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第5話 お化けが見える!?(2)

 令太が物心つく頃、そこにいたのは1つ上の文也、生まれたばかりの3つ下の花子、文也と花子の父の達郎、母の鶴子、祖父の平吉、そして祖母の末子だった。だが、1つだけ気になっている事がある。名字だ。この家族の名字はみんな馬場だ。だが、自分は三浦だ。これはどういう事だろうか? どうして自分だけ三浦なのか? それには何か理由があるんだろうか? 何度聞いても、なかなか話してくれない。それには何か秘密があるんだろうか? 令太には全くわからない。


「ねぇ、なんで僕は三浦なん?」


 それを聞いて、達郎は黙り込んでいる。いつもそんな表情だ。だが、いつもと表情が違う。何か大切な事を話そうとしている。一体何だろう。とても気になるな。


「・・・、真実を話そか・・・」

「うん」


 ようやく真実を話すとは。令太は驚いた。今まで話してくれなかったのに、どうしたんだろう。そろそろ真実を話そうという気になったんだろうか?


「俺は、お前の父さんじゃなくて、おじさんなんや。詳しく言ったら、お母さんのお兄さんやけどな」


 それを聞いて、令太は驚いた。今まで両親だと思っていた人が、まさか叔父とその妻だったとは。だから名字が違うんだな。令太は納得した。でも、もう1つ疑問に思う事がある。どうしてここに両親はいないんだろうか? 何か理由があるんだろうか?


「お父さんとお母さんは?」

「もう天国に行ったんや。交通事故やったんや。これがその半年前の写真や」


 令太は泣きそうになった。もうお父さんとお母さんがいないとは。だからここに移り住んだんだな。そして、達郎はある写真を出した。そこには、若い男女が映っている。ここはスカイツリーだ。女はベビーカーを持っている。全く見えないが、このベビーカーの中にいるのが令太と思われる。まだ物心つかない頃の写真を見たのは、これが初めてだ。赤ちゃんだった頃はどんなんだったんだろう。全くわからない。


「父さん、母さん・・・」


 令太は記憶のない両親を思い浮かべた。自分を生んだ時は、どんな気持ちだったんだろうか? 生まれてきてくれて、ありがとうと言っていたんだろうか? その時、まさか物心つく前に亡くなるなんて思わなかっただろうな。


「で、お前は東京で生まれたんや。で、なんも知らんうちに大阪に移り住んだんや」

「そうなんや・・・」


 自分は東京生まれなのか。今までずっと大阪に住んでいると思っていたけど。自分は物心つく頃に既に大阪に住んでいて、普通に大阪弁を話している。だけど、本当は東京生まれなんだな。


 と、達郎は空を見上げた。どうしたんだろうか?


「つらいけど、天国で父さんと母さんが見守っとるさかい、しっかり生きてや」


 それを聞いて、令太は決意した。遠い空の天国から両親がきっと見守っている。だから、一生懸命生きよう。そうすれば、両親も喜ぶだろうから。


「うん!」


 令太は両親を思って泣くのをやめた。それ以来、その写真を令太は大切にしていて、毎朝その写真に向かって挨拶をするのを日課にしている。その時、令太は思っていなかった。お化けになった両親に会って、お化けに変身する力をもらうとは。




 タエはその話を真剣に聞いていた。こんな過去があったのか。とんでもない人生を送ってきたんだな。だけど、いとことその家族に囲まれて、幸せに暮らしている。全く寂しくないんだな。そう思うと、自分はなんて寂しい老婆なんだろうと思う。恵一と一緒に暮らしたかったのに、暮らせなかった。とてもつらいな。


「そういう事あったんやね」

「うん」


 もう夜も遅い。そろそろ家に帰らないと。


「もう帰るわ。おやすみ」

「おやすみ」


 そして、令太は去っていった。タエは令太の後ろ姿をじっと見ていた。あとどれぐらい、この風景を見る事ができるんだろう。わからないけれど、最後の日までしっかりと生きよう。




 翌日、いつものように令太は起きた。今日は休みだ。少し起きるのが遅い。すでに平吉はハイエースで材料の調達に出かけていて、リビングには達郎と鶴子、末子がいる。文也と花子はすでに朝食を食べ、リビングにいる。


「おはよう」

「おはよう」


 ふと、令太は思った。この店はいつまで続くんだろう。どこかで途切れてしまう事はないんだろうか?


「ねぇおじさん?」

「どないした?」


 達郎は横を向いた。急にどうしたんだろうか? 何か聞きたい事があるんだろうか?


「この店って、いつまで続くんかなと思って」


 それを聞かれて、達郎は戸惑った。どうしてそんな事を聞くんだろう。


「なんでそんな事考えんの? これからも続いてくって! 安心しろ! ワテはこの店の4代目の店主候補やで。この店の5代目候補は文也やで」


 達郎は真面目な表情だ。この店の跡を継ぐのは文也だ。どうしてそれがわからないのか。なぜそんな事を聞いたのか?


「そうそう! 何考えとん?」


 鶴子は笑っている。どうしてこんな事を聞いたのか、鶴子にはわからなかった。


「す、すまん・・・」


 令太は苦笑いをした。そりゃそうだよな。この店は3代脈々と受け継がれている。これからもこの店は続いていくんだな。


「もうそんな事、聞くんやないで!」

「はい・・・」


 令太は朝食を食べ始めた。末子はそんな令太をじっと見ている。どうしてこんな事を考えているんだろう。平吉にそれを言ってみようかな?




 朝食を食べ終え、歯を磨いた令太は、お化けの姿で机に座り、勉強をしていた。だが、タエの事を考えてなかなか進まない。タエが心配でたまらない。このままタエは孤独に死んでいくんだろうか? 残された子供たちはどう思って言うんだろうか?


「おばちゃん・・・」


 令太は思った。タエの子供たちは、今頃どこに住んでいるんだろうか? どうしているんだろうか? タエの事を忘れずに生きているんだろうか?


「あの息子さん、どこに住んどるんやろ? 気になってしょうがないわ・・・」


 だが、今は気にせず、勉強に集中しよう。令太は考えていた。私立中学校に入学して、偉い人になるんだ。まだ夢は決まっていないけれど、偉い人になれたらいいな。




 その夜、令太は自分の部屋から夜景を見ていた。やっぱり令太は、タエの事を考えていた。今日も元気に頑張っているんだろうか? 恵一に会えたんだろうか? 気になって気になってしょうがないな。


 突然、誰かがノックする音が聞こえた。誰だろうか?


「誰?」

「おじいちゃんです」


 その声を聞いて、令太は元の姿に戻った。お化けの姿は誰にも見せてはいけないからだ。


「どうぞ」


 その声とともに、平吉が入ってきた。平吉は真剣な表情だ。ひょっとして、朝に達郎に言っていた事で、気になったんだろうか?


「令太」

「おじいちゃん」


 令太は下を向いた。孫たちに優しい表情を見せる平吉が、怖い顔だからだ。


「今さっき、店の後継者がどうのこうのと聞いたそやね」


 やっぱりその話だったか。予想はしていたが、本当に話すとは。今朝は申し訳ない事を知ってしまったようで、令太は後悔していた。


「ご、ごめんなさい・・・」


 と、平吉は令太の肩を叩いた。令太は顔を上げた。何か言いたい事があるんだろうか?


「俺の後継者は達郎や。そしてその後継者は文也や。この店は受け継がれるんや」


 そうだったのか。それは安心だ。令太はほっとした。




 数日後の夜、今日も令太はお化けの姿であいりん地区を散歩していた。今日もあいりん地区は静まり返っていた。路上にいる人々は無言で、寝転んだり空き缶を拾っている。


 令太は思っていた。タエはどうしているんだろうか? ちょっと行ってみようかな? 令太は占い屋の前にやって来た。だが、閉まっている。数日前のこの時間は営業していたのに。何があったんだろうか?


「あれっ・・・」


 と、通りがかった1人の男が何かを話している。その男は、タエに占ってもらった人だ。


「あの霊媒師さん、死んだらしいのぉ」


 それを聞いて、令太は驚いた。昨日はあんなに元気だったのに。どうしたんだろうか? 老衰だったんだろうか?


「そんな・・・」


 令太はあいりん地区を去っていった。あまりにもショックだったようだ。




 次の日の夜、今日は日曜日。明日の登校の準備は済ませた。後は寝るだけだ。文也も花子もすでに寝た。後は自分だけだ。


 と、そこに1匹の老婆のお化けがやって来た。それを見て、令太は驚いた。タエだ。お化けになったタエがやってくるとは。


「あれっ!?」

「ここに住んでたのね」


 タエは笑みを浮かべている。また会えてよかったようだ。令太は少し戸惑っている。


「うん・・・」

「継いでほしかったと思ってたけど、不変のものってないのね。だから消える時が来たんだなと」


 タエは寂しそうだ。寂しいけれど、これが時代の流れなのかな?


「残念?」

「うん」


 タエは令太の元を去っていった。令太はその姿をじっと見ている。この世で不変ではないものって、あるんだろうか? あるとしたら、何だろう。令太は疑問に思った。

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