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第14話 愛車で集会(1)

 ある夜、令太は学校の宿題をしていた。当然、お化けの姿でだ。毎日暑い日が続いていて、今日も熱帯夜になりそうだ。だが、この姿なら、ひんやりとしていて気持ちいい。それに、この姿でいるのがお気に入りだ。だが、花子以外にその姿を見せたくないな。


「さてと、宿題終わったっと」


 令太は宿題を終えて、一息ついていた。ちょうどその時、ノックの音が聞こえた。誰だろう。


「はい」

「おじちゃんやけど」


 達郎だ。その声を聞いて、令太は元の姿に戻った。暑いけれど、達郎にお化けの姿を見せたらびっくりするだろう。見せてはならない。


「どうぞ」


 達郎は令太の部屋に入ってきた。達郎は車のイラストが描かれているTシャツを着ている。カスタムカー好きの達郎はこれが私服のようになっている。へんげ屋でもこの服装の上にエプロンを付けている事が多い。


「どないした?」


 令太は思った。どうしてここに来たんだろうか? あんまり来ないのに。


「令ちゃん、明日、カスタムカーのミーティング行ってみやへんか?」


 それを聞いて、令太は首をかしげた。カスタムカーのミーティングっていうのがどんなのかわからない。どんな事をするんだろうか? 毎日勉強や宿題ばかりなので、気晴らしにいいかな?


「えっ!?」

「俺が乗っとるヴェルファイアみたいなカスタムカーがいっぱい集まるんや」


 そんな集まりがあるんだな。達郎は年末になると、カスタムカー好きが集まって忘年会を開くという。家族である令太もその界隈ではないが、忘年会に来て、お好み焼きを食べている。なので、界隈の中には令太を知っている人もいる。


「そんなのあるんや・・・」


 だが、令太にはあまり興味がないようだ。送迎などで達郎のヴェルファイアに乗っているが、大好きと言えるほどではない。雑誌を見ていて、忘年会をやっているぐらいなら、これが好きな人はけっこういるんだと思っている。


「ちょっと行ってみるか? おもろいぞ」

「・・・、気晴らしに、行ってみよか?」


 令太は行ってみる事にした。それを聞いて、達郎は喜んだ。達郎は、令太にもカスタムカーの魅力を知ってほしいと思っていた。


「ええよ」


 だが、令太はある事思い出した。カスタムカーに乗っていた人の中には、ひき逃げ犯の桜沢悠斗もいた。こんな人がいるらしいけれど、本当に大丈夫なんだろうか? 悪い人がいっぱいいそうで、怖いな。


「どないした?」

「あの、ひき逃げの犯人がおったんやろ?」


 それを聞いた時、達郎の顔が変わった。桜沢の事を悪く思っているようだ。せっかく好きになったのに、ひき逃げをしてしまったからだ。こんな偉い職に就いていながら、ひき逃げから逃げていた桜沢が許せなかった。もうカスタムカーの界隈に戻ってくるな、車に乗るなと思っているようだ。


「おう。せやけど、みんな優しいぞ」


 だが、達郎はすぐに暖かい表情になった。カスタムカーの界隈には優しい人が多い。そして、みんなかっこいいから、来てみたらどうだい?


「そっか・・・行ってみよか・・・」


 悩んだ末、令太は行く事にした。明日は朝食を食べたらすぐに出発だ。泊りになるかもしれないから、着替えをもっていかないと。




 早朝、達郎はソース焼きそばの材料をヴェルファイアに入れていた。今日のミーティングのためだ。達郎は界隈ではちょっとした有名人だ。なぜならば、ミーティングでソース焼きそばを作ってくれるからだ。その味は好評で、忘年会を開いているのはその味に惚れたからだと言われている。


 と、そこに令太がやって来た。令太はリュックを持っている。リュックの中には着替えがある。


「じゃあ、行こか」

「うん!」


 達郎は左のパワースライドドアを開けた。令太は左の席に座る。それとともに、パワースライドドアが閉まった。達郎は運転席に乗り込み、車を走らせた。しばらくは狭い道路の中を進んでいく。どこに行くんだろう。全くわからない。ここから遠く離れた所だろうか? ちょっと雑誌を見た事があるけど、山奥やパーキングエリアが多い。


 ヴェルファイアは高速道路に入り、スピードを上げた。令太は高速道路からの景色を見ていた。高速道路には大型のトラックや様々な車が高速で走っている。走っている車の中には、達郎のヴェルファイアを見ている人もいる。彼らは達郎のヴェルファイアのかっこよさに驚いているんだろうか? すごいなと思っているんだろうか?


「おじさん、どんな車が集まってんの?」


 令太は思った。カスタムカーのミーティングの事を、あまり知らない。雑誌でした見た事がない。もっと詳しい事を教えてほしいな。


「このヴェルファイアはもちろん、アルファードとかノア、ヴォクシー、エスクァイア、エルグランド、セレナ、ステップワゴンとかや。まぁ、ミニバン関連やな」

「ふーん・・・」


 みんな知らない車の車種がほとんどだ。令太はあまり話についていけない。


「なんだ令ちゃん、あんまり興味ないんか?」


 だが、令太はあまり興味がないようだ。こんなにかっこよくしなくても、走れればそれでいいと思っているようだ。


「あ、あんまり・・・」

「まぁいいか」


 達郎は戸惑ったが、直にわかってくれると思っていた。きっと気に入るぞ。




 令太はあれから1時間ぐらい寝てしまった。どこに行ったのか、わからない。カーナビで確認すると、三重県内の高速道路を走っている。ここでやるんだろうか? もっと先だろうか?全くわからない。でも、これほど遠くに行くと、わくわくするな。どんな人が集まっているんだろうか?


「さて、着いたで!」


 令太は前を見た。すると、そこには多くのカスタムカーが集まっている。どれも思い思いに車をカスタマイズしている。そして、界隈の人がカスタムカーを見て、撮影している。


「これ?」


 令太は驚いた。どれもこれもかっこいいな。達郎が惚れるのもわかる。


「かっこええやろ?」

「うん!」


 2人は会場にやって来た。そこには、多くのカスタムカーが停めてある。達郎が降りると、何人かがやって来た。界隈の人々のようだ。


「あっ、馬場さん!」


 話しかけてきたのは、中村栄吉なかむらえいきちだ。愛知県に住む会社員で、2児の父である。


「おう、中村さん」


 と、栄吉は達郎の隣にいる男の子が気になった。誰だろう。初めて見るな。


「あれっ、この子は?」

「えーっと、甥の三浦令太くん」


 甥がいるのか。なかなかかわいいな。この子はどこに住んでいるんだろうか? 達郎と同居しているんだろうか?


「は、はじめまして・・・」


 令太は少し緊張している。栄吉はサングラスに、スキンヘッドをしていて、少し怖そうだ。


「よろしくな! この車もかっこいいっしょ?」


 栄吉は愛車のヴォクシーを見せた。ヴォクシーは車高が低く、タイヤが大きい。そして、電飾が光っている。


「うん」


 令太はかっこいいと思った。達郎のもかっこいいけれど、このカスタムカーもかっこいいな。


「この馬場さん、知ってるんだよ。松田町駅の近くのへんげ屋っていう鉄板焼きの次の店主の候補だって。で、来たら毎回ソース焼きそば作ってくれるんだよ。さすが次の店主候補、本当においしいんだよ」


 栄吉は知っていた。達郎はへんげ屋という鉄板焼きの4代目店主候補で、来るといつもソース焼きそばを作ってくれるのだと。ひょっとして、出発前に積み込んでいたのは、ソース焼きそばを作るための器具や材料だろうか?


「本当?」

「うん。この界隈の中ではそこそこ有名な話っすよ」


 栄吉は笑みを浮かべている。達郎のソース焼きそばを食べるのを楽しみにしているようだ。


「ふーん・・・」


 令太は興味がないようだ。達郎の作るソース焼きそばは家でよく食べているからだ。


 令太は様々なカスタムカーを見て回っていた。どれもこれもかっこいい。あまり興味がわかなかったが、これをきっかけに興味を持った。免許を取ったら自分もこんなのに乗ってみたいな。だけど、ミニバンは大きすぎるから、セダンがいいな。周りにはかっこいい人がたくさんいて、思い思いに写真を撮ったり、楽しんでいる。そして、名刺交換をしている人もいる。とても楽しそうだ。

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