第13話 冷たいのがお好き?(1)
ある日の4限目の事だ。この日、2年2組では花子が授業を受けていた。だが、花子の様子がおかしい。体がだるいのだ。朝は元気がよかったものの、2限目頃からおかしくなってきた。急に体調が悪くなったようだ。どうしよう。授業を受けたいのに。このまま下校したいな。
「あら、馬場さん、どないしたん?」
その声で、花子は横を向いた。担任の浦川貞子だ。浦川は不安そうな表情だ。花子の様子がおかしい。体がだるそうだ。熱があるのでは?
「気分が悪いねん・・・」
花子は元気がなさそうだ。明らかいおかしい。
浦川が花子の額に手を当てたところ、熱がありそうだ。これは早く保健室に行かないと。おそらく、早退になるだろう。早くへんげ屋に連絡しないと。両親は今頃、へんげ屋で働いているだろうから。
「そう・・・、って、熱出しとるやん! はよ保健室行きなさい!」
「はい・・・」
花子は元気がなさそうだ。浦川は花子と一緒に保健室に向かった。
その頃、へんげ屋はいつものようにランチタイムを迎えようとしていた。多くの人が出入りしている。いつもと変わらない盛況っぷりだ。
突然、電話が鳴った。家族や従業員は知らない、花子が熱を出して早退になる事を。
「はい、へんげ屋です」
電話を取ったのは、鶴子だ。忙しいランチタイムに、何事だろうか?
「あの、わたくし、馬場花子さんの担任の浦川と申します。お宅の馬場花子さん、熱を出したので、早退させます。送迎お願いします」
それを聞いて、鶴子は驚いた。花子が熱を出したとは。朝は元気だったのに。体調が急に変わったのかな? とりあえず、達郎のヴェルファイアを使って送迎しないと。
「わかりました。その足で医者に向かいます」
医者に向かうと聞いて、達郎は驚いた。文也か花子、令太が体調不良で早退と思われるが、誰だろう。達郎は不安になった。
「ありがとうございます」
電話は切れた。それを確認して、鶴子は受話器を置いた。
「たっちゃん、花ちゃんが熱出して早退したさかい、学校行くわ。ヴェルファイア借りるで」
「ああ。ええよ、って、花ちゃんどないしたん?」
花子が熱を出して早退したのか。達郎はアワアワしている。朝は元気だったのに、どうしたんだろうか? 達郎は不安になった。
「わからん。風邪かな?」
達郎は焦っている。風邪は感染が心配だ。この店に蔓延したら大変だ。売り上げに影響してくる。みんなにマスクを付けるように言わないと。そして、アルコール消毒をしっかりとするように言わないと。
「はよ行き! ほい、鍵!」
「おおきに」
達郎はポケットに入れていたヴェルファイアの鍵を鶴子に投げた。鶴子は取ると、すぐに裏口からへんげ屋を出て、ヴェルファイアに乗り込んだ。ヴェルファイアに乗る事はあまりないが、達郎や末子、平吉が忙しい時は運転する時がある。でも、早退で運転した事はあまりない。
花子は保健室を出て、校門の先の公園を抜けた先の広い道にいた。浦川も花子もマスクを付けている。風邪かもしれないから、うつると大変だ。浦川は注意しながら、花子の横に立っていた。
しばらくして、黒いヴェルファイアがやって来た。大きなエグゾースト音を聞いて、花子は達郎のヴェルファイアだとわかった。カスタムカーのミーティングには文也と一緒によく行っていて、よく知っている。
ヴェルファイアは校門の前に停まった。それとともに、左のパワースライドドアが開いた。中には鶴子がいる。鶴子も感染対策でマスクを付けている。
「あっ、どうも」
浦川はお辞儀をした。花子は下を向いている。元気がなさそうだ。
「いえいえ、ご迷惑をおかけしました。それから、文ちゃんと令ちゃんにこれを渡しといてください」
鶴子は2枚のカラーマスクを渡した。令太と文也にうつらないようにするためだ。浦川は考えた。昼休み、令太と文也に渡そう。その時に、花子が早退しを事を話そう。
「花ちゃん、医者行くで」
「うん・・・」
花子はヴェルファイアの2列目に座った。鶴子は不安そうに花子を見ている。左のパワースライドドアが閉まると、すぐにヴェルファイアは走り出した。行先はへんげ屋ではない。行きつけの医者だ。まっすぐ行って、早く診てもらおう。
鶴子と花子はその足で医者に向かった。行きつけの医者は天下茶屋駅の近くにある。花子は下を向いていた。早退して、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
医者は花子の胸に聴診器をあてた。医者はすぐに、花子が風邪とわかった。これは安静にしておかなければ。
「風邪やね」
「そうかいな・・・」
花子は元気がない。体がだるいようだ。鶴子はその様子を見て、心配している。
「薬出すから、安静にしてな」
「うん・・・」
花子は診察を終え、椅子を立った。薬が出るまで待合室で待とう。
「おおきに」
鶴子と花子は診察室を出ていった。治るまで安静にしていよう。
何も知らない令太と文也は休み時間を楽しく過ごしていた。花子が早退して、家にいる事を、全く知らなかった。だが、達郎のヴェルファイアらしきエグゾースト音を聞いて、何かあったような気がした。
「2年2組担任の浦川です。5年1組、三浦令太くん、6年2組、馬場文也くん、すぐに職員室に来てください」
2人は驚いた。浦川は花子のクラスの担任だ。どうしたんだろうか? 花子に何かあったんだろうか?
「何やろ」
令太は職員室に向かう間、考えていた。花子はいつも通りの朝を迎えたのに。まさか、体調を崩して早退したんだろうか? だったら不安だな。
職員室に行くと、そこには文也がいた。令太が来るのを待っていたようだ。合流したのを確認して、2人は職員室に入った。そして、浦川の元に向かった。2人がやって来ると、浦川は顔を上げた。
「あっ、三浦くん、馬場くん」
「どないしました?」
浦川は不安そうな表情だ。花子の身に何かあったんだろうか? 2人も不安になった。
「今日の4限目の途中やけど、馬場花子さんが熱出して早退したんや。風邪かもしれんから気ぃつけて。これ、お母さんからもらったマスクや。帰る時や家の中では注意せぇよ」
2人は驚いた。朝は元気だったのに。体調が急変したんだろうか? 花子は大丈夫だろうか? 自分は感染していないだろうか?
浦川は2人にマスクを手渡した。そのマスクはあべのハルカスに行った時に買ってきたカラーマスクで、2人が愛用している。まさか、浦川から渡されるとは。
「はい・・・」
2人はマスクを付けた。風邪には気をつけないと。
2人はいつも通り下校していた。2人とも不安な表情だ。花子の体調はもちろんだが、自分も感染していないか不安になる。
「熱出したんか・・・」
「朝は元気やったのにな」
それにしても、朝は元気だった花子が早退するとは。とても信じられない。だけど、体調が急変したんだろうと思うと、納得できる。とにかく、風邪には気をつけないと。特に、家に帰ってもできる限りマスクを付けていないと。
「体調が急変したんかもしれんな・・・」
「花ちゃん、大丈夫かいな・・・」
令太は特に心配していた。令太はここ最近、お化けの姿を受け入れてくれた。また元気になって、お化けの姿を可愛がってほしいな。『ウチのお化け』と言ってかわいがってくれるのが、令太は気にいっている。ここ最近、ますます花子が好きになったのに。
「お医者さんの力を信じようや」
「そやね」
2人は信じていた。お医者さんが診察して、薬を出せば何とかなるだろう。お医者さんの力を信じよう。
2人は家に帰ってきたが、不安そうな表情だ。花子が熱を出して早退したからだ。気をつけて家に入らないと。
「ただいまー」
2人は2階の玄関から家に入った。すると、鶴子がやって来た。今日はランチタイムを過ぎた頃に店を早退して、花子の面倒を見ている。
「あっ、文ちゃん、令ちゃん、おかえり」
「花ちゃん、どや?」
文也は困っている。花子の体調が気がかりなようだ。それに、診断結果が気になる。
「風邪やて。家ではマスクしてな。家族も店員もしとるけど」
風邪のようだ。文也は少しほっとした。だが、油断できない。家ではできる限りマスクを付けなければ。
「はい・・・」
2人は洗面所で手を洗うと、3階に向かった。だが、自分の部屋に入らず、花子の部屋に入った。花子の部屋には、ベッドで寝ている花子がいる。花子はゆっくりしている。元気がなさそうだ。
「あっ、花ちゃん・・・」
その声に気付くと、花子は横を向いた。そこには文也と令太がいる。
「ごめんね、文也兄ちゃん、令太兄ちゃん」
「ええんやよ・・・」
令太は笑みを浮かべた。だが、花子にはわからない。マスクをしているので、口が見えないからだ。
「そっか・・・。はよ元気になってな・・・」
「うん・・・」
2人は花子の部屋を出ていき、それぞれの部屋に入った。2人とも心配そうな表情だ。早く花子が元気になってほしいな。




