第11話 怖い、それともかわいい?(1)
ある日、花子は授業を終えて帰ろうとしていた。今日は5限まであった。少し長いけれど、3年生になると6限までの日もある。もっと頑張らなければと思っている。
と、そこに先輩の吉川光子がやって来た。どうしたんだろうか?
「花ちゃん、これやるわ!」
光子はクマのぬいぐるみとお化けのぬいぐるみを渡した。
「おおきに。何これ?」
どっちもかわいい。花子は一目惚れした。でも、どうして私にプレゼントしたんだろうか? 誕生日でもないのに。何かいい事でもあったんだろうか?
「家庭クラブでぬいぐるみを作ったんやけど、置くスペースあらへんからどないしよう思ぅて」
光子は家庭クラブに入っていて、クラブ活動で裁縫をしていた。その中で、ぬいぐるみを作った。だが、ぬいぐるみを置こうにも置く場所がないからと思って、かわいいのが好きな後輩の花子にプレゼントしたのだ。
「ええよ。もらっとくわ」
「おおきに」
光子はほっとした。花子が受け取ってくれるのか心配だったが、快く受け取ってくれた。
「どういたしまして。かわいい!」
花子はかわいがっている。その笑顔を見て、光子はほっとした。花子は本当にかわいいのが好きだな。
「やろ?」
「このクマのぬいぐるみも、お化けのぬいぐるみもかわいい!」
花子はそれらのぬいぐるみを持って、下校していった。文也にも令太にも見せびらかさないと。
翌日の昼休み、令太は図書室にいた。令太は週に1回図書室に行って、本を借りている。これまでに借りた本の数はクラスで常にトップだ。様々な本を読んで、様々な事を学ぼうという姿勢は忘れていない。全ては私立中学校に行くためだ。その為なら、どんな事でもする。
「ん?」
と、令太は同級生の佐野一郎がある児童書を読んでいるのを見つけた。よく見ると、お化けの出る怪談話だ。
「お化けの絵本か・・・」
一郎はそれを見て、怖がっている。本当にお化けは怖いんだろうか? 僕はあまり怖いと思っていない。なぜならば、お化けに変身できるから。
「怖いんか・・・」
令太はその様子をじっと見て、少し悩んだ。自分はお化けに変身できるけど、人前には見せたくない。なぜならば、お化けは人によっては怖いと思われている。だから、お化けに変身するのはよくないのかな? 普通の人間として生きるのがいいのかなと思った。
「お化けって、怖いと思われてんのかな?」
一郎は振り向いた。そこには令太がいる。どうしたんだろうか?
「僕は怖いと思うわ」
一郎は怖いと思っているようだ。そう言うのなら、この子の前でお化けに変身するのを見せないでおこうか。
「そっか。僕はかわいいと思っとるんやけどな」
「私はかわいいと思っとる」
令太は横を向いた。そこには花子がいる。まさか花子がいるとは。令太は驚いた。花子もそのお化けの出てくる児童書が気になるようだ。
帰り道、令太は悩みながら歩いていた。自分はお化けになった両親からお化けに変身する力を与えられた。自分はそれを人助けの手段として使っている。悪い事には使っていない。だけど、怖がる人がいる。本当に変身する力を使っていいんだろうか?
「何考えとるん?」
令太は振り向いた。そこには一郎がいる。令太は昼休みに図書室で悩んでいた。お化けが怖いか、かわいいかで。どうしてそんな事を考えているんだろうか? 今さっきも、これで悩んでいるんだろうか? だったら、相談に乗ってやろうか? それにしても、令太が何かで悩んでいるなんて、全くなかったのに。どうしたんだろうか?
「い、いや。なんでもないんやて」
令太は戸惑っている。お化けに変身できるだなんて、誰にも秘密だ。知られたら、世間が大騒ぎになる事間違いなしだ。
「そう・・・」
松田町停留所の踏切の前にやって来た。一郎の家は右折したところにあるが、令太はまっすぐだ。
「じゃあね、バイバイ」
「バイバイ」
2人は手を振って別れた。明日もまた小学校に来ようね。
踏切を渡ろうとしたその時、踏切が鳴り、遮断機が下りた。そして、モ161が松田町停留所に停まった。乗降客はなく、ドアの開閉がないまま、モ161は松田町停留所を出発して、恵美須町停留所に向かっていった。モ161が通り過ぎると、遮断機が上がった。それを確認して、令太は踏切を渡った。家はもうすぐだ。
令太はいつものように帰ってきた。今日は文也はサッカー部の練習があるので、帰りが遅くなる。令太はインターホンを鳴らした。すると、ドアの鍵が解除された。
「ただいま」
令太は家に入った。家には鶴子がいて、鶴子が大広間にやって来た。だが、令太の様子がおかしい。何かに悩んでいるようだ。一体何で悩んでいるんだろう。鶴子は気になった。
「おかえり令ちゃん、どないしたん?」
「何もないよ」
だが、令太は何も言わない。何かに悩んでいるようだが、何も言おうとしない。何だろうか?
「ふーん・・・」
令太は下を向いたまま、3階の自分の部屋に向かった。鶴子はその様子を、不思議そうに見ている。こんなに悩んでいる令太はあまり見ない。
その夜、文也は勉強をしていた。今日は宿題があるから、それを済ませてからテレビゲームをしよう。そうしないと、先生に怒られるだろう。
と、そこに令太が入ってきた。だが、文也は気づいていない。
「ねぇ文ちゃん」
文也は振り向いた。鶴子がやって来たのかなと思ったが、令太だ。あまり入ってこないのに、どうしたんだろうか?
「令ちゃんどないしたん?」
「お化けって、怖い、かわいい?」
文也は少し考えた。お化けは怖いイメージしかない。人を呪ったり、いたずらばかりしている。
「うーん、僕は怖いと思っとるな。だって、悪さをするからね」
「そっか・・・」
それを聞いて、令太は下を向いた。文也は怖いと思っているんだな。自分は人助けのためにお化けの力を使っているのに。
「なんでそんな事考えたん?」
「いや、何もないって」
令太は何も言おうとしない。きっと、何か理由があるに違いない。
「どないしたん?」
「いや、図書室で読んで疑問に思うて」
そうだったのか。先日、花子はお化けのぬいぐるみを光子からもらったと聞く。そのぬいぐるみを花子は気にいっている。とてもかわいがっている。
「そうなんや・・・。その意見は分かれると思うで」
「やっぱりか・・・」
令太は文也の部屋を出ていった。令太は元気がなさそうだ。文也はその様子を不思議そうに見ていた。
次に聞いてみるのは、花子だ。花子は勉強をしていた。宿題は出ていないものの、勉強を頑張らないと。
「花ちゃん」
令太は振り向いた。そこには令太がいる。あまり来ないのに、今日はどうしたんだろうか?
「どないしたん令太兄ちゃん」
「花ちゃん、お化けって、怖いと思っとる、それともかわいいって思っとる?」
花子は少し考えたが、すぐに開き直った。そして笑みを浮かべた。まさか、かわいいと思っているんだろうか?
「私はかわいいと思っとる。だって、見た目がかわいいから。ほら、これお化けのぬいぐるみ。とってもかわええやろ?」
令太はそれを見て、かわいいと思った。くりくりとした目で、とてもかわいい。一瞬で令太はそのお化けのぬいぐるみのとりこになった。
「か、かわいい!」
それを見て、花子は笑みを浮かべた。令太も気にいってくれたようだ。
「ウチもかわいいと思うわ」
「ありがとう!」
花子はお化けがかわいいと思っているようだ。令太はほっとした。だが、まだ悩んでいる。意見が真っ二つに割れているからだ。そう思うと、本当に僕はお化けの力を使っていいんだろうかと思えてくる。




