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【コミカライズ】ドワーフの最強拳士、エルフの幼女に転生して見た目も最強になる!【しとります】  作者: 呑竜
「第十二章:思い出の味」

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「冒険の書三百三十:さすがに過大評価では?」

 獣人族が信奉するのは女神である『星神《せいしん》ルシエラ』だ。 

 ルシエラはこの星を生み出した創造神である他に、死者の魂を『輪廻《りんね》の輪《わ》』へ届ける死者の神という性格も併せ持つ。


 輪廻の輪はすべての魂が巡る円環であり、そこからこぼれ落ちた者は二度と生まれ変わることができない。

 逆にいうなら輪廻の輪の中にさえいれば次の人生が約束されるわけで、ルシエラが戦女神として人気の理由でもある。


 気性が荒く戦いを好む獣人族にとって、死は身近なものだから。

 次の生を約束してくれる女神の人気が、上がらないわけがない。


 そんな獣人たちの中でも特に功績を残したり偉大な戦果を挙げたりした者は、『星葬の谷(ウル・ナハル)』と呼ばれる墓地に祀《まつ》られる。

 風の吹き抜ける谷間に広がる草原の、白く曲がりくねった骨樹《ボン・チュリ》の下に埋められる。

 肉体は朽《く》ちて大地に返り、魂はルシエラが自ら拾って輪廻の輪へ返してくれるのだという。


「ルシエラの特別扱いが受けられる星葬の谷は、獣人族にとってこれ以上なく神聖な土地なのです。にもかかわらず王子殿下は墓守を脅して立ち入り『観光』をなさって……それどころか、『なんだ、聖地だというから期待してきたのにただの墓じゃないか、辛気臭い』と吐き捨てられたかと思うと、墓標でもある骨樹を蹴りとばされ……」


 話の内容は、どんどんとひどくなる。

 

「魔法剣士のザンパ殿に骨樹を切り刻むよう命じられたり、呪術師のレイジュ殿に死者の骨を使ってスケルトンを作るよう命じられたり……。おふたりもそれほど素行の悪い方ではないのですが、さすがに遠慮されるほどのひどいお命じようで……」


「それはそうだろう。他国の聖地で、しかもそれなりの地位にあった者の墓や遺骨を弄べとは……いかに王子の命令といえども従えまい。にしても、娘とはいえドワーフがおりながら何をしておったのか……」


 ミュウという娘の人柄は知らんが、殴ってでも止めることはできんかったのか。

 などと心密かに憤っていると、アーガスがため息をつきつき言った。


「そういうわけで、向こうさんはたいそうご立腹なのだ。全ての交易と人材交流の一時停止を訴えてきた。『今後のそちらの態度次第では国交断絶するぞ』とほのめかしてきたわけだ」


「まあ~……それはそうなるか。獣人族のケンカっ早さを考えると、いきなり戦争開始にならなくてよかった、というレベルのひどさだものな」


 人魔決戦の時にも感じたことだが、獣人族(奴ら)の気性の荒さはドワーフに並ぶレベルだからな。


「一応確認しておくが、おまえたち……戦《いくさ》をしたがっているわけではあるまいな? そのための遠大な策の一環だったりはせんよな?」


「だったらまだよかったのだがな……」


 軽く探りを入れると、アーガスは首を左右に振った。


「残念ながら、答えは否だ。正面から戦ったとて我が国が負けるとは思わんが、その勝利に意味はない。互いにとって不毛で、不幸なだけだ」


「獣人族が根城とするマムージャ大草原はたしかに農耕に向かんが、地下には豊富な資源が眠っていると聞く。金に銀にミスリル、ドワーフですらよだれを流すような希少金属がたんまりとあると。それらもまったく、欲しくないと?」


「力で奪った者は力で奪い返される。それにだ……」


 アーガスはワシの目をひたと見据えると。


「俺は今の平和が気に入っているのだ。親父殿たちが血と汗を流し、多くの犠牲を払いながら築き上げてくれた、この世界がな。そいつを自ら台無しにするほど、愚かではないつもりだ」


 歳は四十と少し。

 ワシからすれば子ども同然とはいえ、さすがは国王、さすがはアレスの息子だ。

 チャラく見えても芯はしっかりしていて、まったくブレることがない。 


「フィオナ姫よ、試しの儀(・ ・ ・ ・)は終わったか? ではここからが、俺の願いだ」


 ワシの探り(・ ・)を鼻で笑うと、アーガスは円卓の上に身を乗り出した。


「本格的な謝罪と交渉は俺自らが行うつもりだが、先んじて外交団を送り込み、少しでも向こうの怒りをなだめておきたい。そこでだ、フィオナ姫。おまえが先行して、融和《ゆうわ》工作をしてもらえないか?」


「はあ~? ワシに獣人族の怒りをなだめろと? ぶん殴って黙らせろではなく、ペチャクチャ喋って気に入られよと? 悪いが、まったく向いとらんと思うぞ?」


 なんたる無茶を言うのだと目を剥くワシに、しかしアーガスは迷いなく言った。


「いや、おそらくおまえほどの適任者はいないはずだ」


「どこをどう見たらそんな風に思えるのだ?」


「どこをどう見てもそんな風にしか思えんのだ」


 曇りなき眼《まなこ》で頼んでくるアーガスに困惑するワシ。

 しかたないので周りに助けを求めるが……。


「なあリゼリーナ……」


「わたくしの目から見ても、フィオナさまほどの適任者はいないと思いますわ」


「ルルカ……」


「わたしも向いてると思う」


「チェルチ……」


「むしろなんで向かないと思ってるんだ?」


「ええぇ~……?」


 リゼリーナ・ルルカ・チェルチ。

 皆が皆、ワシが適任だという。

 完全に逃げ場のなくなったワシは、やむなく引き受けることにしたのだが……。

 

「皆、ワシのことを過大評価しすぎではないか?」

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