第12話 宿題のお手伝い(2)
その夜、悠馬は宿題に追われていた。宿題がなかなか終わらないのだ。量が多いし、なかなか終わらない。そして、問題が難しい。でも、今日までに全部終わらせないと、中川先生に怒られる。悠馬は頭を抱えた。また中川先生に怒られて、母にも怒られるんだろうか?
「うーん・・・」
と、そこに1匹のお化けがやって来た。令太だ。だが、悠馬は全く気付いていない。令太は悠馬が心配になってやって来たようだ。悠馬は令太が手伝ってくれると思っていない。手伝うんじゃないと、中川先生に言われている。母もそう言うだろうな。僕はどうすればいいんだろう。解決策が見つからない。だけど、悠馬のためにやるしかないんだ。
「もしできてなかったら、やるしかないんかな?」
令太は宿題をこっそりのぞいた。できていないし、間違いだらけだ。これでは中川先生に怒られるだろうな。令太は全く笑えない。また悠馬が怒られるからだ。
「できとらへん・・・」
今夜、令太が悠馬の部屋にやって来たのには、理由がある。令太はあれから少し考えた。どうすれば悠馬を手伝う事ができるんだろうかと。お化けの姿でここにやってきたら、悠馬が怖がるかもしれないからダメだ。だからと言って、姿を消して手伝うと、まるでポルターガイストが起こっているように見えて、やっぱり怖がるからこれもダメだ。どうしようかと考えた答えが、悠馬にとりついて宿題を終わらせる事だ。人間に、しかも同級生にとりついて、本当に大丈夫だろうか? その後、悠馬が怖がらないか心配だ。だけど、やらなければ。
「やるか・・・」
令太は目を閉じた。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。だけど、許してくれ。
「ごめん悠馬くん・・・」
令太は目を閉じて、念じながら体当たりをした。令太は悠馬にとりついた。その瞬間、悠馬は気を失った。悠馬はすぐに意識を取り戻した。だが、意識は悠馬じゃなくて令太だ。
「よし、やるか・・・」
令太がとりついた悠馬は宿題を終わらせていく。間違っている所がしっかりと修正していく。とても悠馬とは思えないが、本当に悠馬ではない。令太がとりついているのだ。だが、悠馬にはわからない。悠馬は意識を失った状態だからだ。
令太がとりついた悠馬は驚異的なペースで解いていく。こんな問題は令太にとって朝飯前に等しい。これが優等生の令太の実力だ。途中式も令太と一緒だ。
「よし、できた!」
令太がとりついた悠馬は、宿題をあっという間に終えた。それと同時に、令太は悠馬から離れた。
「ごめんね!」
令太は悠馬の部屋を去っていった。そして、自分の部屋に戻っていった。悠馬は意識を取り戻した。気が付くと、宿題が終わっている。どういう事だろうか? 意識がない時に、誰かがやったんだろうか? いや、そうではない。鉛筆や消しゴムが減っている。それを見ると、自分がしたと言える。
「あれっ、できとぉ・・・」
だが、悠馬はすぐに開き直った。いつもできない宿題が全部できたんだ。良しとしよう。もう夜も遅い。そろそろ寝よう。
「まぁええか。もう寝よか」
悠馬は部屋の明かりを消して、ベッドに横になった。その様子を見て、令太は悠馬の部屋を去っていった。
翌朝、令太はいつものように教室にやって来た。もちろん、昨日の夜に悠馬にとりついて宿題を終わらせたというのは秘密だ。それを知ったら、みんな驚くだろうから。
「おはよう」
「おはよう」
悠馬はおびえている。どうしたんだろうか? 宿題が全部できたのに、この表情は明らかにおかしい。全部できたのなら、喜んでもいいんだけどな。
「どないしたん?」
悠馬は横を向いた。そこには令太がいる。
「昨日のあれは何やったんやろと思ぉて」
「えっ!?」
令太は何も知らないような表情を見せた。本当に自分がやったというのに。
「突然意識失って、気づいた頃には宿題が終わっとったんや」
「誰かがやってくれたんかな?」
令太は首をかしげた。令太にもわからないようだ。悠馬は知らない。令太がお化けに変身できる事も。お化けの力で悠馬にとりつき、宿題を終わらせたというのも。
「でも、鉛筆が減っとったから、僕がやったってのは確かなんや」
「そっか・・・」
令太は席に座った。令太はいつものように元子と話をしている。この2人は本当に仲睦まじいな。
朝の会の後、悠馬は中川先生の元にやって来た。中川先生はわかっていた。悠馬が宿題を提出しに来たんだろう。できたみたいだが、どうだろうな。
「おう、杉本できたか?」
「はい!」
悠馬は自信気に宿題を提出した。悠馬は笑みを浮かべている。こんな悠馬は見た事がない。何かあったんだろうか?
「ふむふむふむ・・・、すごいな。どうした杉本、完ぺきじゃないか?」
中川先生は驚いた。完璧だ。どうして悠馬はこんなにできるんだろうか? すごいじゃないか。
「ありがとう・・・、ございます・・・」
悠馬は戸惑っている。意識を失って、気が付いた時には終わっていたからだ。悠馬は自分の席に戻っていった。
職員室に戻ってきた中川先生は、戸惑っていた。どうして杉本が今回は宿題をできたんだろう。いつもはあんまりできないし、できていても間違いだらけなのに。
「うーん・・・」
「どないしたん?」
そこに、3年1組の担任、江原博がやって来た。江原先生は昨年度、令太のいた4年2組の担任だった。
「いっつも宿題ができない杉本が今回はできたんや。不思議やわ」
「ほんま?」
中川先生は江原先生に悠馬の宿題を出した。
「おう」
江原先生は悠馬の宿題を見た。本当に完ぺきだ。どういう事だろうか? 江原先生も驚いた。
「ほんまや! しかも完璧やん!」
だが、見ているうちに、江原先生は何かに気付いた。どうしたんだろうか? 中川先生は首をかしげた。
「あれっ・・・」
「どないしたん?」
江原先生には心当たりがあった。この筆跡と言い、途中式と言い、令太そっくりだ。
「筆跡が三浦そっくりやし、途中式もまるっきり一緒なんや」
言われてみればそうだな。筆跡や途中式が令太に似ているな。これはどういう事だろうか? 悠馬の家には、誰も入った形跡がない。
休み時間、悠馬はたまたま職員室の前を通り過ぎた。そこには中川先生がいる。
「杉本」
中川先生に呼び止められて、悠馬は横を向いた。どうしたんだろうか?
「どうしました?」
「この宿題、ほんまに杉本がやったんか?」
中川先生は悠馬の提出した宿題を見せた。中川先生は疑っていた。本当にこれは悠馬がやったんだろうか? ひょっとして、令太がやったのでは?
「そう・・・、だけど・・・」
悠馬は自分がやったと言っている。だって、鉛筆や消しゴムが減っているから。
「筆跡とか途中式が三浦にそっくりなんや」
悠馬は筆跡や途中式をよく見た。すると、令太とよく似ている。まさか、令太がやったのかな? でも、令太が入った形跡はない。家はちゃんと施錠してある。それに、令太は夜は出歩かない。どうしてだろう。
「ほんまや! でも、令ちゃんが手伝った記憶ないし、令ちゃんが入った形跡、全くないよ。家は鍵かかってて入れんかったし・・・」
「そうか・・・」
中川先生は首をかしげた。じゃあ、どうしてこんなにもそっくりなんだろうか? 中川先生は悠馬のスマホを見た。ひょっとして、悠馬が令太とメールか電話でやり取りをして、アドバイスをしたんじゃないかな? 中川先生は悠馬のスマホを見たが、令太とやり取りした履歴はない。それに、筆跡が令太そっくりなのが気になるな。
「それに、鉛筆や消しゴムが減っとったからね」
鉛筆や消しゴムが減っているのか。そう考えると、悠馬がやったと言えるな。
「そう言われると、杉本がやったと言えるな・・・」
中川先生は腕を組んで、首をかしげた。その様子を、令太は陰から見ていた。とりついて手伝っても、筆跡や途中式はごまかせないんだな。




