第7話 カラスをこらしめろ!(1)
ある朝の事だ。いつものように令太と文也、花子は2階の玄関から家を出た。平吉は朝早くから材料の仕入れに行っていて、ガレージにはハイエースがない。今日もいつも通りの朝が始まり、そしていつものように学校生活が始まるだろう。
だが、今日はいつもとは違う。近所の主婦がゴミ捨て場に集まっている。今日は燃えるゴミの収集日だ。何があったんだろうか? 一緒に登校する子供の中には、その様子を見ている人もいる。元子もまた見ている。
「どないした?」
元子の母、奈美子は振り向いた。そこには文也がいる。奈美子は令太の事をよく知っていた。馬場家に住んでいる、成績優秀なあの子だ。
「またカラスにやられとぉ」
「えっ!?」
それを聞いて、文也は驚いた。令太は辺りを見渡した。この辺りにいる黒い鳥か。カラスは迷惑だし、うるさいな。文也も近寄りがたいと思っている。いつからカラスは、害獣になってしまったんだろう。文也は考えていた。悪さをしないためには、どうすればいいんだろうか?
「袋が突かれて、破れてめちゃくちゃになっとんや」
奈美子は困っていた。どうしたらこんな事にならないんだろうか?ゴミ捨て場にネットをかけるしかないんだろうか?
「ひどいわ」
その隣にいる英子も頭を悩ませている。せっかくビニール袋にまとめたのに、こんな事になるとは。カラスは頭がよくて、悪知恵が働くからな。どうしようもないな。
「何とかできんのか?」
「カラスは頭がええからな」
令太同様、カラスも頭がいいのか。どうにもならないな。どんな対策をしても、また悪さをしてくるだろう。どうにもならないな。
「うーん・・・」
「どないすればええんやろ」
奈美子はとても気にしていた。カラスを追い出すと、攻撃してくるからな。以前、突っつかれてけがをした事がある。本当に痛かったな。
ふと、英子は思った。この辺りには昔、鷹匠がいたらしいが、もう今はいない。後継者不足だったようだ。今もいたら、カラスを追い出せたのにな。
「この辺りに鷹匠がおればええんやけど」
奈美子は思った。鷹匠なら、カラスを追い出してくれるんじゃないかな? 鷹匠を連れてきて、何とかした方がいいのかな?
「この辺りにおらへんからな」
と、その様子を令太も見ている。どうしたんだろうか? 気になるんだろうか?
「令ちゃん、どないしたん?」
「いや、何もあらへん」
だが、何も考えていないような表情だ。早く小学校に向かいたいという気持ちでいっぱいのようだ。
「うーん、猛禽なら何でもええんやけどな」
「えっ!?」
それを聞いて、令太は反応した。もしいるのなら、それにとりついて、カラスを追い払ってやろうと思った。
「トンビとか。田舎で飛んどるやつ」
トンビと聞いて、令太は思い出した。山里に行った時、飛んで鳴いていたあの鳥か。海岸に行った時に、パンをひったくりされたっけ?
「あー、ピーヨロロロロって鳴いとるやつね」
文也も知っていた。あの泣き声は印象に残っている。これを聞くと、田舎にやって来たという気分になれる。
「おう。それで、海岸とかで食べ物をひったくるやつ」
それを聞いて、優がやって来た。食べ物をひったくるというのに反応したようだ。それに、何か嫌な思い出があるようだ。
「去年の夏、僕、トンビにパンをひったくられたんや。めっちゃ腹立ったわ」
去年の夏、優は家族と一緒に海水浴を楽しんでいた。だが、コンビニで買ってきたパンをトンビにひったくられた。パンはすぐに新しいのを買ったが、本当に最悪の思い出だ。とても腹が立つな。
「つまり、猛禽だったら何とかなるって事やね」
令太は思った。猛禽なら何でもいいのなら、フクロウでもいいのか。でも、フクロウがこの辺りを飛んでいたら大騒ぎだからな。やっぱりトンビがいいな。
「おう。猛禽がカラスを脅かして、撃退するらしいんや」
「そうなんやな」
思えば、もう出発時間を過ぎている。早く小学校に行かないと。
「令ちゃん、はよ行こよ」
「ごめんごめん」
令太、文也、花子は通学団にはぐれそうになり、慌てて走っていった。通学団に追いつき、3人は歩きだした。
「おばさん大変やね」
文也は知っている。鶴子も最近カラスの事を気にしているのを知っている。どうにかならないんだろうか? カラスはとても賢いので、対策してもまたそれを解決する手段を使ってくる。まるでいたちごっこじゃないか。
「おう」
「何とかできんのかな?」
令太も気にしている。だが、心の中では考えている。トンビにとりついて、カラスを驚かせばいいんだ。だが、お化けの姿を見せたらみんなが驚き、大変な事になるから、人前では絶対にやらない。
「カラスは頭がええんや。こないだ、うちのハンガーがない思ぅたら、カラスが巣に使っとったんや」
優は別の事を気にしていた。これは母から聞いた話だが、物干しざおにぶら下がっていたハンガーがなくなっていたので、盗難かなと思ったら、カラスがハンガーを巣の材料に使っていた。
「こんな事もするんやな。ひどいな」
「うん・・・」
優は落ち込んだ。どうにもならないな。どうすればその問題は解決するんだろうか?
その夜、松田町駅付近は誰もいない。みんな、家の中にいるのだろう。そんな中、カラスの鳴き声が聞こえる。ちょっと不気味だ。人々は怖がっている。また何かされそうだ。今度は何をされるんだろう。
そんな中、1匹のお化けが飛んでいた。令太だ。令太は思っていた。カラスをやっつけて、何とかしないと。みんな困っているんだ。困っている人のために、お化けの力で何とかするんだ。
しばらく飛んでいると、電柱にある巣を見つけた。その巣をよく見ると、ハンガーでできている。おそらく、この近くの家から奪ってきたハンガーだろう。こんな事をしてまでも子育てをするとは、あまりにも無責任だな。令太は腹が立ってきた。ハンガーを奪われて困っている人のために、自分が何とかしないと。
「これが巣かいな」
令太は観ていて、ひどいと思った。人が使っているものを勝手に持ち出して、こんな事をするのが許せなかった。何とかしないと。
「ひどいな・・・」
令太はひらめいた。姿消した状態で体当たりして、巣を落として、めちゃくちゃにすればいいんだ。そうすれば、カラスは逃げていくだろう。そして、もう悪さをしなくなるだろうな。
令太は体当たりをして、巣を電柱から落とした。寝ていたカラスは驚き、逃げた。
「こうして、こうしてやる!」
道路に落ちた巣は、竹刀に化けて叩いた。粉々にして、もう何もできないようにしよう。
「へへへ・・・。逃げてった逃げてった!」
令太は逃げていくカラスを見ていた。だが、令太は思っていた。本当にこれで反省して、もう悪さはしなくなるんだろうか? またやって来て、悪さをしていたらどうしよう。またこらしめるしかないんだろうか?
翌日の早朝、令太はいつものように起きた。もちろん、カラスをこらしめた事は絶対に言わない事にしよう。自分がお化けに変身した事もだ。もし、自分がカラスをこらしめたと知ったら、自分がお化けに変身できると知ったら、みんなびっくりするだろうから。
令太は部屋の窓から外を見た。だが、ゴミ捨て場にはカラスがいる。またゴミ袋を突っついて、ゴミを散らかしている。全く反省していないようだ。
「今日もおるな」
令太はため息をついた。どうしたらいいんだろうか? 全くわからないな。みんな困っているのに。
「こりへんな・・・」
令太はカーテンを閉めた。そして布団にくるまり、お化けに変身した。令太は腕を組み、考えた。どうすれば反省するんだろうか?
「うーん・・・。どないしよ・・・」
いつまでも考えていては、勉強に集中できない。やはりトンビにとりついて、カラスを攻撃するしかないんだろうか?




