よくテレビゲームの音が聞こえる。だが、1階のへんげ屋には聞こえない。店内のBGMやテレビの雑音、厨房の音が大きいからだ。
令太はお化けの姿で勉強をしていた。その姿でいたら、ひょっとしたら両親がやって来て、アドバイスをしてくれるかもしれない。昨日の夜もそうだった。両親に会えるから、やっぱりお化けでいる事が嬉しい。
へんげ屋ではランチタイムが少し落ち着き、常連客が店員と会話をしていた。そんな中、常連客の1人である比嘉直光が深刻な顔をしている。どうしたんだろうか?
「ここ最近、泥棒が多発しとるんやて」
比嘉は不安そうだ。近所で空き巣があった。それに、近くの中学校で時計が盗まれたという。警察も警戒しているが、犯人がまだ捕まっていないという。
「そうそう」
隣にいる川瀬要もそれを気にしていた。川瀬は先日、空き巣の被害に遭った。警察に連絡したが、やはり犯人がまだ見つかっていないという。
「気を付けような」
「おう」
平吉はその話を気にしていた。今年の4月にへんげ屋に泥棒が入った。だが、家族に見つかって捕まった。犯人は竹刀で叩かれたと言うが、ここに竹刀はないから、それはきっと作り話だろう。
平吉は全く気付いていなかった。その竹刀は令太がお化けに変身して化けた物だという事を。そして、令太がお化けに変身できるというのを。
夜、気分転換に令太は花子の部屋にやって来た。そこには花子がいて、椅子に座って本を読んでいる。図書室で借りてきた本だ。これを読書感想文のネタにしようと思っているんだろうか?
「花ちゃん、何読んどるん?」
花子は横を向いた。そこには令太がいる。
「学校の怪談」
令太は児童書の表紙を見た。確かにそれは『学校の怪談』だ。僕もよく読んだが、本当に怖かったな。だけど、今となっては面白いと思っている。なぜならば、お化けに変身できるようになったからだ。それから、お化けは全く怖いものだと思わなくなった。むしろ、友達と思うようになった。
「あーあれね。なかなかおもろいよね」
「おう」
ふと、花子は思った。令太はお化けが全く怖くないようだな。どうしてだろう。まさか、お化けに変身できるからだろうか?
「令太兄ちゃん、お化け、怖ないよね」
それを聞いて、令太は花子のベッドにくるまり、お化けに変身した。花子は笑みを浮かべた。やっぱりかわいいな。
「うん、僕自体、お化けやからね」
令太は苦笑いをしている。花子は笑っている。やっぱりそうだったのか。
「ただいまー」
ちょうどその時、文也と鶴子の声がした。2人はレンタルビデオ屋でビデオを買ってきたようだ。何を買ってきたんだろうか? 2人は気になった。
「おかえりー」
2階から2人がやって来た。令太は人間の姿に戻っている。
「あっ、レンタルビデオ買ってきたんやね」
「うん。学校の怪談4つ」
何という偶然だろうか? 文也は映画版の学校の怪談を全4作買ってきたようだ。
「ふーん・・・」
だが、令太は興味がないようだ。勉強ばかりで、映画にあまり興味がないんだろうか?
「令ちゃん、興味ないん?」
「うん。見た事あるんやけど、あんまり怖ないな」
令太は見た事がある。だが、今となってはあまり怖いと思っていないようだ。最近見た『呪怨』もそうだった。なぜならば、僕はお化けなのだから。
「そっか。勉強の気晴らしに一緒に見るか?」
「は、はい・・・」
文也の言葉に甘えて、令太は一緒に学校の怪談を見る事にした。まず見たのは2だ。田舎の古い校舎で様々なお化けが出てくる。とても怖くて、鶴子も文也も怖がっている。だが、令太は全く怖いと思っていないようだ。令太はお化けだし、何かにくるまって怖がったらお化けになってしまって、みんながびっくりするだろうから。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「キャーーーーーー!」
2人とも悲鳴を上げていた。次から次へと恐ろしい事が起きて、とても怖がっている。だが、それでも令太は怖がっていない。むしろ、こんなお化けと友達になりたいなと思っている。
見終わった頃には、2人とも震えあがっていた。きっと今夜は、トイレに行く事すら怖いと思うだろうな。
「あーこわ・・・」
「ほんま怖かったね」
だが、2人は驚いた。令太が全く怖がっていないのだ。これはどういう事だろうか? 本当に怖くなかったんだろうか? 令太は肝が強いな。
「あれっ、令ちゃんは」
「そ、そんなに・・・」
令太は苦笑いをしている。お化けに変身できるからと言ったらダメだ。みんなびっくりして、大騒ぎになるだろうから。
「令ちゃんあんまり怖がらんね」
「おう」
令太は3階に上がっていった。また勉強をしに行くようだ。2人は令太の後ろ姿を見ていた。令太って、明らかにおかしいな。
「なんでやろ?」
「俺もそう思うわ」
令太は部屋に戻り、布団にくるまり、お化けに変身した。なーに、僕自身お化けなんだ。だから、僕は全然怖くないんだ。それに、お化けはみんな友達なんだぞ。
「フフフ・・・」
と、そこに花子がやって来た。花子は問題集を見ている。どうやら教えてほしい所があるようだ。ならば、教えてやろう。
「花ちゃん、どないしたん?」
花子は苦笑いをしている。お化けの姿の令太が好きなようだ。
「いや、何でもないねん」
と、花子は何かを思い出した。令太に教えてほしい所があるようだ。
「あっ、令太兄ちゃん、ここ教えて!」
花子は問題集を見せた。なかなか解けなくて苦労しているようだ。それを見て、令太は何とかしないとと思い、花子を教え始めた。とても真剣な表情だ。
深夜、令太は空を飛んでいた。今夜も熱帯夜が続いているが、お化けの姿では全く気にならない。体温が低いからだ。深夜のこの辺りは静かだ。昼間の騒がしさがまるで嘘のようだ。阪堺電車の松田町停留場は今日の営業を終了していて、明かりが消えている。家々の明かりはみんな消えている。みんな寝ているようだ。それを見て、令太は『ねないこだれだ』を思い浮かべた。深夜遅くまで遊んでいる子供は、お化けになって、お化けの世界に飛んでいくという話だ。
「うーん・・・」
令太は考えていた。どうして僕はお化けの力を持ったんだろう。とても便利で、見えない世界が見える。そして何より、その力を使って様々な人助けをできる。動物にとりつく事もできる。夢を操れる。だけど、どうして僕に与えられたんだろう。
と、令太はある男を見つけた。その男は黒い服を着ている。いかにも怪しい。そして、麻の袋を持っている。
「あれっ、あの人、誰やろ」
ふと、令太は昼下がりの会話を思い出した。泥棒が出没しているという話だ。令太はお化けの姿でそれを聞いていた。まさか、この男が噂の泥棒だろうか?
「何や怪しいわ」
令太はその男を付け回していた。男は周りを気にしている。どうしてそんなに周りを気にするんだろうか? 見られたら困るからだろうか?
男は北天下茶屋小学校に入った。通っている小学校に入って、何をするんだろうか? まさか、盗もうとしているんだろうか? ならば、許さない。自分がお化けの力で何とかしなければ。
「あっ、学校に入る」
令太は確信した。この男が、この辺りで噂の泥棒だろうか?
「まさか、泥棒? どないしよう・・・」
と、令太は夜に見た『学校の怪談2』を思い出した。この学校で、それみたいな事をして、泥棒を驚かせよう。きっと、泥棒は怖がるだろうな。
「そうだ!」
泥棒は小学校に入っていく。泥棒は知らなかった。後ろに令太がいるのを。




